第四十話 「今と過去とキツネの過ち」
遅くなりました。
那祢です。
まよいがにやって来たセオン。
なぜ彼女はここまでする?
ファルスティーナは?
またあとがきで。
「それだけはさせない!!絶対に!」
セオンはそう繰り返しまよいがの空間に割り込んできた。
まよいがは通常妖怪の作る不思議な空間とイメージが強い。
正しくは妖怪の住む安全空間を意味している。
そんな空間を壊すセオン。
かなりの高度なテクニックと魔力があるのだろう。
そんな彼女がいきなり現れファルスティーナに向けて手刀で突く。
ー ヒュン!バシッ! ー
ファルスティーナはタイミングあわせて弾く。
「貴女はさっき何をしようとした!」
「な、何の事かな?お姉様。」
「とぼけるなっ!」
ー ブンッ! ー
次はセオンの回し蹴り!
ファルスティーナは距離をとる!
風圧で少しバランスを崩した!
「今、貴女!ライローグに噛みつこうとしたでしょ!私たちヴァンパイアが噛みつけばどうなるか。貴女、知ってるでしょ!」
「う、うるさいな!」
「昨日みたいに私にやられたりないの!」
セオンの突きに防御のみしていたファルスティーナ。
タイミングよくセオンの腕をつかみ投げる。
ー ブンッ!・・・・スタッ! ー
見事な着地だ。
申し分のない着地を決めたセオンはまたファルスティーナに攻撃を仕掛ける。
「ライローグは私の婚約者だ!卒業したら結婚する。だからお前の従属にはさせない!」
「だ、だから勘違いだって!お姉様の彼氏さんをとるわけ無いってば!」
「信じられないわ!だって貴女はライローグのこと・・・・」
「いい加減なこといわないで!な、何でもないから!お姉様、いやセオン。いいかげんにして!」
ファルスティーナの飛び蹴りだ!
かなり早いぞ!
むしろ後方で魔法唱えずに切り込んだ方が早いのではないのか!?
ー パンっ! ー
ファルスティーナの蹴りとセオンの蹴りが合わさる。
「貴女、やるようになったわね!」
「お姉様。私・・・」
「言ったでしょ!私はライローグと結婚するの。そして貴女はカイルと結婚する。そうすることでヴァンパイアは人、妖怪の世界を繋ぎ止める最高の架け橋になる。そう父の前で決めたでしょ!」
俊敏に二人は動き回っている。
目で追うのがやっとだ。
「むー!」
「あら、貴女は納得してないの?」
「だって・・・・私は・・・・・」
「ふふっ。隙あり!」
セオンの左手が光出す!
簡単な炎魔法だ。
ファルスティーナは右手で受け止め・・・・握りつぶす。
「流石ね。私よりお父様に認められるわけよね。ヴァンパイアは夜にしかバフはかからないの。でも、貴女はそれができるの。やはり特別なのね。」
「私が特別?お姉様に何一つ勝てない私が特別?」
おっ!
ファルスティーナがなんか氷柱みたいな物を出した。
セオンも何かを唱えているぞ!
「アイスニードル!」
「フレイムウォール!」
飛んできたアイスニードルがフレイムウォールに辺り蒸発する。
そのため辺りは水蒸気で見えなくなる。
ー バシッ!ガッ!パンっ! ー
ドラ○ンボールの効果音みたいなのしか聞こえないぜ。
耳を済ますとまだ何かを言いあっている。
「お姉様。私、普通に暮らしたい!好きな人と一軒家に住んで・・・・そして帰ってきた旦那様に料理を作る。そんな生活がしたいの!」
「何を言っているの!私達ヴァンパイアにそんな生活が出来るはずない!貴女、夢を見すぎよ!」
「夢?なら家名を捨てれば自由に・・・・」
「な、何を言ってるの!ファルスティーナ!あなた、可笑しくなったの!」
瞬間移動並みの速さでぶつかり合う。
先程まではセオンが優勢だったが。
今はファルスティーナの攻撃の方が早い。
「おかしくない!私は昔、約束していた・・・・・ライローグと結婚する!駆け落ちしてもかまわない!」
えっ?
約束?
頭の中で考えてみる。
ライローグさんいらっしゃーい!
昔の思いでいらっしゃーい。
「ねえ、ライローグくん!」
「何?」
「ライローグくんってキツネでしょ?」
「キツネじゃないやい!管キツネ、または妖狐だ!」
「じゃあ、キツネさんて呼んじゃ駄目?」
「やだよ。」
「じゃあ、妖狐ライローグくん。・・・・・長いな。」
もじもじしながらつぶやく。
「なら呼び捨てでいいよ!」
「えっ?じゃあ、ら、ライローグ。」
「なに?」
「でも、呼び捨てって彼氏や夫婦みたいで・・・」
「そうかな?」
「うん。そうだよ。なら私達、結婚するね。」
「結婚?」
いきなり話が飛ぶのは子どもあるあるである。
「うん!私、ドジだからいっぱい助けてね!」
「えー!嫌だよー!」
「嫌ってひどい!なら、ピンチになったら私を助けてよ?」
「わかったよ。」
「ライローグ、すきー。」
「くっつきすぎ!」
「えへっ。えへへへ。またね。」
ファルスティーナとの約束だ。
うっ!
「ら、ライローグさん。」
「ん?」
「あなた、こんなところで何しているの?」
遠くにいたセオンがやって来た。
「ドングリ拾ってる。木の実は栄養が高いってママが言ってたから。」
「へー。あなた様は物知りなんですね。」
「色々勉強してるからね。聞いたことは忘れないようにメモしてあるんだ。」
ポケットのメモを見せる。
「あまり気にしていませんでしたが、その年でそこまで出来る。スゴいですわ。では将来何になるのか決めていますか?」
「将来?うーん。まだ決めていない。妖怪のトップとかはぬらりひょんじいじ見ていて大変だしなー。なりたいもの・・・無いと思う。」
「なりたいものがナイト?」
「えっ?うん。」
この時点で勘違いがある。
「ならば私と婚約しなさい。」
「こんにゃく?」
「ちがうわよっ!婚約!結婚することよ。」
「結婚かー。ならだめだよ。」
「何故です!理由を・・・どうしてか言いなさい!」
「え、えっとー。結婚は誰かと約束したから。」
「約束!誰です!教えなさい!」
ライローグの襟を持ちゆらゆら揺らす!
ライローグはすぐにキツネの姿になる。
「頭が良くこんなにかわいい!譲れませんわ!誰なんです!その婚約者は!」
「ふ、ファルスティーナちゃんだよ!ふきゅー。」
さば折り状態で抱き締められてぐたーっとなるライローグ。
それでも離さないセオン。
「ふ、ファルスティーナ。あなたは私の人生設計に・・・許さない!」
「きゅー。」
「ライローグは貴方には絶対に渡さない。あなたから絶対に奪うから!!」
ライローグを抱き締めながら誓うのであった。
「うおっ!」
意識が戻る。
二人にこんな約束してたなんて。
罪作りな奴だぜ。
とはいいきれないな!
今は僕であるから。
なら二人を止めるのは僕しかいない。
「お姉様、いやセオン!」
「呼び捨てって何よ!愚妹!」
「この技であなたを討つ!」
「やってみなさい!返り討ちにしてあげる!」
二人は魔法を唱え始める。
僕のやること。
それは・・・・
「やめろー!」
二人の間に立つことだった。
全てを思い出したライローグ。
ずっとメモに書いてあった二人の思いは?
割り込んだライローグの運命は?
また次回もよろしくお願いいたします!
那祢でした。




