表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の君臨Ⅱ タイムトラベル? 時間を超えた想い  作者: 竹宮 潤


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

火種

― 常識では説明のつかないこと、例えば宗教の言う奇跡のようなことを体験した人は、一種の選民思想を持つのですよ、アーセネイユ。

 ウロンドロスが言う。

― 信じる者は救われるってやつですか?

― まあそういう類ですね。そして同じ体験をした人々の中には強い連帯感や強固な信仰心が生まれる。そういう連帯感は信用にすり替わって、商業や人的交流につながっていくのですよ。そしてその時に必要なもう一つの要素が…

― 疑う人もいる、ということなのさ。

サグが言った。

― 同じ場にいる全員が同じ不思議な体験を共有した場合、自分が騙されていると考える人より自分は特別だから体験できたのだと考える人の方が多いんだよ。そこにいなかった誰かが、「それはトリックだろう」と言えば言うほど、「そうではない、自分は奇跡を目撃したんだ」と強固に思い込むようになる。そういう人たちが熱心な伝道師となっていく。

― 宗教の目的は単に自分の利益とは限らないということですか。

― 逆に、自分の利益だけでほいほい宗教を乗り換える人の方が少ないんじゃないかしら、アーセネイユ。人は自分より高いランクにあると思うものに魅かれるのよ。

 よくわからない、という顔をしている。リゼア人にとっては万民の頂点は王であり、その実力は測れるものだとわかっているからだ。自分より強者であるという認識はあっても、次元のちがうはるかな高みとは考えられない。だがマティでも感じたことだが外宇宙の人々にとって、わたしたちは彼らの思う神に近しいものなのだ。それ故に直接わたしと対面したマティの人々の抱く畏れは、絶対的なものだった。わたしに臆することなく話ができたメンデ・カシオナなどは、例外中の例外だ。あれは、彼女が自分の持つ歴史的な立場を理解していたからこその態度だったのである。

― つまり、自分が経験してなくても、直接の利害がなくても、神という素晴らしいものの存在を信じたり、従ったりすることに意味があるわけですね。

― まあ、合格ですね。

 ウロンドロスが笑った。

― 話を戻すと、カシャ系は交易都市ヴァンセルガの実質的な支配権があります。当然そこから得る利益も大きい。故にエルデンシティの代わりの都市づくりはどんどん進んでいったのです。ブデニ火山帯のはるか南側、古い火砕流跡の荒れ地を切り開いて、地下水源を掘り当て、敷地はさほど広くはないがかつてのエルデンシティ並みの人口を維持できる都市の概要ができました。ところが、ここに至ってその雲行きが怪しくなったのは、ヴァンセルガの新市長にエルデン教徒が就いたからです。

― ほほう、エルデン教はついに宇宙へも進出したってか。

サグがわかっていてつっこむ。実際のところ、新市長がエルデン教徒だったのは偶然であって、彼は有能な商業コンサルタントであることを買われたからこそ、市長の椅子を手に入れたらしい。だが、惑星内部の政情は、外宇宙の小さな変化に大きく反応した。

― 当然、新都市移転推進派はいやがりますわね。それが市長への脅迫の発端ですの。

エルクリーズが言う。

― まあ、そんなとこ。だけど、今度はそれにヴァンセルガが過剰反応した。交易都市の自治権への不当干渉だと。

イクセザリアはまだ面白がっている。

― 交易都市なんだからカシャ系の奴ばかり住んでるわけじゃないんだ。だから仕方ないっちゃ、その通りなんだが。最初はお互いふざけてるのかと思ってたよ。これはどこまで本気なんだ、冗談のネタなのかってね。ところが、双方にマジな後ろ盾がついちまった。

サグは真面目な顔に戻っている。ここからは過去の話ではない。現実の内戦につながる問題なのだ。

― ヴァンセルガの自警団こと総合警備会社「テュアルズ」とカシャ系防衛軍。

イクセザリアもだんだん真面目になってきた。ついこの前、惑星カシャに調査に降りたのだ。

―!? 何で防衛軍が出てくるんですか。

アーセネイユがあきれたように聞いた。

― テュアルズ側がカシャ系では禁じられてる薬物が入った脅迫状をカシャの国土保安省に送り付けたから。

― いや、あれは別に脅迫状ってつもりじゃなかったらしいぞ。薬物についても封入したというより、付いていた程度だったらしいし。

 サグはヴァンセルガに入ったのだ。

― じゃ、カシャ政府はメディアに大げさに発表した。メディアはヴァンセルガがカシャに対立するだろうと、喧伝した。たぶん、政府はヴァンセルガの市長の首をすげ変えたかっただけなんだろうけど、世論はその程度じゃおさまらなくなってしまった。で、結果ヴァンセルガの市長にカシャから脅迫状が殺到する騒ぎになった。

― ヴァンセルガじゃ、テュアルズがいきり立って市長を警護してるよ。恒例の行事や会議に市長が出席するだけでも、他の出席者全員のボディチェックはもちろん、あきれるほど人数の護衛がつくらしい。もちろんカシャからの荷物は安全確認のためと称して大小にかかわらず全部開示されている。もともと常時募集がかけられていたテュアルズの社員には、ヴァンセルガ内だけじゃなく、他の交易都市からも傭兵みたいなのが応募してきている。騒然としてるよ。交易都市が戦争をするなんて前代未聞だからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