いざ、魔界へ
「またここか」
二度目となるとあまり驚かなかった。
そして、前と同じで目の前に1人の影が居る。
「あなたが私を必要としてくれるまで待っています。」
「お、お前は誰なんだ?教えてくれ」
俺は、前にも聞こうと思っていたことを聞こうとした。
しかし、聞こうとした瞬間またも、ざぁぁと雑音が流れて聞くことができなかった。
そして、その影は、「魔王の館でまっているわ」と、言い残してどこかに消えていった。
朝の掃除を終えた、テトラと俺は教会に向かっていた。
「緊張するだろ」
「少し緊張してます」
テトラの言葉に俺は答えた。
今日は、冒険者として初めて魔界に行くことになっていた。
「武器や道具はどこで買うの?」
俺の発言に、テトラは
「よくぞ聞いてくれた」
と、聞いてくるのを待っていたかのような返事をした。
「教会では、新冒険者に2週間武具を貸してくれるんだぜ。」
なぜかテトラは、ふふぅん と腕を組みながら答えた。
そして、教会に着き着替え室と書かれた部屋に行った。すると、「新人冒険者の方はこちら」と、書かれた看板があり、その隣には人間やエルフ、等の獣人の係員がいた。
俺がその看板を見ていると、
「もしかして、新人冒険者の方ですか?」
と、赤い髪のロングヘアの女性に声をかけられた。
背は、俺くらいで普通にかわいい女の人だった。その、女性は「どうしました?」と、聞いてきて、俺は顔を赤くしながら答えた。
「あ、はい...新人冒険者の人です」
緊張してしまい、自分のことを人と言ってしまった。
すると、その女の人は
「私は【シエナ】よろしく。えっと、君の名前は?」
微笑みながら、聞いてくるシエナさんに
「俺は…じゃなくって、僕は【ヴァルト】です」
いまにも爆発しそうなほどに緊張していた。
そして、シエナさんは笑顔で「こちらへどうぞ」と、扉の中に入っていった。
そして、中に入ると物凄い数の武器や防具が並んでいた。
「好きな武器と防具を選んであそこにある試着室で装備してね」
シエナさんの言葉に「はい!」と、答えた。
この数千個にも届きそうな武器・防具を1つずつ見ていると、銀色で全てを映す鏡のように輝く太刀が目に入った。それを、手に取ると握りやすく手にすごく馴染んだ。
そして、俺はこの太刀と防具の山から取り出した、黒い鎧やアームを取り出し試着室に向かった。防具を着ると結構重く足に負担が大きかった。そして、シエナさんに、足に負担のこない防具を選んでもらうと、白い胸当てと白のアームそして、黒いマントを持ってきた。
「最初の冒険でこんなに軽装備は、普通しないけど、あなたには、レベルのそこそこな友達が付いてるから、これで良いと思うよ」
シエナさんにお礼を言ってこれを装備した。
足には、負担もこなくてさっきよりも動きやすくなった。
そして、武具の貸し出し記録を付けてテトラのいる着替え室へと向かった。
テトラの武具はまるで、鎧を着たギガンテスのような装備だった。
テトラは、俺の装備を見て
「そんな装備で大丈夫か?」
と心配してくれていた。
「テトラさんもいるし最初らへんの敵くらいは倒せるはずです」
と、笑いながら答えた。
「ま、俺がいるから大丈夫か…」と、テトラは1人でに呟いていた。
そして、着替え室を進むと「いざ、魔界へ」と冒険者をワクワクさせるような看板があった。
そして、そこの扉を開くと「いざ、しゅっぱーつ」と言う冒険者の声が響き渡っていた。
テトラに付いていくと、若いエルフの男女のまえで立ち止まった。
「よぉー、テトラっちぃー」「ひさしぶりぃー」
とエルフの男女はテトラに声をかけた。
「お、おぅ..久しぶりだな」
テトラは、顔を引きりながら答えていた。
「なんだぁ、今日も元気ねーなぁ。」
と、エルフの男が笑いながら声をかける。そして、女のエルフと俺は目が合った。
「きゃぁ、何この子。ちょーかわいいんですけど!」
俺に興味津々なエルフに、テトラは
「あの宿屋で働いている仲間だ」
といい、俺は自己紹介をした。
「ヴァルトです。よろしくお願いします。」
「おうよ、よろしく」「よろしくね、ヴァルっち」
と、2人はうれしそうにしていた。
そして、
「こっちの男が【クレギア】でこっちの女が【レビリア】」
と、テトラが呆れた顔で教えてくれた。
「んで、今日はどこのところに行くんだい?」
「えっと、草原の3階に行く予定かな」
「わかった。3階だね」
クレギアが確認して、チケットをくれた。
「相手が、弱いから手油断するなよ。絶対、生きてかえるんだぞぉー。」
と、レビリアの声を聞いて隣の入り口に入った。
