第十九話「未体験」
「ライローグさん。カイルさんとこれで付き合うことができるのでしょうか?」
丁寧語のマリアン。
今まではガサツ&ワイルドだったのだが・・・・
綺麗な淑女に!
淑女に・・・・・?
あれ?
なぜかマリアンはプルプル震えている。
「どうした?」
「ど、どうしたって・・・・あんまりこっち見ないで。」
顔まで赤くなっている。
さらに心配になる。
「な・・・・僕、何か悪いことした?それとも体調が悪いの?」
覗きこむ僕に対して
「だ、だからこっち見るな!」
そう言いながら頭を押さえながら横に向かせる。
そのまま後ろに回り込む。
ちょ、チョークスリーパー!?
ー 首をしめられる!!! ー
身構えられない僕。
しかし、絞め技はこなかった。
その代わりに安定の柔らかなものが背中をおおう。
こ、これは!!!
ー あすなろ抱き! ー
某ドラマの背中から女性を抱き締める奴。
それを今、やられている。
そうそう、たしかこのあと・・・・
「お前の綺麗な瞳でそんなに見られたら照れるだろっ!バカっ・・・もうっ。」
ぎゅっと抱き締める。
僕も顔が赤くなる。
どんどん赤くなる・・・・?
ちょっ!まっ!
「ま、まり、まりあ、しめ、しぎ・・・」
そう、彼女は力が強かったのだ。
僕が妖術使い。
まあ、魔法使いなので戦士タイプの彼女には勝てないのだ。
だから、振りほどけないのだ。
「私は人馬のケンタウルス。獣人と分類されるの。だから、人間を愛していいの?」
「ふぎゅっ!ふぬ、まり、ふっ!・・・・」
「ねぇ?」
「・・・・・・・」
「どうして。どうして答えてくれないのっ!私には無理なの!」
マリアンは僕を振り向かせた。
「あっ・・・・・」
朧気だけどマリアンの顔が見える。
青白くなっているだろうな俺。
あれ?
マリアンが近くなる。
あ、目があった。
顔が近づいてくる。
そしてくちづ・・・うぐっ!
いきなり口に息が吹き込んできた。
「う~!!ふんぐ~!!!」
じたばたする俺。
ちょっと!まって!!
キスはいいけど息、送り込まないで!!!
マリアンの頭を押さえて押し返そうとする。
だがマリアンは動かない。
「ママ、マニアン・・・ぢょ、ぢょっど!!」
「ん?んっ!おぎたんだね!よがっだよう!」
だ、だから人工呼吸を終らせて!
しかし、伝えようとしてもフガフガしか聞こえない。
じたばたする俺に気がついたようで唇を離す。
「ぷっはぁ~!人工呼吸しすぎ!!」
「ごめん!やりすぎたね。ふふふっ。」
ニコニコ笑う彼女。
その嬉しそうな顔に俺は・・・・
「気にしないでいいよ。マリアン、次回も淑女になるため頑張ろう!」
笑顔で答えた。
ただ手足は震えているが。
仕切ろう。
「うん、わかったよ。今日はここまで。また明日練習をしましょう。」
手を降りなが蹄をならし彼女は教室から出ていく。
後ろ姿を見送ったその時。
ー ガタガタンっ! ー
「た、確かに恋愛ゲームだけど・・・・」
僕は足腰がたたないぐらい震えながら崩れ落ちる。
恋愛初心者にはキツい一撃だった。
僕が戻ってくるのに三十分もかかった。




