第三十三話「姉と妹と狐」
こんばんわ!
那祢です。
今回はふたりのヴァンパイアのお話。
ファルスティーナとセオン。
彼女らとライローグの関係とは?
またあとがきで!
なんでこんな所に棺桶が?
寮前の歩行の妨げになっている棺桶を睨んだ。
「まったく!本当に危ないなー。この棺桶は。」
軽くノックする。
入っているのは誰だかわかっているからだ。
こんな無茶なことをするのは多分妹だろう。
「そ、その声は・・・・・」
棺桶の中から声がする。
やはり・・・・・
ー ギ、ギィーー・・・・・ ー
主が蓋を開け出てきた。
やはり予想道理だ。
ファルスティーナだった。
彼女は棺桶からさっと出ると棺桶は宙に浮かびだした。
「またよろしくお願いしますわ。」
その一言で空を飛んで行ってしまった。
滑稽だが多分これが彼女の屋敷の自家用車なんだろう。
どのように飛んでるのかは気になるが・・・
彼女は頭を下げて棺桶を見送った。
そして振り返る。
「あら、こんなところで会うなんて奇遇ではありませんか?」
ー バッ! ー
日傘をタイミングよくさす。
まあ、こう見れば一流ヴァンパイアのお家のお嬢様だけどなー。
朝一番で「そ、その声は・・・・」と言っているのに出てきてから「奇遇」と言うのはなぁ。
これは僕に用事があるってことなんだろうな。
多分、次に来ることは・・・・
面倒なことだ!
「おはようございます。ファルスティーナ様。」
「あら、ご丁寧に。おはようございます。」
頭を下げた!
今のうちに!
「ではまた教室で。」
風のように流れる動きで逃げ出した。
「ち、ちょっ!ちょっと待ちなさい!」
「いえ、待ちません。」
慌てて追いかけるファルスティーナ。
早足で逃げる僕。
彼女に関わるとメンタル面や肉体的疲れを感じるから。
だから逃げる。
かまわず逃げるのだ!
「まっ!ラ、ライローグ!まちなさっ!ねぇっ!はやっ!」
持久力の取り柄のアニマル系妖怪に夜型引きこもりお嬢様がついてこれるはずもなく・・・・・
彼女を振りきった。
ー 逃げ切り成功!運動神経が上がった! ー
そんなことも気にしないで学校まで走るのであった。
ようやく下駄箱にたどり着いた。
回りを見渡すと誰もいない。
校庭では運動部が練習をしているのが見える。
上履きをはいて校舎に向かう。
あれ?
校内に誰もいないぞ?
いつもなら騒ぎ声が聞こえている学舎。
そこには誰一人もいないのだ。
そういえば何時なんだ?
携帯を確認する。
午前七時。
・
・・
・・・
・・・・
そう、来るのが早すぎたのだ。
ファルスティーナを思い出す!
もっとゆったりできたのに!
「あの残念コウモリさんめー!」
一人しかいないので響く。
その声が静かになった時だった。
「誰の事かしら?」
自分の影からいきなりコウモリが這い出て切る。
それが集合して・・・・
美しい女性が出来上がった。
ファルスティーナの姉。
セオンだ。
「ねぇ?聞いてるの?誰の事なの?」
なろう抱きで背中にくっつく。
おー凹凸が!
彼女の凹凸はすごく魅力的だが。
他の男子学生に恨まれるのはたまったものではない。
「セオンのことではないよ。だから降りて。」
「眠いからもう少し。ああ、癒し。」
「君はこの姿より狐が好きだろ?」
「えっ?なってくれるの?」
抱き締める力が強くなる。
これは!
第二のライローグさんがヤバイ!
すかさず逃げる技を使う!
「葉っぱ空蝉の術!」
ー ボワンッ! ー
葉っぱと入れ替わり抱き締められるのから逃げ出す。
セオンの抱き締めるのは空を切りその場に座り込む。
「もー。甘えさせてよ。」
「駄目です。」
「ケチ。」
「かまいません。」
「タヌキ。」
「なっ!キツネです。」
「知ってます。ふふふふ・・・・」
「何が嬉しいんですか?」
「ひ、み、つ。」
これは話にならない。
逃げ出すか。
好きを見て・・・・今だっ!
ー ダダッ・・・・・! ー
セオンのいない逆方向に走りだす。
これならまずはつかまらない・・・なっ?
「はい。捕まえた。ライちゃん。」
足元が呑み込まれる。
なんと足元の影を沼化させて僕を飲み込んだのだ。
セオンがゆっくり歩いてくる。
そして・・・・
「ぎゅっ!あー癒される。これで今日も一日頑張れる。さすがライちゃん成分だ。」
正面から抱き締められた。
こんなのを誰かに見つかったら・・・・
「な、何をやっているの!お姉ぇさま!」
ファルスティーナに見つかってしまう。
お約束だよな。
なんか慌ててるようだけど・・・
「ん?ライローグが私を抱き締めたいと言ってきたので抱き締めた。」
「ちょ、まって・・・むぐっ!」
弁解をしようとしたのだが頭を両腕に抱えられ胸に押し付けられる。
力強っ!
今朝なんだけど!
ヴァンパイアって弱体化してるんじゃないの?
そう思っていると・・・
「私は日々鍛えてますからね。」
小さい声で呟いた。
何処の仮面○イダーの鬼?
「お姉さま。私、少しライローグさんと話があるので離れていただけないでしょうか?」
「このままでは話せない話かしら?」
「くっ!ライローグ、貴方はどうしたい?」
まあ何もしたくないんだけどな。
しないと話が進まないんだよな。
「ぼ、僕はファルスティーナが・・・・」
「勇者と結ばれてほしいと思う。」
あれ?
僕の声に似た声が?
セ、セオン!?
彼女を見るが彼女はニンマリ笑っている。
「な、ななな、ならば!ライローグ。私が勇者と付き合えるように情報をもらったり練習などをさせてよ!」
少し半泣きの声が聞こえる。
セオンの胸でなにも見えないが。
ファルスティーナのそれに答えるため。
大きな声で答える。
「わかった!君をカイルの婚約者にする!」
「ありが・・とう。明日からよろしく・・・ねっ!今日は体調ずぐれないので・・・帰るね。また明日。」
廊下を駆け出す音が聞こえる。
そしてセオンの抱き締めからようやく解放された僕。
そこにはファルスティーナの姿はいなかった。
セオンの姿も。
誰もいない校舎に
「約束よ?ファルを勇者の嫁にするのをよろしくね。」
セオン言葉が響き、消えていくのであった。
セオンの作戦に乗ってしまったファルスティーナ。
彼女とカイルの恋を見守る・・・・
わけなく関わっていくライローグ。
どうなるのか?
次回はお休み予定です。
またよろしくお願いいたします。
那祢でした。