そこには、転送装置がありさっきのチケットで行きたいところに転送するらしい。
そして、「準備はいい?」テトラの声にうなずいた。そして、光に包まれて俺とテトラは魔界へと出発した。
「痛てててて...」
しりもち付いたような痛さだったが、周りの景色にビックリしていた。
「あ、あぁぁ...」
「お前もビックリするんだな」
テトラの声でハッとなった。
目の前は、サバンナのド真ん中にいるような風景だった。
「さて、レべリングでもやりに行きますか」
「レべリング?」
と聞き返すと、テトラは「冒険者がレベルを上げることをレべリングって言うんだよ」と教えてくれた。
そして、魔物を探しながら、冒険者の専門用語を聞いていると、サルとゴリラが合体したような魔物【ファング】が3体現れた。
この魔物のレベルは7.8くらいだと、テトラは言った。
そして、「俺の戦い方を見ときな」と言い、1匹の魔物に飛びかかった。こちらに気付いた【ファング】は、テトラの方に突進してきたが。遅い。
テトラは、ファングの背後に回りこみ、手に持った鉄製の赤いハンマーで頭部をブッ叩いた。すると、その魔物は力を失ったかのように倒れこんだ。そして、倒れたファングは、砂となり消滅した。
魔物を倒すと地面に存在するちっちゃいバクテリアが魔物を一瞬で吸収すると言う。
そして、残りの2体は、ヴァルトの実力を知りたいということで、2人で倒すことにした。
さっきのテトラの戦いを真似したが、なかなか上手く回り込めずにいた。しかし、ファングが攻撃の勢いでバランスを崩したところを見逃さなかった。そして、ファングの背後に近づいて銀色の太刀を薙いだ。刹那、ファングの胴体は真っ二つに裂かれた。
もう1体のファングを倒し終わっていたテトラが驚いていた。
レベル1の冒険者がレベル8の魔物に攻撃を受けずに、一撃で魔物をしとめた事に。いや、それよりも、真っ二つに切り裂いたことに。
テトラが双眼を見開いて、「こ、こんなことレベル1の冒険者ができるはずがない。
しかも、1回戦い方を見ただけなのに、なぜ、あんなにもうまく攻撃をかわせるの…」と、自分に語りかけていると、
「いまのどうでしたか?」
「結構良かった...よ」
と、いつもとは違い難しい顔で言った。
俺は、そんなテトラに「これはなに?」
と、さっき倒したファングのところを指差した。
そこには、倒したファングから毛皮がドロップしていて、テトラは、久々に見たぁと苦笑していた。
冒険者が、魔界でリードを稼ぐ方法は3つある。1つは、ドロップアイテムを売るで、2つ目は、街の薬屋や食堂の店に草や食材を魔界で入手してくるなどの依頼を受けるということ。そして、3つ目は、魔界にいるボス攻略をすることの3つである。
そして、このファングの毛皮は、10リードと安いが売れるという。
その後も、ファングの毛皮を2つゲットした。
そんなこんなで、他にも20体ほどファングを倒し、暗くなったから帰ることにした。
夜の魔物は、昼とは出てくる魔物が違い想定レベルがかなり高くなるらしい。
「あぁ...気持ちいなぁ」
と、テトラさんと宿屋に帰り着き風呂に入っていた。
今日はすげー疲れたな、と1人で呟いていると、
「ガラガラガラ」
「え...」
風呂のドアが突然開いた。俺は、何事だ?と思いドアの方に目をやる。
その光景に両目を見開いた。なんと、そこに立っていたのは、マリアだった。マリアは、バスタオルを1枚体に巻いている格好だった。
そして、マリアは、にこにこしながら風呂のドアを閉め、
「ヴァルトおにぃちゃんのお背中流しに来たよ」
と、頬を赤くしながら言うマリアは物凄くかわいかった。
しかも、膨らみかけの小さい胸がバスタオルの上から分かり、妙にエロく見えてしまう。
そんな俺にマリアが、
「そんなにマリアを見つめないでください。」
手をもじもじさせながら言うなんて反則だろと思いながら、マリアがポンポンと叩いている所に座った。
そして、小さな手が俺の背中に触れた。それはもう、天使が背中を流してくれているかのようにも思えてしまっていた。
楽しい時間と癒しのひと時はあっという間に終わった。そして、次に待っていたのが、やっぱりミカエラさんの拷問だった。
今回は、昨日の拷問の倍以上も長い拷問が待っていた。
闘店大会まであと2週間。街では、「大会まであと、2週間」とデカくかかれた垂れ幕が、そこ等中の店に垂れ下がっていた。冒険者は、レベル上げで朝から魔界に行くパーティーが増えていた。
それから、3日程経ち、あの悲劇は起こった。