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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました  作者: テラトンパンチ


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転校生登場!名はセシリア

――学園・朝。


学年代表戦が終わって、数日。

学園はすっかり、いつもの空気に戻っていた。


「……」


ユウトは、自分でも理由が分からないまま、

ぼんやりと窓の外を眺めていた。


(……セシリア)


名前を思い出すだけで、

胸の奥が、少しだけざわつく。


好きすぎて攻撃できない、なんて理由。

しかも相手は、試合相手で、代表で、

よく分からない存在で――


(もう会わないはず、なんだけどな)


頭では分かっている。

大会は終わった。

関わる理由は、もうない。


それなのに。


「ユウトー?」


リアの声が飛んできた。


「さっきから上の空だよ?」


「……そう?」


「そうそう。

優勝の実感、まだ来てない感じ?」


セリナがちらりとこちらを見る。


「それとも、

別のことで悩んでる?」


「いや、別に――」


そう言いかけて、

言葉が止まった。


(……なんで、

 こんなに引っかかってるんだ)



チャイムが鳴る。


ホームルームの開始だ。


担任が教卓に立ち、

いつもより少しだけ、間を取ってから言った。


「さて、みんな」


「今日から――

新しい転校生が来ています」


教室が、ざわっとする。


「転校生?」


「この時期に?」


「しかも今さら?」


ユウトの胸が、

嫌な予感で、きゅっと締まった。


(……まさか)


「じゃあ、入ってきて」


担任が、教室の扉の方を見た。


――ガラッ。


扉が開く。


そこに立っていたのは。


「……」


長い髪。

控えめな立ち姿。

少し緊張したように伏せられた視線。


見覚えのありすぎる、少女。


「……は?」


ユウトの思考が、完全に止まる。


少女は、小さく息を吸ってから、

教室全体を見回し――


そして、

ユウトと目が合った瞬間。


わずかに、微笑んだ。


「……はじめまして」


「東方秘術院から転校してきました」


「セシリアです」


教室が、一気にざわめいた。


だが、ユウトの耳には、

その音はほとんど届いていなかった。


(……なんで、

 ここにいるんだよ)


セシリアは、

まっすぐユウトを見たまま、続ける。


「……好きですユウト様!」


小さく。

でも、はっきりと。


ユウトは、

ただただ唖然と立ち尽くしていた。


日常は、戻ってきた――

はずだった。


だがその日常は、

確実に、形を変え始めていた。


担任は、出席簿に視線を落としながら言った。


「えーと……セシリアの席だが」


教室中が、そっと息を潜める。


転校生イベント。

それだけで、注目度は高い。


「……空いてる席は――」


一瞬の間。


ユウトは、嫌な予感しかしなかった。


「――ユウトの隣だな」


「……え?」


声が漏れたのは、ユウトだけじゃなかった。


「え、隣!?」


「よりによって?」


「偶然すぎない?」


リアが、ゆっくり振り向く。


「……ユウト」


「今の、

どういう偶然?」


「俺が聞きたい」


セリナは腕を組んだまま、

視線だけで圧をかけてくる。


「説明してもらおうかしら」


「できるならしたい」



セシリアは、小さく頷くと、

静かに歩き出した。


コツ、コツ、と靴音が近づく。


ユウトの隣で、止まる。


「……よろしく、お願いします」


控えめな声。

だが、距離が近い。


(近い……!)


ユウトは、

無意識に背筋を伸ばしていた。


「よ、よろしく」


それだけ言うのが、精一杯だった。


セシリアは席に座ると、

鞄を丁寧に置き、

それから――ほんの少しだけ、ユウトの方を見る。


「……隣」


「うん」


「嬉しい、です」


「え?」


聞き返す前に、

彼女は視線を前に戻していた。



ホームルームが進む。


担任が連絡事項を読み上げる間、

教室は一見、静かだった。


だが。


(……見られてる)


ユウトは、確信していた。


直接じゃない。

でも、確実に。


横から、

“意識されている気配”がある。


ノートを取るふりをしながら、

ちらりと横を見ると――


目が合った。


「……っ」


セシリアは、

驚いたように一瞬だけ瞬きをしてから、

小さく、微笑んだ。


(なんで、

そんな顔するんだよ……)


