第四十五話 「棺桶姫の決断と断罪」
こんばんは。
那祢です。
ファルスティーナ編後半です。
二人はどうなるのか?
うまくエンドを見られるのか?
またあとがきで。
携帯電話。
これでファルスティーナを探す時間が省略できる。
それからの日常はあっという間だった。
ファルスティーナの特訓シフトを作ったりアドバイスをするのに便利だった。
夜に毎日マリアンとセオンの電話がくるのには参るのだが。
「あと少しで卒業・・・・私、しっかりできていましたか?」
しおらしく言うファルスティーナ。
言葉使いも少しずつ変えていき少しでも近づきたいと練習したそうだ。
「当たり前だろ?近くで見てはいないが屋上からアドバイスしただろ?」
「カイル様に勘違いさせないためやお姉さまを怒らせないため。その為だけに電話でのやり取りのみの方法を考えるなんてね。・・・・流石ですわね。」
「そうか?」
「・・・・・皮肉で言っているのに。」
「ん?何か言った?」
「なんでもないですわ。」
一瞬影になった気がしたのだが。
気のせいか?
「君はカイルに卒業パーティーに出るんだよね?」
「あ、当たり前ですわ。」
「カイルは君を誘うって自信満々に言っていたからな。」
「・・・・・・」
ファルスティーナは黙る。
なにか不満でもあるのかな?
「どうした?ファルスティーナ?」
「いえ、何でもないわ。ところで貴方は?相手は一人ぐらい見つけているでしょ?」
嫌なところをつく。
お前の姉とマリアンの二人から告白されている。
そういうのは普通は男から伝えるんだが。
知っていて言ってるんだろう。
「嫌みか?」
「いーえ。淑女として気にしてみただけです。」
「相変わらずそういうところは変わっていないな。」
「そっちこそ!」
二人は顔を見合わせる。
「ぷっ。」
「ふっ。」
「「あっはっはっはっはっ!」」
笑ってしまった。
でも僕は知っている。
卒業したらしばらくは会えないと。
カイルと旅に出ると言っていたから。
携帯の話のあとしばらくして魔神が復活したと聞いた。
そのため一部の生徒には魔神討伐の任務が与えられたのだ。
僕は魔力が低いためにお留守番兼この学校を守護することになったのだ。
あと、マリアンとセオンは旅に同行すると言っていたからしばらく会えなくなる。
寂しいが我慢しよう。
「私達、魔神倒せるのかな?」
「わからないよ。戦ったことないから。」
「・・・・戦わないから気楽に考えているの?」
「違うよ!皆の事は心配だよ。だから図書館で沢山調べてみたんだよ。でも・・・・・」
「載ってなかったの?」
いや、載ってなかったのではない。
載せれなかったのだ。
魔神と戦ったのは五千年前。
妖怪や幻獣、魔族の歴史でも長すぎるのだ。
ー 大魔神大戦 ー
そう呼ばれているこの戦争。
その時はスペシャルスキル持ちや勇者がいなく結局封印する事だけで終わった。
代償は酷かった。
管ぎつね族や妖狐、化け猫族は半数が死に絶えたとまで言われている大戦だった。
だからこそ僕は恐怖を感じているのだ。
「ねえ、聞いてる?」
彼女は考え事をしている僕の顔を覗き込む。
綺麗で透き通る肌。
セオンと比べると可愛いが優先されるのだが。
ヴァンパイアに魅了される理由がわかる気がする。
「聴いてるよ。少し考えていただけだよ。」
「考え事?私の特訓以外に貴方が?」
「まあね。」
「どうせ『僕の育てたファルスティーナがカイルの足を引っ張らないか?』とか考えていたのでしょう?」
そこまでは考えてませんよ。
貴方は学園でトップになる実力なのだから。
「いや、そこまでは。ただ不安なんだよ。」
「不安?」
「うん。無事に帰ってくるか。怪我しないか。戦いにいくなら何かしらあると思うからさ。」
「・・・・・・・」
「また笑顔で会いたいんだ。こんな風にね。僕も力があれば参戦したかった。」
セオンのストーリーエンドの時みたいに。
化け狐から妖狐へ。
彼女はうつむき再び黙ってしまった。
ー あちゃー。また怒らせてしまったか。 ー
「ファルスティーナ?」
気になり顔を覗き込む。
すると・・・・・・
ー ガシッ! ー
いきなり頬を両手で押さえつける。
力の加減が出来ていないため伝説の闇医者に出てくる子どもがするあっ○ょんぷりけーみたいな顔に。
「ちょっ!ふぁるとてーな?」
「ライローグ、私が誰も死なせない!その為に沢山頑張ってきたの!防御魔法や回復魔法まで一通り覚えてきた。だから皆を安心して見送ってほしいの。」
「ふ、ふん。」
『うん』が言えず『ふん』になる。
彼女の決心がそこまでしっかりしてるなら大丈夫だろう。
「わはった。みんにゃのきゃえりをまつよ。りょうりのべんひょうをいっふぁいしてふるまってひゃる!かくふぉしとけよ!」
わかった。皆の帰りを待つよ料理の勉強一杯して振る舞ってやる!覚悟しとけよ!
今出せる笑顔でファルスティーナを見る。
その時だった・・・・・
ー ちゅっ! ー
柔らかい感触が僕の唇に。
それはファルスティーナの唇の感触。
ー キス ー
この世界に来てからの二回目。
マリアンと違うのは柔らかさが唇に。
「こ、これは約束のキスですわ。絶対に戻ってくる、帰ってくると約束の。と、友達ならキスなんて当たり前ですから!」
「あ、当たり前か?」
欧○かっ!
つい突っ込みをしたくなるが。
彼女の好意を僕は知っている。
ぬらりひょん様と特訓したから。
前世で見たマリアンと同じ思いなんだろう。
でもかける言葉が見つからない。
ー ズキンッ! ー
この痛みも知っている。
でも言ってしまえば確実にバッドエンドだ。
だから言えない。
ー 好きの気持ちを ー
そう思っていたときだった。
ー ヒュンッ! ー
目の前にセオンが現れる。
「ファルちゃん?何したのかな?」
「あっ!お姉さま!」
「私、ライローグに何かあったときに召喚される魔法してあるのですが?」
「「えっ!?」」
「だから何したか聞いてるんですが?」
「い、いえ。ちょっとした挨拶を・・・・・」
「あらそう?ここでは言えない事情でもあるのかしら?ならばこちらにいらっしゃい。」
「あっ!まって!引っ張らないで!ライローグ!」
「御機嫌よう。ライローグ。ではまた後で・・・・」
そう言いセオンがいきなり現れてファルスティーナを連れていってしまった。
完璧にばれているな。
ー 無残。ファルスティーナは星になった。 ー
そう思う僕であったが・・・・・
「またあとで」
それに気がついてなかった僕。
その後セオンのお説教が僕の部屋で朝まで続くのであった。
ファルスティーナの思いを知り友達で過ごす。
愛情より友情をとる。
そんなライローグの気持ちが伝われば。
次回はパーティー編を予定。
またよろしくお願いいたします。
那祢でした。




