第九十一話「シャンメールの事実」
こんばんわ。
那祢です。
今回は見学後の出来事。
あの方に何かが!?
また後書きで。
社会科見学が終わり僕たちは学級が上がった。
クラス替えは三年に行われるので今のクラスのみんなと一緒だ。
朝は機嫌の悪いキサラギには引っ掻かれる。
お昼はアルムファイム達とご飯でメドサの罵倒に耐える。
放課後は勇者二人に捕まり恋愛相談。
夜はたまにヴァンパイア二人に血を提供する。
そんな繰り返しだ。
変わらない日々。
それはある時、崩されることになる。
「シャンメールちゃん!工房の面接、受かってたの!」
教室で大きい声が聞こえる。
キサラギ?
いえ違います。
それは・・・・・・
「ちょっと!シンギョウさん!声が大きいすぎですわ!!」
隣のクラスのシンギョウさんだった。
慌てたシャンメールはシンギョウさんの口を塞ぐ。
シャンメールが口を塞げるのかって?
たしかにシャンメールは巨人族。
一般人の大きさなら塞ぐと言うより潰されてしまうだろう。
となるとシンギョウさんは・・・・・?
「あら?ごめんなさい。話しちゃいけないことだったかしら?」
シンギョウさんはシャンメールに謝った。
えっ?
口塞がれたのになぜ会話ができるのかって?
それは彼女が・・・・・・
「人の情報を普通の方は勝手に話しませんわ。・・・・・フゥ・・・さすがですね、妖怪だいだらぼっちの血を引いているだけだけの事があるわね。」
妖怪だいだらぼっち。
山の影から人を観察することがある大きな人間。
山も動かす大きさとも言われている。
大きい声をあげたり道を迷わせたりと違うタイプもいるそうだ。
シンギョウさんはその子ども。
「えーっと。その情報は親から聞いただけなんだ。」
「そうでしたの。でも私、誰にも言っていないはずですが。」
「まあ、うちのマミーが・・・・もう、凄いからね。」
凄い?
凄いとはどう凄いのだ?
山をも越える大きさとか?
沢山いるとか?
ましてやPTA会長みたいに裏でだいだらぼっちを仕切ってるのか?
とても、興味深い。
「で、シャンメールさんはここ卒業したら鍛冶屋になるの?」
「え、あー。・・・・・多分。」
シャンメールは明後日の方向を見たあと返事をする。
歯切れが悪い返事だ。
いつも自信満々な彼女らしくない。
「まだ決めてないのかな?もし鍛冶屋になったら色々お願いしちゃうね。」
「・・・・・わかった。」
「じゃあまたね!」
そう言って彼女は帰っていった。
教室に静寂が訪れる。
そして朝の会が始まった。
放課後。
勇者達のアドバイスが終わった僕は一人、校舎をぶらぶらしていた。
「今日は早く終わったしヴァンパイア二人も来ないし久しぶりにゆったりできるなー。」
つい嬉しくて口に出してしまった。
最近は自分の時間が無かったから。
でなんでぶらぶらしてるかと言うと・・・・
僕はこの学校に来てから校舎の施設を全て見たことがなかったのだ。
案内のパンフレットはもらったけどね。
それをこの間、寝る前に見てみた。
それぞれの勉強施設や運動施設。
部活も多く、四十個ぐらいあった。
で僕が向かっているのは・・・・
ー ドーン! ー
この部室だ。
風紀部。
僕の苦手な彼女がいるあの部室。
今日もいるんだろう。
ー トントン! ー
ノックすると部室に入っていった。
「ちょっとまっ・・・・・」
それが聞こえたのは開けてからだった。
・・・・・・・・・・・・
「で、何でこうなったかわかりましたか?」
「はい。」
「ノックしたら返事を待つ。わかりましたね?」
「はーい。」
エルグーラさんは指を立てて優しく注意をする。
うむ、かわいらしい。
それに比べて・・・
「そこっ!返事は伸ばさない!」
「はいっ。」
「ならば楽にしてよしっ!」
隣には鬼教官のシャンメールが。
ようやく、スーパーお説教タイムがようやく終わった。
