第百六十四話「二人暮らし。」
こんばんわ。
那祢です。
シュウと二人きりになったライローグ。
彼はどうなるのか?
そして?
またあとがきで!
「ねえ?ライローグ?」
シュウが問いかける。
今は何処にいるって?
それは彼女の作った家にいる。
二人で暮らすために創造主にばれないようにこっそり作っていたらしい。
その家で僕たちは数か月暮らしている。
「・・・・・聞いてる?」
シュウが背中をつついてきた。
「聞いてるよ。」
「本当に?僕の世界で会った話、飽きちゃったの?」
「いや、飽きたってわけではないけど・・・・」
飽きたってわけじゃないけど落ち着いて聞いてられない話なんだ。
だって彼女の作った世界って僕が過ごした学園の・・・・・・
そうこの学園のエンディングまでの話だ。
ハッピーエンドもあればバッドエンドもある。
今のところハッピーエンド出来ない勇者の話がほとんどだ。
しかも話しながらそのシーンがスチールで見ることが出来る。
それが僕の精神を削っていく。
「あー悲恋話って嫌いだった?」
「う、うん。好きじゃないね。だってさっきのあれはー」
「そうだねー。ろくろ首姉さんの話だったんだけど名前じゃわかんなかったかー。」
「いいや。名前は聞いたんでわかっているよ。それじゃなく最後の彼女のシーンが」
「そうそう。勇者に敗れていった妖怪達の魂が集まってぬらりひょんランクまで上がった姿だよ?」
ろくろ首は首が伸びるのが当たり前だと思っていたのだが。
その首がちぎれて輪になって浮遊しているのを僕は見たことが無かった。
色々な妖怪の妖力が混ざったせいなのか自我を保てず周りの人間に無差別に襲い掛かっている。
「その彼女が好きな勇者に涙ながら『あたいを刺せ!』って自我が芽生えるところが泣けますよね?」
「・・・・・・・・」
そうだった。
彼女のプログラムを作ったのはあの二人だ。
何でもバトルにしたがるヒビキ。
〇国ドラマや切なさの多いコミックが好きだったメドサ。
この二人が作ったので癖が強いのだ。
「うーん!いっぱい話したし。さて、そろそろ時間だし夕ご飯の買い物でも行こうか!」
「あ、ああ。行こう!」
買い物。
この世界にあった商店街とかはシュウがそのまま使えるようにしている。
まあ、この世界にいた方たちはすべて元の世界にお戻したのでここにいるのは。
「イ・ラ・シャ・イ・マ・セ・・・・・」
なんかわからないが黒い影みたいな人がいる。
この世界にいた人たちを模写したのか形は同じなのだが言葉に生気が無い。
その方にお金を支払い購入している。
「これください。」
「ア・ラ・オ・ク・サ・ン・オ・カ・イ・モ・ノ・デ・ス・カ?」
「いえ、旦那様の好物を作ってあげたくて。」
「シ・ア・ワ・セ・モ・ノ・デ・ス・ネ。オ・カ・イ・ド・ク・ニ・シ・ト・ク・ヨ。」
「ありがとう!ねっ!ダーリン行きましょう!」
「うん。」
彼女は店員さんみたいな影と買い物する。
買い物が終わった彼女は嬉しそうに僕の腕に手を組んできた。
彼女の暮らしを何か月過ごしたかな。
僕はこの買い物が苦手だ。
何故かって?
転送魔法で帰還して別れた彼女たちを思い出すからだ。
影。
そう今までいたヒロインたちの影もある。
ここに来るまでに
「ア・ラ?ラ・イ・ロ・-・グ?オ・シ・ア・ワ・セ・ソ・ウ・ダ・ネ!」
「フ・フ・フ。ウ・ラ・ヤ・マ・シ・イ・ワ・ネ。」
ファルスティーナとセオンのかげに会った。
彼女たちは無事に過ごしてるかな?
戻っても健康に・・・安全に生活してほしいな。
「ワ・タ・シ・ノ・ミ・セ・ニ・カ・イ・ニ・コ・イ!」
「オ・ジョ・ウ・サ・マ。ム・リ・ジ・イ・ハ・ダ・メ・デ・ス!」
アルムファイムとメドサだ。
メドサは会社で怒られていないかな?
