第百十話 「モブの役割とは?」
こんばんわ。
那祢です。
今回は短めです。
何故かは・・・・聞かないでください。
また後書きで。
もう駄目だ。
勇者の帰還から五か月。
俺はボロボロになっていた。
肉体的?
いえ精神的に。
理由?
わかるだろう?
俺の唯一の隠しアイテム『メモ帳』を盗まれてしまったからだ。
相手の情報が自動的に書いてくれる単なるお助けメモ?
馬鹿にするな!
俺の得たすべての情報が記載されてある極秘メモだ。
この大変な状況がまだわかってもらっていないな。
ならば例えよう!
まず俺は『情報屋ライローグ』と言うモブだ。
モブには必ず仕事というものがある。
俺は情報を勇者に売って勇者の時間をもらっている。
恋愛ゲームによくあるだろう?
好感度や攻略対象の好き嫌いなど聞ける『親友』という奴が。
そいつに電話または直接会って話を聞くと時間がたってしまう代わりに情報がもらえる。
その役目が俺だ。
ここまでの話はOKか?
ならそれが無い俺は?
‥‥‥
単なる観客?
助平なことを昔して嫌われている男?
顔が書かれないシルエットだけの完全モブ?
それに俺は成り下がろうとしていた。
今日も教室で一人。
話しかける奴もいない。
勇者二人も話しかけてこない。
メモがない俺なんてこの世界では
「怒鳴りのクラスにかわいい子が入ったんだって!」
「何だって!?見に行こうぜ!」
「宿題やってきた?」
「いや、残りの時間で終わらせる!」
「学食行こうぜ!」
「混んでるから早めに席を取ろう!」
などの会話をするだけのキャラの一つにしかない。
「ライローグー!なにしてるにゃ?」
この中で話しかけてくれるものが一人。
語尾に『にゃ』が付けば誰かかすぐにわかる。
キサラギだ。
こいつは相変わらず俺に普通に接してくる。
くっ!
可哀そうだと思って話しかけてきたな!
いらないお世話だ!
お前なんかカイルの婚約者になっちゃえ!!!!
・・・・・・
声に出しては言えない。
言えば傷つくから・・・
多分こいつは俺の状況を気にして話しかけてきたのだろう。
キサラギ・・・・・
トクンッ!
鼓動が早くなる。
髪が触れるぐらいに近寄ってきた。
さらに鼓動が早くなる。
忘れてそうだ俺・・・・・こいつが好きだったんだ。
「おい!キサラギ!寄るな!」
俺はキサラギを注意する。
こいつはカイルの婚約者になるのだ。
俺が彼女に情を持ってはいけない。
そう言い聞かせているだろ!
この会話、二人きりならば良かったのだが。
ただ言った場所が悪かった。
ここは教室。
俺は彼女を突き放す所を目撃された。
「ライローグ君!!!あなたって狐は何でキサラギ君に冷たいんだ!!!!」
瓶底メガネの男が俺を指さしながら注意してきた。
こいつって確か風紀委員の・・・・・・
名前は憶えていない。
いや、正しくは憶える気が無いのだ。
「冷たい?俺がか?」
「そうだ!二人をよく見れば話しかけても無視をするし」
「無視なんてしてな・・・・・」
「煩い!人の話を全部聞いてから話せよ!キサラギ君から歩み寄っても近寄るな?お前はどこの貴族出だ!!」
「だから貴族って訳では・・・・」
ー ギロリ ー
睨まれてしまった。
そう言えば全部聞いてからって言ってたな。
「キサラギ君は君にだけ優しい。クラスのみんなは知っていることだ。」
「にゃ・・・・・・?」
キサラギの顔がひきつる。
回りを確認する。
全員うなずいている。
まさか・・・・・こいつ!
「なぜそんなに君がキサラギ君を突き放すのか。僕は知ってしまったんだ!」
「おまっ!やめっ!」
いきなり回りにいた魔物たちに捕まる。
口まで塞がれた。
俺が考えているならヤバイ!
抵抗するが身体強化の術を使ってるんだろう。
逃げられない。
「彼は・・・・・」
「は、ふぁめろー!」
キサラギがいるんだ!
それを言うな!
それを誰も止められなかった。
「君のことが好きなのさ。で自分で君を幸せに出来ないから勇者とくっつくようにしたのさ」
「にゃ、にゃんだって?」
固まるキサラギ。
「ねぇ、ライローグ?」
彼女の首がこちらを向く。
それはゆっくり。
鬼ババ、いや化け猫の正体を知った人間の気持ちがわかる。
まさに死の宣告。
そう思う短い時間をそれはゆっくり、ゆっくり味わうのであった。
メモがない主人公。
気持ちもばれてしまいキサラギとどうなる?
彼は?
次回はお休みします。
またよろしくお願いします。
那祢でした。