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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました[★毎日更新★]  作者: 三科異邦


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くっころとは

学年代表に選ばれた翌日。


放課後の訓練場は、いつもより妙に静かだった。

理由は単純――

指導役の先生が来ると聞いて、周囲が勝手に緊張しているからだ。


「で、どんな先生なんだろうな」


ユウトが軽く伸びをしながら言うと、

ヒロインの一人が首を傾げる。


「さあ……実力は本物って話だけど」


その瞬間。


コツ、コツ、と靴音が響いた。


振り返ると、そこに立っていたのは――

黒を基調にした教官服、無駄のない装備。

鋭い眼差しと、常に険しい表情。


いかにも歴戦、いかにも厳格。


「……あなたたちが、学年代表ね」


低く、凛とした声。


「私は特別講師の――」

「まあ、名前はどうでもいいわ」


皆一瞬で察する。


(強い)

(怖そう)

(当たり外れで言うと、当たりだけど重い)


先生は腕を組み、ユウトを見る。


……じっと。


長い。


明らかに、ユウトだけを見ている。


「……何か?」


ユウトが聞き返すと、

先生は一瞬だけ言葉に詰まり、咳払いをした。


「い、いえ」

「別に、なんでもないわ」


その直後。


――ぐっ。


先生の拳が、きゅっと握られる。


「……くっ」

「こんな……!」


ヒロイン達、即座に察する。


(あ、これ――)

(くっころ系だ)


「聞いてるわ」

先生は視線を逸らしたまま言う。


「あなた……」

「制御は甘いけど、感覚とセンスで魔法を成立させるタイプでしょう」


「まあ、そんな感じです」


「……最悪ね」


ズバッと言い切られた。


ヒロイン達がざわつく。


「先生、それひどくないですか」

「そうそう!」


だが先生は顔を赤くしたまま、語気を強める。


「違う!」

「最悪なのは――」


一拍置いて。


「……私の、好みど真ん中だってことよ!」


沈黙。


風が吹く。


「……え?」


ユウトが間の抜けた声を出す。


先生は顔を真っ赤にし、歯を食いしばる。


「くっ……!」

「才能があって、不器用で、無自覚で……!」


「こんなの……」

「指導する側として、耐えられるわけがないでしょう!!」


ヒロイン達、完全に理解した。


(この先生)

(詰んでる)


先生は背を向け、深呼吸を一つ。


「……こほん」

「いいでしょう。情は捨てるわ」


振り返ったその目は、闘志に満ちていた。


「あなた達を」

「――学年代表として、徹底的に鍛え上げる」


ちらっとユウトを見る。


「……特に、あなたを」


ユウトは苦笑する。


「よろしくお願いします……?」


先生は小さく、悔しそうに呟いた。


「……くっ」

「ころ……」


こうして始まった訓練


訓練開始から、すでにおかしかった。


「次、模擬戦」

「相手は私よ」


そう言って前に出てきた先生は、

明らかに――気合が入りすぎている。


魔力の圧が違う。

本気すぎる。


「え、先生? これって基礎調整じゃ……」


ヒロインの声を遮るように、先生が言い放つ。


「黙りなさい」

「これは“教育”よ」


(いやそれ処刑の前口上では?)


ユウトが内心でそう思った瞬間。


「――来なさい、ユウト!」


魔法陣が展開される。

数も、密度も、完全に実戦仕様。


「ちょっ、先生それ――」


避ける暇もなく、ユウトは反射的に魔法を放つ。

制御は雑、出力は勘。


ドンッ、と衝突。


爆風が収まり、立っていたのは――


「……っ!」


服の一部が焦げ、息を乱した先生。


そして。


「くっ……!」

「この……この程度で……!」


顔が、真っ赤。


ヒロイン達が一斉に察する。


(あ、ダメだこれ)

(完全にスイッチ入った)


「先生、落ち着いてください!」

「教育目的ですよね!?」


「うるさい!!」


叫びと同時に、魔力がさらに跳ね上がる。


「制御が甘いくせに!」

「力だけは一人前で!」

「無自覚で! 無防備で!」


「――それがどれだけ危険か!!」


(言ってる内容がもう個人感情)


ユウトが後ずさる。


「先生……?」

「ちょっと近くないですか?」


「近い!?」

「当然でしょう!」


「私はあなたを――」

「叩き直す役目なんだから!!」


完全にくっころ暴走モード。


攻撃は苛烈。

なのに、致命打は絶対に避けてくる。


「そこ、甘い!」

「今の判断、嫌いじゃないけど嫌い!!」


(好きなのか嫌いなのかどっちなんだ)


ヒロイン達、端で観戦しながら小声。


「これ訓練?」

「デートじゃない?」

「いや尋問」


ついにユウトが足を取られ、転ぶ。


「――っ!」


その瞬間。


先生がハッと我に返る。


「……あ」


沈黙。


倒れたユウト。

覆いかぶさる形になった先生。


距離、ゼロ。


「…………」


「…………」


「…………くっ」


先生の耳まで真っ赤になる。


「こ、これは違うの!」

「私は指導者として!」


「ユウト、今の状況どう見える?」


「えっと……」

「完全に押し倒されてます」


「――っ!!」


先生、限界。


「やめなさい!」

「これ以上無自覚に存在しないで!!」


立ち上がり、背を向ける。


肩が震えている。


「……今日は、ここまで」

「これ以上やったら……」


振り返らず、小さく呟く。


「……私が壊れる」


ヒロイン達、即座に囲む。


「先生」

「また明日も来てくれますよね?」


「来るわよ!!」

「職務だから!!」


ただし最後に。


「……ユウト」

「次は、覚悟しなさい」


睨むようで、

どこか期待混じりの目。


ユウトは苦笑した。


「ほどほどでお願いします……」


先生は低く呟く。


「……くっ」

「ころ……」


こうして確定した。


この特訓――

一番鍛えられているのは、先生の理性だった。



次回予告!


新しく先生出てきたねー。

ずいぶん濃いなー。

次回、くっころ更なる暴走


‥あれE組は?


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