結構ブラックな場所だったし。
アルムファイムはまあいいか。
目的のメドサに会えたかな?
「ラ・イ・ロ・-・グ!シュ・ウ・サ・ン・ニ・メ・イ・ワ・ク・カ・ケ・テ・ナ・イ・カ!」
「キ・イ・ッ!ウ・ラ・ヤ・マ・シ・イ!ワ・タ・シ・ガ・ホ・シ・カ・ッ・タ・ノ・ニ!」
「オ・ラ!ウ・ル・サ・イ・ナ!バ・カ・テ・ン・シ・ガ!」
シャンメールとイルフィス、クロエ達だ。
シャンメールは学校に行ってるかな?
また会おうって言われたけど叶えれなくてごめん。
イルフィスは・・・・・恋をしてるかな。
それとも僕を待っていたりして。
・・・・・無いな
クロエは部活戻ったかな?
部活って聞いてなかったから習い事とか?
頑張ってほしいな。
「ヤ・ア!ウ・シ・ロ・ノ・ッ・テ・イ・ク・カ?」
「マ・リ・ア・ン・サ・ン!ハ・シ・タ・ナ・イ・デ・ス・ヨ!」
「マ・ア・マ・ア・ー。ミ・リュ・ン・セ・ン・セ・イ。オ・コ・ッ・チャ・ダ・メ・デ・ス・ヨ・ー。」
マリアンとミリュン先生、そしてジュリー先生も来た。
先生達二人は元の仕事に戻ったのかな?
頑張ってる姿、見てみたいけど・・・・無理だよね。
マリアンは陸上と新聞配達するって言ってたけどリハビリしてるかな。
まあ何か月たったし彼女なら治して走ってるかも。
あと僕を見つけるって言ってたけど僕はずっとここだから無理だよね。
- ずっとここ・・・ -
僕はもう元の世界には戻れない。
シュウとこの世界に二人で。
- ポタリ -
あれ?
視界が見えにくい。
ああ、これはあれだ。
感動した時や欠伸した時に出る。
『涙』
僕は何で泣いてるんだ?
一人寂しいシュウを幸せにできるんだろ?
彼女も僕と同じ気持ちにしていいのか?
駄目に決まってる。
皆を戻すためって言っていたけど。
僕は彼女を寂しい思いをさせないため残ったんだろ。
右袖で涙をぬぐう。
「ライローグ?」
シュウが声をかけてくる。
そうだよね。
いきなり泣いちゃったから驚いたんだろう。
「ごめんね。驚かせちゃって。さあ、夜ご飯作ろう!」
崩れながらだがシュウに笑顔を向ける。
彼女の前では心配させたくないから。
「ライローグ・・・・・」
「何でもないって。感極まって涙、出ただけだから。」
「そう?ほんとに?」
「本当。さあ、家に戻ろう。」
「・・・・・うん!」
僕達は手を繋いで家に帰った。
短い距離だが。
二人だけのこの時間は本当に幸せを感じる。
「シュウ。」
「ん?」
僕は彼女を呼ぶ。
僕の方を見上げる彼女。
その彼女に
「愛してるよ。」
そう言うとシュウは笑顔になった。
僕はこの笑顔を守りたいんだ。
そのため残る決意をしたんだ。
彼女に寂しい思いをさせない。
そう心に決めるのであった。
「できた?」
「もちろん。わが社の技術は無限大だ。」
「そういうのは良いから!」
「喧嘩をするな!ここは私の研究室であって・・・・・」
「予算は私が作りましたのよ?お忘れに?」
「力仕事は任せたくせに!」
「まあまあ、皆でやったことにしましょうよー。」
「醜い喧嘩だな。でも嫌いじゃない。」
「そうだな。」
現実世界では何かが始まる。
一人を取り戻すために。
シュウのために残った。
そのため現実世界を犠牲にしたライローグ。
二人はこのまま幸せにくらし・・・・・
まだおわらんよ!
次回もよろしくお願いいたします。
那祢でした。




