BADEND
※ 第百四十九話「間違った推理。犯人は?」の 『- ザラッ・・・・・ -』からお読みください。
違和感を感じるのだが・・・・・なにも思い出せない。
あれ?
さっきので記憶が戻ったと思うんだけど。
まったく思い出せない。
「どうしたんだライローグ?」
ライローグ?
えっと僕の名前は・・・・・・・
何だっけ?
「話していたと思ったら急に頭を抱え込んで。どうかしましたか?」
遠くからあっという間に近くまで駆け寄るシャンメール。
「さては難しいことを考えて頭が痛くなったんでしょ?必要なんてないんだよ?」
「そうですわ。休憩でもしましょう。体調が一番ですわ。」
笑うファルスティーナと倒れている僕に寄り添うセオン。
「誰だっていいじゃねえか?」
「そうです。貴方様がいれば他には何も・・・・・・」
そうだね。
細かいことなんて考える必要なんてないか。
この世界でみんなと過ごす楽しさに比べたらさ。
「そうです!私と・・・・・・私たちと一緒に・・・・・・家族になりませんか?」
僕の前に一人やってきた。
彼女はシュウだ。
さきほど彼女が皆から襲われていたから助けたんだよな。
でも何で襲われてたんだ?
「そうね。私もライローグさんがいれば何もいらないです。」
真顔で答えるイルフィス。
「なら私が新たな国を作るから全員でそこに住めばいいのでは!?」
「国なんて自分の力で作るから勝手にそこに住めばいいじゃない!」
アルムファイムとヒビキが喧嘩をしながら僕に詰め寄ってくる。
周りを見渡すと皆がいる。
誰もいがみ合い殺し合い死ぬことのない幸せな世界。
他には何もいらないんじゃないか?
これが僕の求めていた世界なんだ。
僕の求めていた世界・・・・・・・・
- ピチュン! -
「あら皆様お久しぶりで。僕の名前は・・・・・まあいいっか?」
テレビが付いたと思ったら一人の少年がそこにいた。
彼は道化師なのかピエロのカッコをしている。
「ライローグ君、幸せそうでよかったですねー!彼をこの世界に呼んだ僕にもとっても嬉しいです。」
少年はパチパチパチっと拍手をした。
「僕の存在に気が付きそうでひやひやしたんだけどあっけなく終わっちゃったね。ええっ?なんかずるいことをしたって?侵害だなー?」
少年は両腕を組んで首をそっぽに向けた。
「・・・・・まあちょっと困惑剤を空気に混ぜてバラまいただけなんだけどね?えー?ずるいって?」
少年は手を前に出して横に振り否定をする。
「ずるくないよだって・・・・・・」
ピエロの顔が近づく。
「勝てば官軍、負ければ賊軍って言うじゃん。だから何をしても勝てばいい。負けた方が悪いんだ。だからさ・・・・・」
少年が少し離れる。
「負けた君がいけないんだよ。ライローグ、君の事は忘れないから。」
スポットライトが当たる。
そこには一人の男性がいた。
ライローグだ。
ライローグの体にはお札やチェーン、包帯でぐるぐる巻きにされている。
「む!むーう!むむむー!!!!!!!」
話そうにも猿ぐつわで話が出来ない。
もがき暴れるライローグを他所にその場を離れる少年。
そして壁にあるレバーを少年は掴む。
危険を察知したライローグ。
もがく!
もがくが外れない!
「ひゅう!ほへん!ぼふのすいりはまちがってひたっ!!よるひて!」
そんな彼に一度微笑む少年。
そしてレバーを下す。
「ふぎっ!あがががががががががががっががっがががっがががががgg!!!!!!!!!」
ライローグの体に電流が流れる!
泣き叫ぶライローグ。
「ぎゅう!ごえべべべべんっ!や、やめでえええええええええ!」
「電気の拷問で記憶を焼き切っちゃうおうね?すべて忘れちゃおうね?」
「ひぎぎぎぎぎぎっ!あがっ!・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこでライローグは気を失うのであった。
「やあ!ようこそ、勇者くん!僕の名前はライローグ。君に女の子の情報や居場所なら僕に任せてよ!君の求める子探し出すんだからね。」
このゲームを始めてクラスで出会った最初の男友達。
話し上手で何でも教えてくれる情報の専門家。
前のゲームクリアーもこいつのお陰。
このゲーム内では頼りもなるし顔はまあまあ。
「今日は誰の情報を知りたい?それとも・・・・・」
こうして彼はもう戻ることのないたった一つのゲームの駒、モブとなった。
『恋×戀モンラバ』から解放することなく永遠にこの世界に残る。
そう、永遠に。
「いかがでしたか?一人のモブのお話。彼はどうなるって?恋愛ゲームをしたことあるならわかるよね?」
少年の声は聞こえる。
「情報を述べる只のモブとして生きるのさ。只のモブって。みんなを救えなかった探偵の寂しく悲しいお話。」
ライトアップされ光から少年があらわれた。
彼は仮面をしている。
「彼もいいとこまでがんばったのになー。残念。姫たちを救うことはできませんでした。残念無念のゲームオーバーさ。あはは。」
その言葉をいい少年は後ろを向く。
彼の下には一滴の水滴が落ちる。
汗か?
それとも涙か?
彼は歩きながら幕外へ消えていくのであった。