まあ、素晴らしいものが見えたし。
何があったかと言うと・・・・・
まあ簡単に言えば山だ。
扉を開けるとそこは肌色の山があった。
その四つの山は汗をかいたらしく着替えをしていたそうだ。
僕が見たのは着替え中のシャンメールとエルグーラ。
他の方もいましたがプロポーション抜群なこの二人から目を離せませんでした。
そう正直に伝えたところこの二人からお説教が。
「で、ライローグくん。君は何しに来たのかな?」
大きな机で肘をつきながらこちらを見るエルグーラ。
うむ。
可憐で可愛い。
絵になるなー。
おっと、ふわふわしてるのを戻さないと。
「ちょっと今日のシャンメールが気になって。」
「私をか?」
シャンメールは驚いた。
昔の僕を知っている人はイタズラに来たと思うだろう。
まあ、大胆な覗きを今したばかりだけど。
そんな僕をシャンメールは細目で見る。
そしてから
「ライローグ。君の事だから分かっているんだろう?」
「?」
きょとんとするエルグーラ。
目を泳がす僕にシャンメールはため息をつく。
そして話し始める。
「私、鍛冶屋になろうと思う。」
「ああ、今日聞いた。」
「そして、ライローグ。お前が来たのはメモを確認したからだろ。」
そう、勇者にアドバイスする時に確認した。
そこにはこう書いてあった。
ー シャンメール、鍛冶屋になるため学校を辞める。 ー
攻略ヒロインがいきなりいなくなる。
恋愛ゲームでは良くある光景だが勇者に薦めた子がいなくなるなんて。
「学校、辞めるのか?」
「・・・・・う、うん。」
「!?」
僕の言葉とそれに返事をするシャンメール。
エルグーラは驚き動揺する。
「いつ?いつ辞めるのですか?聞いてないですわ!」
「一応今日、校長と話をしてきました。」
「な、何で私に相談して・・・・・」
エルグーラは涙を浮かべる。
同級生ではなく友達だから。
シャンメールはそんな彼女に言いづらかったのだ。
「エル、あなたに話したら絶対止めますよね?」
「当たり前です!学校は勉強し知識をつける場所。卒業してからでも良いじゃないですか!?」
「それじゃあ遅いのよ。遅すぎるの。」
「遅すぎる?知識と筋肉は裏切らない。そう誰かが言ってました!だから・・・・・」
エルグーラさん動揺して何かミステイクを。
「確かに知識や筋肉は裏切らない。でもね。エル、私は社会科見学に行ってからやってみたいことがあるの。」
「なにをっ!?」
「鍛冶屋は知識や力が必要だと思いました。でもね、本当に必要なのは技術なの。技術の取得には年月がかかる。そのためには今のうちに練習など数こなさなければいけないの。」
「う、うちの学校で部活を作れば・・・・・」
「駄目よ。部活の掛け持ちは禁止。あと師匠が今だったら手が空いてるって言ってましたし。」
師匠。
社会科見学で打ち方など教えてくれたドワーフだ。
「な、何で先程からそんなに急がれているんですか!卒業してからでも良いではないですか!!」
涙で顔がくしゃくしゃだ。
エルグーラは余程シャンメールが好きなんだね。
一度メモで確認したときにはシャンメールへの好感度が誰よりも高かったのを思い出した。
博愛や敬愛、多分それ以上なんだな。
そう思っている僕。
そしてシャンメールの重い口が開く。
「・・・・・魔王が復活する。御父様から話を聞きました。だから私、勇者の使用する剣を作らなければいけないの。だから・・・・・エル、ライローグ御免なさい。」
プライド高いシャンメール。
その彼女が頭を下げる行為。
彼女を見た僕らは口を紡いだ。
その数日後、シャンメールは学園から去った。
ー 魔王 ー
残された僕らはそれに対峙しなければいけないことにまだ気がつかないのだった。
シャンメールやめてしまいました。
そうすると勇者の恋の行方は?
魔王とは?
どうなるのか?
また次回もよろしくお願いします。
那祢でした。




