閑話休題 豆まきで「鬼は外」をする前に少々お待ちください、
学園の一角。
なぜか節分仕様の飾り付けがされている教室。
「……なんで学園で節分やってるの?」
ユウトが素朴な疑問を口にすると、
リアが即答する。
「イベントだから」
「理由になってないよね?」
机の上には、
やたら立派な恵方巻きが人数分並んでいる。
セリナが腕を組んだ。
「黙って今年の恵方を向いて、
無言で一本食べきる――だったわね」
「戦闘訓練よりキツくない?」
ミアは、恵方巻きを両手で持ちながら小さく言う。
「……喋っちゃ、だめ……」
⸻
「では!
恵方巻きタイム、スタート!」
リアの謎の号令で、一斉にかぶりつく。
もぐ。
もぐもぐ。
もぐ……。
沈黙。
(長い)
(思ったより長い)
ユウトの脳裏に嫌な予感がよぎる。
(……これ、
途中で誰か妨害してくるやつじゃ?)
⸻
その瞬間。
ガラッ!
教室の扉が乱暴に開いた。
「鬼はー外ー!」
鬼のお面をかぶった二人組が飛び込んでくる。
「うわ、出た!」
「来た来た!」
鬼役は――
ルナとフィオナだった。
「覚悟しなさい!」
「豆をぶつけられる運命よ!」
やたらノリノリでポーズを決める二人。
だが。
誰も反応しない。
全員、
無言で恵方巻きを食べ続けている。
「……え?」
ルナが固まる。
「ちょ、ちょっと待って」
フィオナも戸惑う。
「普通ここ、悲鳴とか上がるところじゃない?」
もぐ。
もぐもぐ。
リア、目だけで「今は話しかけないで」の圧。
セリナ、完全無視。
ミア、真剣。
ユウト、必死。
⸻
「……」
「……」
鬼二人、取り残される。
「……ねぇ」
ルナが小声で言う。
「もしかして、
出るタイミング間違えた?」
「うん……」
フィオナも頷く。
「完全に“今じゃない感”ある」
しばらく待つ。
だが、誰も構ってくれない。
⸻
数分後。
最後の一口が食べ終わる。
「……ふぅ」
ユウトが息を吐いた瞬間。
「はい!
じゃあ改めて!」
リアが手を叩く。
「鬼はー?」
「外ー!」
一斉に豆が飛ぶ。
「うわっ!」
「ちょ、今!?」
完全に後出し。
ルナとフィオナは豆まみれになり、
そのまま教室の外へ追い出される。
「ちょっとぉ!」
「私たち、
今日のために準備したのに!」
扉が閉まる。
⸻
静寂。
ユウトがぽつり。
「……あの二人、
最近出番なかったよね」
リアがうなずく。
「久々に出てきたと思ったら、
即退場」
セリナが冷静に言う。
「鬼は、そういう運命よ」
ミアは、少しだけ申し訳なさそうに。
「……でも、
元気そうでよかった……」
教室の外から、
まだ何か文句を言っている声が聞こえたが――
やがて遠ざかっていった。
⸻
こうして今年も、
学園の節分は平和に(?)終わった。
鬼は退治され、
恵方巻きは胃袋へ。
そして――
ルナとフィオナは、
またしばらく出てこなくなった。
(たぶん)




