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風の君臨Ⅱ タイムトラベル? 時間を超えた想い  作者: 竹宮 潤


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3/9

空間

― それで、あれはどういう空間だったのか、わかったの。

 わたしの問いかけにカルティバはのっけから詰まる。キナン水晶宮の表の間。惑星マティの後始末連絡会ともいうべき会合の席だ。今日のわたしは薄黄色のキトンに赤土色に黄朽葉の絣模様の上着。普段はあまり着ない色だが水晶宮のトパーズ色の内装に合わせてみた。

― 結論から申し上げれば、よくわかりません。

― なんで? わたし、3日間も猶予作ってあげたじゃない。あなた、その前から調査していたのでしょう。

― 厳密には1日と4分の3くらいです、王。丸一日以上期限があるうちに反乱軍は降伏しましたので。

 ウロンドロスは何気に先輩の肩を持つ。

― 降伏と同時に消えちゃったの?

― 正確には、ミトラ王が追跡先から命からがらご帰還された、あの直後からです。ですから我々としては予備的な調査を終えて、これからというときに、ですね…。

― じゃ仕方ないわね。

 わたしがあっさり引き下がったので、意気込んで愚痴ろうとしていたカルティバは黙り込まざるを得なかった。どっちにしろ、もう一度あの空間に入ろうとするなら、ソル系まで行って探し回らなければならないだろう。マティ反乱軍にしてみれば武器資材の供給が止められれば、戦争のやりようがない。だいたい文明の再建から日の浅い(これはリゼア連合的な歴史認識だからであって、実際には何十世代か経っているのだが)マティは、もともと一つの政府しかなく、武器産業などないに等しいのだ。その上、マティ政府自体からも自分たちとは無関係だと突き放されたマティ反乱軍だ。外からの補給路が途絶えれば降伏するより道がない。

 始まるまでは頭を抱えたマティ内乱騒動だったが、真の敵が同じリゼア人であることがわかったのは大きな収穫だった。そしてソル系に由来するあの変な空間を使えば、時間を超えた移動の可能性があることも。

― ところでアルシノエ。あの落ちない空間の仕組みを教えてもらえませんか。

― そうでした。ミトラ王、あれは重力的なものですか、それとも何かの映像ですか。

 ライラーザ(あのひと)とカルティバが訊く。

― あれは時間を切り取って、中の流れを止めたものです。わたしの即位の時に見せたものを拡大しただけで、仕組みはかわりません。

― いわゆる「透明な壁」理論という思考実験の?

― 思考上ではなく、実際やって見せましたけどね。質的には亜空間都市の外壁と同じものです。

 水深の浅い、流れの遅い川を想像してみてほしい。そこに透明な物質でできた枠のようなものを真上から川底に打ち込んだとする。その打ち込むのにかかった時間は限りなく短く、水は枠から漏れ出すことがないとする。そうすればある程度の時間、川の中に水の流れない場所が存在することになる。これを水ではなく時間の流れに置き換えたものが、「透明な壁」理論だ。

 川の中の透明な枠の中に入ってしまった生き物は、即死したりしない。生きていくのに必要な環境はそのまま残っているからだ。ただ流れに乗ってやってきた餌は、食べつくせば無くなってしまうし、外にいる生き物との交流はできないから、長期的には枠の中の生き物は死に絶えるのだろう。

 時間の中の透明な壁に閉じ込められた人も、即死したりはしない。事実わたしも、わたしの閉じ込めた人々も死ななかった。だが時間が流れなければ中の人間は(まあ、どんなものでも、だが)動けないのだ。壁を取り去って再び時間の流れに身を任せない限り、死んでいるのと大差ない。

― いや、亜空間都市の壁って、材質はいいですよ。どこで、どんな風に展開すると時間の止まった空間ができるんです?

― そりゃあ、時の流れの中よ。

― はぁ?

― んー、予知能力者トエラルカでない人に説明するのは、難しいわね。要はね、トエラレカたちが予知のためにさかのぼる時の大河があるのよ。その中なの。

― ということはですね、ミトラ王はそのトエラルカだけが知っている大河に入ることができる、ということですか?

― 王、カルティバは高位市民ミドリですから。予知能力だけが欠損していて王族アオになれなかったのです。

 エルクリーズが耳打ちしてくれる。彼女は三惑星の王宮内の人事・噂・流行など、あらゆる内部事情に通じている。なるほど、彼に時間や予知に対する体感がないわけだ。逆にあの人とコーグレス王は納得の表情だ。ただ彼らにしても理解はできてもわたしと同じことをするのは難しいだろう。時の大河の近くで、あるいは中で、力を使うことは高い予知能力に比例する。

― まあ、そういうことね。

学者としての好奇心に目を輝かせている彼のことだ。今度はそこへ連れて行けと言いかねないだろう。

― カルティバ、先に言っておくけど、これはミトラ王が特別に予知能力が高いからできることなのであって、わたしに同じことはできないからね。

 あの人が先に予防線を張る。

― またまたぁ、なんで人がお願いする前に断りますかね、王。

 表向きぼやきながら、カルティバはわたしのほうを見る。わたしは気づかないふりという拒絶をする。無理ですよ、というウロンドロスの視線にもぶつかって、カルティバ君は撃沈する。

― では、次はフ星区カシャ系の覇権争いと、交易都市ヴァンセルガについての現状を。

 あの人の一言で今後の本題が始まった。


リゼア系の能力階級はエネルギー媒体であるリングの色で表す。王族はアオ、高位市民はミドリ、上市民はキイロ、一般市民はアカである。能力値は色が変わるごとに指数関数的に上がる。

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