第9話 ★ 早速の仕事 ★ ①
皆様、お久しぶりです。
前回の更新からもう一ヶ月と半分近く過ぎてしまいました。
年度の変わり目は本当にバタバタしますよね。
今でもしています。
が、毎日少しずつ書いていき何とか更新準備が出来ました。
もう喋りすぎ……ですよね?
これからも更新は不定期になると思いますが、「俺恋」をよろしくお願いします。
4月11日
「おーい」
微かに竜也の声が聞こえた気がする。
「あれ、彰人が爆睡してるべぇ」
どこかの地域の訛りが感じられる喋り方をしているやつと言えばイルカ。
本名が入鹿 浩司ということで、そのまま渾名はイルカになっている。
顔は…どう見ても…シャチだな!!
「んなもん、彰人が寝てるのはいつものことじゃん。で、こんだけ爆睡の状態というのはどうせエロゲーでもやってたんだろうよ」
「違うわー!!」
心地よい安眠を妨げられた俺は思わず大声になる。
最もそうなった理由は別にあるのだが。
「何がエロゲーだ!?竜也、てめえ自身の趣味を勝手に俺のもんにすんな!!」
「またまたー、そんな恥ずかしがらずに」
勘違いをされるのは恐いので説明しておくが竜也は高校生活、いや人生をエロゲーに費やしているようなダメ人間。
だから、竜也の頭は高校でやっていることの知識はほとんど入っていない。
替わりに食事のことと人生に必要のない量のいらない知識で埋め尽くされている。
竜也はとことんエロを追究しているダメ人間。そんなやつと同類にはされたくない。
「妹が気付いたら隣で寝てたんだよ」
「美優ちゃんが彰人と添い寝!?」
俺は竜也に寝不足の訳を説明したつもりなのだが、なぜか先ず反応したのは芽衣だった。
「どうした、芽衣?」
突然、立ち上がってこっちを振り返ってきたので聞く。
よく見ると少し顔が赤いような。
風邪でも引いてるのかな?
「え、ううん何でもないわよ」
妙に焦りが感じられたけど…まいっか。
「お前って、本当鈍いよな」
「ん、何だって?」
「いや、なんでもない」
竜也のやつ、何かブツブツと言っていたような気がしたが。
「それよりだ、彰人。実の妹を抱くなんて、やっぱりお前シスコンだな、ボカッ、ウップ」
俺は渾身の右ストレートを竜也のパンチを三発抉りこませる。
「仕様もないこと言ってんな、誰がシスコンだ!?」
昔は毎日鍛えていたので力は衰えていなかった。
竜也は教室の端まで飛んで、壁にクレーターを作っていた。
ガラ…ガラ…ガラ。
人が開けるには遅すぎる速度で教室のドアが開かれる。
入ってきたのは黒猫。
「子猫ども、うるさすぎだぞ」
喋りだす猫。
猫が生徒に注意するなかなかシュールな光景だろう。
「六兵衛、先生はどうしたの?」
声を掛けたのは神崎さん。
性格は良い、ただその一言……女の子に対しては。
男子にはキツい。
まあそれはさておき、何よりすごいのは誰もそれに対して不思議な、驚く反応をしないことだろう。
有り得ないことも月日が経てば何も思わなくなる、というがまさにこれがその事例だ。
それから、六兵衛というのはこの黒猫の名前だ。
飼い主である望先生が名づけたそうだが……何かものすごく古臭い名前にしか聞こえない。
六兵衛はそのまま高さ1mの教卓の上に飛び乗る。
「望は学校まで車を運転してきたは良いが、そこで力尽きた。よって、我輩がHRをやる。子猫ども、席につけ」
六兵衛は飛行機脱出の際の姿勢をとる。
そう言われて、みんなは何事もなかったかのように自分の席に戻る。
そんな中、一人だけ席に戻っていないが教室内にいる生徒を六兵衛の黄金色の目が鋭い目線で見る。
「また竜也か、どうせまた余計なことをやらかしたんだな」
猫にまで諦められている可哀想なやつだ。
「早く席につけ、竜也」
「・・・・・・」
応答なし。
ちょっとやりすぎたかなと、反省する俺。
六兵衛は小さな段差の階段を降りるかのようにすっと前足を出したかと思うと音も無く着地する。
そのまま、にゃんにゃん言いながら竜也の元へ。
竜也は一向に白目を引ん剥いたままだ。
再び思う。
ちょっとやりすぎたかな.
六兵衛はそのまま竜也の胸に乗る。
そして。
パチン、パチン……。
という音はさすがにしないが、六兵衛は前足を器用に使って竜也の頬をたたいている。
俗に言う、「ネコパンチ」だ。
で、諸君はそのシーンをもっと詳細に知りたいだろう。
なので、説明しよう。
~六兵衛物語①~
六兵衛は竜也の首のすぐ下に座っている。
竜也は首より下は床に、頭は壁に。
つまり、首で壁に凭れ掛かっている。
なので六兵衛は首元に乗って前足を突き出す。
そして手を振り回す。
すると、「ネコパンチ」になるというわけだ。
~おわり~
「……痛ってぇーーーーー!!」
六兵衛に何十発もののネコパンチを浴びせられてようやく目覚める。
その顔はネコパンチの弊害で引っ掻き傷だらけになっていた。
「このクソ猫!!」
そう言って、竜也は六兵衛に蹴りをお見舞いする。
ま、当然瞬発力の高い六兵衛は避ける。
横に、ではなく上に。
次の瞬間、奇妙な光景が目に映る。
竜也は中途半端、およそ30°くらい蹴り上げた状態で固まる。
そして、そのまま倒れこんでしまった。
「我輩に傷を負わせようとするなど百億年早いわ」
そう言って六兵衛は教卓に戻る。
なぜか倒れこんでしまった竜也は意識がないながらも不思議なことに両手を股に持って来ていた。
一方で六兵衛は上に避ける、本来逃げられる方向ではないにも関わらず何事もなく飄々としている。
それが意味するところは……?
「ということでHRを始める」
見ているのは紙ならず葉っぱだった。
そこに文字が書かれているのか、それ以前に読めているのかは未だ謎である。
「昨日連絡していた通り、毎年恒例の身体測定が四、五限に入っている」
「あっ!!」
という声が聞こえたが、六兵衛は無視する。
「よって、昼喰ったらちゃっちゃと着替えておくんだぞ。ま、連絡事項は以上だ」
セリフだけ聞くと一人前の先生だが、あくまで猫である。
六兵衛はスタッと教卓から降りると、ニャンニャン言いながらドアの向こうへと消えた。
1限目は化学だ。
ガラ…ガラ…ガラ。
「桜川」
六兵衛だった。
桜川は俺の苗字。
「お前は生徒会だから生徒会室へ行け。測定の手伝いと片付けだ」
そう言って、六兵衛は今度こそ出て行った。
その六兵衛の一言が俺に更なる嫉妬を抱かせるようになったそうだ。
もっとも、竜也を含む一部の馬鹿どもは俺が女子の測定を出来ると思って妬んでいるのだが。
今の御時勢、そんなことがあるわけない……はずだった……のだが。
俺の今の心情は……面倒くせー!!
六兵衛は何だろう……?
いかがでしたでしょうか。
六兵衛、面白いと思っていただけましたでしょうか。
ちょっと心配です。
また、アドバイスなどございましたらどんなことでも良いので教えてください。
次話は 第十話 ★ 早速の仕事 ★ 後編 です。
GW中に更新できると思いますので、よろしくお願いします。