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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました  作者: テラトンパンチ


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学年代表戦2

闘技場。

西部戦技学園代表は、額に手を当てていた。


「……くっ」


「どうした?」


審判が声をかける。


「集中力が……」


観客席がざわつく。


「まさか……」


「本当に来たぞ……」


西部代表は、歯を食いしばる。


「プロテインを……切らした」


「……はい?」



「ちょっと待って」


ユウトが思わず言った。


「本気?」


「本気だ」


西部代表は真顔だ。


「我々は、時間管理と栄養管理で動いている」


「戦闘も?」


「戦闘もだ」


説得力だけは異様にある。



審判が頭を抱える。


「……規定上、

食事による休憩は認められていません」


「承知している」


西部代表は、拳を握る。


「だが、続行すれば――」


一歩、踏み出す。


「精度が落ちる」


その瞬間。


踏み込みが、わずかに鈍った。


ユウトは見逃さない。


(……今だ)



ユウトは距離を詰める。


「来るか!」


西部代表も応じるが、

先ほどまでのキレはない。


拳が、逸れる。


「っ……!」


ユウトの一撃が、

初めて確実に通った。


「入った!」


リアが叫ぶ。



西部代表は、息を荒くする。


「……やはり」


「?」


「栄養不足は、罪だ」


「どんな理論!?」


だが、動きはさらに乱れていく。


「集中……できない……」


「筋肉が……訴えてくる……」



審判が決断する。


「……戦闘続行不可能と判断」


「西部戦技学園代表、

棄権!」


会場がどよめく。


「また棄権!?」


「今日、何なんだこの大会!」



結果が告げられる。


「勝者――

本学園代表!」


ユウトは、息を整えながら呆然としていた。


「……二連続、棄権勝ち?」


セリナが苦笑する。


「逆に難しいわよ、これ」


リアは肩をすくめた。


「勝ってるのに、

実感ゼロだね」



西部代表は、担架で運ばれながら親指を立てた。


「……次は……

ちゃんと……プロテインを……」


「次、ないから!」


誰かのツッコミが、会場に響いた。



トーナメント表が更新される。


本学園、決勝進出。


だが、ユウトの胸はざわついていた。


(……残ってるのは)


東方秘術院。

南方連合学園。


どちらも、

“まともに戦う気があるか怪しい”相手。


学年代表戦は、

まだ油断を許さない。


――学年代表戦・準決勝


東方秘術院 vs 南方連合学園。


本学園側は、観客席の一角に集まっていた。


「……暇だね」


リアがぽつり。


「二回戦、体感五分だったからね」


セリナが腕を組む。


「本来は、

ここでちょうど準決勝が始まる時間のはずなのに」


ミアは、闘技場中央をじっと見つめていた。


「……でも」


「うん」


ユウトも感じていた。


「空気、重い」



闘技場に、二人の代表が現れる。


東方秘術院の代表。

年齢も性別も曖昧な雰囲気。

歩いているだけなのに、輪郭が微妙に揺れて見える。


対する南方連合学園の代表は、

逆に“普通”だった。


背丈も、装備も、立ち姿も。

どこにでもいそうな青年。


「……普通すぎない?」


リアが小声で言う。


「それが一番怖い」


セリナが即答する。



開始の合図。


――だが、何も起きない。


二人とも、動かない。


「……」


「……」


五秒。

十秒。


「始まってる?」


「始まってるはず」


審判も、動かない。



先に動いたのは、南方だった。


一歩、前へ。


だが次の瞬間、

姿がぶれる。


「……え?」


観客席がざわめく。


南方代表は、

“さっきまで立っていた位置”から、

数歩横に移動していた。


「瞬間移動?」


「いや……違う」


ミアが首を振る。


「……ずっと、そこにいた」


「は?」



東方代表が、ようやく口を開く。


「……見えないだけ、ですよ」


声が、遅れて届く。


南方代表は、もうそこにいない。


「――来る」


ユウトが呟いた瞬間。


衝撃。


闘技場の地面が、わずかに沈んだ。


「っ!」


東方代表の結界が、

“先に”発動していた。


「予測……?」


「いや、わからない……」



南方代表は、距離を取る。


息も乱れていない。


「……面倒だな」


その言葉と同時に、

空気が、軋んだ。


「え……?」


観客席の一部が、ざわつく。


「今、

何かした?」


「何も……見えなかった」



東方代表が、静かに手を下ろす。


「……では」


「少し、

“狙います”」


瞬間。


南方代表の影が、

本人より先に動いた。


「――っ!」


南方代表が後退する。


だが、遅い。


影が、絡みつく。


「これは……」


リアが声を失う。


「影を使った拘束……?」


「そう、だが狙いが違う」


 ユウトが震えながら小さく言う。


「大事なモノを縛ってやがる‥」


「?」


 ミアはよく分かっていないみたいだ。



数秒の沈黙。


そして――


「……参った」


南方代表が、あっさりと告げた。


会場が、凍りつく。


「え、今の何!?」


「何も起きてないのに!?」


審判が確認する。


「棄権、でよろしいですか?」


「うん」


南方代表は、どこか疲れた笑顔で頷いた。


「これ以上やると、(男に)戻れなくなる」



勝者。


東方秘術院。


東方代表は、何事もなかったように礼をし、

そのまま去っていった。


観客席。


リアが、震えた声で言う。


「……ねぇ」


「私たち、

ちゃんと戦ってきたよね?」


セリナは、静かに答える。


「ええ」


「そして、

決勝は――」


全員の視線が、トーナメント表へ向かう。


ルミナス学園vs 東方秘術院


ユウトは、無意識に拳を握った。


(……今までの“おかしい”とは、

 質が違う)


前の試合が早く終わった理由が、

ようやく分かった気がした。


――待たされるのは、

 こういう相手と戦うためだった。


次回予告


準決勝は、

あまりにも早く、

そして――何も起こらないまま終わった。


勝ち上がったのは、

東方秘術院。


攻撃は見えず、

防御も見えず、

勝敗だけが残る戦い。


「……どうやって勝てばいい?」


答えは、まだ誰も知らない。


そして決勝前夜。


ユウトの前に、

東方の代表が現れる。


「明日、

“変えてあげる。”」


その言葉の意味は――

ユウトにはわかるがヒロイン達には分からない。


次回、

学年代表戦・決勝。


見えるものだけを信じる者は、

置いていかれる。


どうやら、バットとヘルメットだけじゃ足りない、プロテクター必須だ。

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