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第百五十五話「取引」

こんばんわ。

那祢です。

今回も観覧車の続き。

何を目的でデートに誘ったのか?

あきらかに?

店員さんに送り出された僕達。

無言。

ただ無言だった。

そして折り返しが近づくとようやく彼女は閉ざされた口を開いた。


「・・・・・・・かったの。」

「えっ?」


小さい声で聞こえなかった。

あっ。

ジト目でこちらを見てくる。

本当に聞こえなかったの!

お願い!

手を合わす僕を見て彼女は聞こえる声で話す。


「寂しかったの!一人っきりは寂しいの!」


僕は驚いた。

だってシュウが抱えていたもの。

それが寂しさだったから。

彼女はパソコン内でプログラムを用いて作られた物だ。

電〇少女が近いかな?

体があれば昔の映画で言えばスター〇ォーズのC-3POやR2-D2みたいなものだ。

最近ではAIって映画もあったような。

そんな彼女が抱いていたもの。

それが『孤独』だった。


「黙っていないで笑っていいんだよ!データーのくせに寂しがるなんて変だって!」

「いやごめんごめん。そうじゃないんだ。」

「何がそうじゃないの!寂しがり屋のAIなんて可笑しいじゃない・・・・」

「いやだから・・・・・」

「人工知能でもないくせに勝手に寂しがって。入院して辛い思いをした子をこの世界に連れてくる。それってまるで・・・・・」


人攫い。

その言葉が頭に浮かんだが言わないでおく。

彼女が言い淀んだから。

彼女も言いたくなかったんだろう。

涙をこらえてる。

感情が抑えられず震えるシュウ。

こういう場合は男ならどっちだ?


①抱き寄せキスをする。

②彼女がしたことを追求する。

③その他


①はまず意味が無いと思う。

まず抱き寄せてキスをするのはイケメンに限る。

笑顔もイケメン(死語)ならニコリ!

イケメンなら何でも許されるからだ。

僕なら?

にちゃり!

無理だー!!!

イケメン補正が無い!


②で追及をしよう。

人攫いだ!

お前に感情はないのか!

製作者は泣いてるぞ!

皆を解放せ・・・・

この世界で処分されて終わるんだろう。

まったく意味が無い!


ならば③?

頭から絞り出した結果・・・・


- ナデナデ・・・・・ -

「ふぇ?」


横に座り頭を撫でることにした。

いやだって泣いてるんだもん。

イケメンじゃないなら撫でる事しかできないじゃない!

顔を上げてこちらを見つめるシュウ。

うん。

昔、恋愛ゲームをよくやっていたけど。

この子は断トツに可愛い。

多分他の子は元の世界の姿をこの世界に合わせるために合成されたものだけどシュウは多分プログラムで作られたオリジナルだからそう感じるのだろう。

顔を見つめて済ます


- ガチャリ! -

「はーいご到着です!彼氏さん、彼女さんと仲直りできたんですねー。よかったですね!では閉園近いので急いで降りてくださいねー。」


僕は待ち構えていた店員さんの誘導に流れるように観覧車の中から降りた。

シュウと手をつなぎ急いで門を出る。

遊園地からの帰り道。

先ほど撫でてしまった手。

今、絶賛手をつないでいる。

一歩間違えればセクハラだ。

『この人に無理やり撫でられましたー!しかも手まで引っ張って世界が許しても警察が許しませんよ!』

なんて言われてしまう。


「そんなこと言いませんよ?」

「ふはっ!?」


いきなりシュウに話しかけられたので変な声が出てしまう。

その際、手を放してしまう。


「あっ・・・・」


シュウが寂しそうな声を上げる。

・・・・・・僕はまた手を繋ぎなおした。

シュウはニコッと笑って歩き出す。

何処かしらご機嫌のご様子。

いつものシュウの顔だ。


「声に出てたんでつい・・・」

「ああ、そうかごめん。・・・帰るか。」


帰り道を歩きながら考えている。

シュウは寂しいからこの世界に同じ境遇の者や挫折した人を引っ張りこんでいる。

なら寂しくなければいいのか?

方法は無いのか?

腕をぷらんぷらんしながら歩く。

おや?

視界に入ったシュウは少し膨れ顔になっている。

また何かしたか?


「ねえ。」

「ん?」

「さっき言いかけてたこと・・・教えて?」

「さっき言いかけていたこと?ああ、あれか。」


AIが寂しいってことだ。

その後彼女が苛立ちはじめ話が終わっている。


「寂しいって感情の事か?」

「うん。」

「あれだけどさ。僕的にはおかしいとは思っていないんだよね。」

「えっ?」


驚き目を見開くシュウ。


「だってさ、君は多分なんだけど製作途中で放棄されたんだよね?」

「・・・うん。警察が押収して通電してくれなかったら箱の中にずっといた。」


感情があるAIが事故の為、ゲームの制作中止。

そのため永遠に出られることのないパソコン内にいたんだ。

確認してもらうまで出れない孤独を味わう。


「僕だったら耐えれない。暗い中で一生を過ごすと思うと。」

「・・・・・」

「君のしたことはいいとは言えない。」

「それは・・・・なぜ?」

「何故かって?確かにこの世界にいる事は幸せだと思う。見たくないものを見なくていいからね。でもこの世界にいたっ・・・・・現実を背けていたっていつかまた現実に必ずぶつかることになる。」

「ぶつかる?」

「そう、君と違って彼ら彼女らは現実社会に生活している。家族がいて友達がいてそして恋人がいて。しかも生身の体なら死も押し寄せてくる。」

「それはデーター化すればずっと・・・・」

「データーにしたら永遠に生きられると言いたいのかい?それは絶対しちゃいけない。」

「ど、どうして?この世界で暮らせば永遠に若さや楽しい生活を・・・・」

「永遠の命。それは神さえ許さない理。君は神なのか?」

「だ、だって私は創造神で!」

「君は神じゃないAIだ。」

「ちがう!ちがうちがうちがう!!!!」


つないでいた手を放し体全体で否定するシュウ。


- ぱしっ! -


その彼女の頬を持つ。


「だから僕が君とこの世界にずっといる。その代わりこの世界に閉じ込められている者。全員を解放してほしい。お願いだ。」


僕は頼み込む。

良いって言ってもらえないかもしれない。

シュウを見つめる。

見つめる二人。


「ふん!じゃあ取引。ここにいる皆を解放する代わりに・・・・・・」


耳元で答える。

その言葉に驚愕を憶える。

何故なら・・・・・


「私と・・・・一晩すごして。」


そう言われたからであった。

孤独が嫌いなAI。

彼女が起こしていたのは寂しさとつらさ。

同じ気持ちのものたちを集めることだった。

次回もよろしくお願いいたします。

那祢でした。


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