心拍が、無駄に跳ねる。



後ろの席から、

リアの囁き声が飛んでくる。


「ねぇ、セリナ」


「何?」


「これ、

偶然だと思う?」


「……いいえ」


ミアも、珍しくじっと見ていた。


「……狙ってる……」


「だよね」



チャイムが鳴る。


ホームルーム終了。


一気に、空気が動き出す。


「転校生さー」


「東方から来たんだって?」


「代表だったって本当?」


質問が飛び交い始める中、

セシリアは、少し困ったように俯いた。


その様子を見て、

ユウトは思わず口を出していた。


「……あんまり、一気に聞くなよ」


教室が、ピタッと静まる。


「……ユウト?」


「庇った?」


セシリアは、

一瞬驚いた顔をしてから――


小さく、

でもはっきりと、頷いた。


「……ありがとう」


その声は、

ユウトの耳にだけ届いた気がした。



リアが、

ユウトの肩をぽん、と叩く。


「……覚悟、しとこ?」


「何の?」


「日常が、

もう日常じゃなくなる覚悟」


ユウトは、

隣で静かに座るセシリアを見た。


(……やっぱり)


(簡単には、

 終わらないよな)


偶然の隣席。


それはもう、

新しい日常の始まりだった。


昼休み。

教室の喧騒から少し離れて、ユウト様は中庭のベンチに座っていた。


「……はぁ」


無意識に、ため息が漏れる。


隣には、セシリアがいた。

いつの間にか、いる。

それがもう当たり前みたいになっているのが、少し怖い。


「……ユウト様」


小さな声。


「なに?」


セシリアは、少しだけ視線を伏せてから、ぽつりと聞いた。


「……本当に、

覚えていないのですか」


「?」


「私のこと」


その言葉に、ユウト様は首を傾げる。


「前にも言ったけど……

大会前に会ったのが、初めてだと思うけど」


その瞬間。


セシリアの表情が、

ほんの一瞬だけ――寂しそうに揺れた。


「……やっぱり」


「忘れて、いましたか」


「え?」


セシリアは、膝の上で手を握りしめる。


「同じ村でした」


「小さい頃……

雪が降ると、道が閉ざされるような、

あの辺境の村」


ユウト様の脳裏に、

かすかな風景がよぎる。


古い家。

冷たい風。

そして――


「……川、で」


セシリアが、そっと続けた。


「氷が割れて、

私が落ちそうになった時」


ユウト様の呼吸が、止まる。


「――手を掴んでくれた」


「……ユウト様が」


記憶の奥で、

何かが、かちりと音を立てた。


「……あ」


「思い出しましたか」


セシリアは、少しだけ、期待するような目で見上げる。


「……男の子がいて」


ユウト様が、ゆっくりと言葉を探す。


「いつも、俺の後ろをついてきて……」


「名前、なんだっけって……」


セシリアは、静かに、答えた。


「……デイビッド」


その名前を聞いた瞬間。


「――っ!」


ユウト様の中で、

一気に記憶が繋がった。


「デイビッド……!?」


「いっつも無茶して、

すぐ転ぶやつで……」


「剣の真似事ばっかりして……」


セシリアは、小さく頷いた。


「はい」


「それが……

私です」


一瞬の沈黙。


ユウト様は、

セシリアをまじまじと見つめた。


「……え?」


「男、だよな?」


「はい」


「いや今も?」


「今もです」


即答。


「……いや待って」


頭を抱える。


「情報量が多い」


セシリアは、少し困ったように、

でもどこか安心したように微笑んだ。


「でも、

忘れられていても……いいんです」


「ユウト様は、

村を出て、前に進んだ」


「私は……

ずっと、覚えていましたから」


「……」


ユウト様は、

胸の奥が、妙に熱くなるのを感じていた。


「……ごめん」


「気づけなくて」


セシリアは、首を横に振る。


「いいえ」


「また、

会えましたから」


そして、小さく付け加える。


「……隣の席で」


ユウト様は、

苦笑しながら空を見上げた。


「……そりゃ、

攻撃できなくなるわけだ」


セシリアは、

その言葉を聞いて、少しだけ頬を赤らめた。


過去は、静かに繋がった。


そして――

日常は、もう完全に元には戻れなくなっていた。

次回予告


新キャラ登場!

幼馴染判明!

性別情報も追加!


……結果。


「えっと……

この物語、

今どんなキャラいたっけ?」


「作者も把握しきれてません」


「安心してください、

読者もです」


どんどん賑やかになる学園生活。

日常はもう、静かになる気配ゼロ。


そして――

季節は、あのイベントへ。


次回、

バレンタインデー編。


チョコは誰から?

本命とは?

そもそも渡せるの?


お楽しみに。


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