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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました[★毎日更新★]  作者: 三科異邦


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最終戦 相手は幻のE

-B、1-C、1-D。

すべての試合が終わり、闘技場はざわめきに包まれていた。


「えー……総当たり戦の結果、今年度の――」


教官が一枚のボードを掲げる。


優勝:1-Aクラス


一瞬の静寂。

次の瞬間、歓声。


「よっしゃあああ!!」

「勝った!?本当に!?」


ミアが飛び跳ね、セリナは腕を組んで満足げに頷く。


ユウトはというと、


「……え、俺たち優勝?」

「え、俺、最後まで生きてた?」


達成感より困惑が勝っていた。


だが。


「――ただし」


その一言で、空気が凍る。


壇上に立った学園長が、静かに告げる。


「予定外ではあるが……

エキシビジョンマッチを行う」


ざわっ。


「エキシ……?」

「追加試合?」


学園長の背後、

闘技場の壁面がゆっくりと開いた。


そこから現れたのは――

見慣れない制服の生徒たち。


色が違う。

徽章も違う。


「なに、あれ……」


ルナが眉をひそめる。


学園長が言った。


「彼らは――

幻のEクラス」


どよめきが、悲鳴に近いざわめきへ変わる。


「え、Eクラス!?」

「存在しないって噂の……?」


セリナが小声で囁く。


「表に出ない、問題児だけ集められたクラス……」


ミアが喉を鳴らす。


「……それ、エキシビジョンって言っていいやつ?」


Eクラスの生徒たちは、誰一人として笑っていない。

魔力を誇示するでもない。

ただ、立っているだけなのに、圧が違う。


その中の一人が、一歩前に出た。


「優勝、おめでとう」


淡々とした声。


「でも――」


視線が、ユウトに向く。


「本物かどうか、確かめさせてもらう」


ユウトは一瞬固まってから、


「……あ、はい」

「えっと、よろしくお願いします?」


場違いな返事に、ヒロインたちが一斉にツッコむ。


「そこ礼儀正しくなる!?」

「もっと警戒して!」


学園長が告げる。


「勝敗は公式記録には残らない」


「だが――」


「この試合を制したクラスこそ、

“学年代表に最も近い存在”と認めよう」


完全に、ラスボス。


ユウトはバットを握り直す。


「……ねえ」

「これってさ」


ミアが苦笑する。


「優勝したご褒美じゃなくて、

罰ゲームじゃない?」


ルナが静かに言った。


「でも、逃げ場はない」


セリナが前に出る。


「やるしかないでしょ。

1-Aの“やり方”で」


フィオナが微笑む。


「大丈夫。

私たちは、もう一度勝てる」


ユウトは深く息を吸い、


「……じゃあ」

「ドタバタ、延長戦で」


闘技場に、再び開始の合図が響く。


優勝後のエキシビジョンマッチ。

相手は、幻のEクラス。


――本当の試練は、ここからだった。


開始の合図が鳴った。


「よっしゃ行くぞー!」


ユウトが一歩踏み出した、その瞬間。


「……あれ?」


目の前にいたはずのEクラスが、全員寝転んでいた。


「ちょっと待て!?」

「試合始まってるよね!?」


観客席がざわつく。


「なにあのクラス」

「やる気ゼロ?」


Eクラスの一人が、地面に寝たまま手を挙げる。


「はい質問です」

「今から全力で殴られたら、反撃していいですか?」


「知らんわ!!」

セリナの即ツッコミが飛ぶ。


次の瞬間。


Eクラス全員、ゴロゴロ転がり始めた。


「転がってる!?」

「戦闘じゃなくて避難訓練!?」


「攻撃当たらないんだけど!?」


ユウトがバットを振るが、

相手は偶然を装って全部回避。


「いや今の絶対狙って避けたでしょ!?」

「なんで転がる方向が全部完璧なの!?」


ミアが叫ぶ。


Eクラスの一人が、転がりながらぼそっと言う。


「回避率、今日高めなんで」


「ステータスの話すんな!」


すると今度は、

別のEクラス生徒が急に立ち上がった。


「はいここ、危険地帯です」


「は?」


言われた瞬間、

1-A全員が同時につまずく。


「なんで!?」

「床なにもないよね!?」


Eクラス全員、満足そうにうなずく。


「成功」

「想定通り」


「なにを想定してたの!?」


ユウトが頭を抱える。


「なあ……」

「このクラス、戦ってないよな?」


「うん」

「邪魔してるだけ」


「一番嫌なやつじゃん!」


ここでEクラスのリーダーっぽい男子が、

のんびり手を叩く。


「はいはい」

「そろそろ“真面目に”行きますよー」


「今までのはなんだったんだよ!」


するとEクラス、

今度は全員で同じ方向を見る。


「……なんか嫌な予感」


次の瞬間。


ユウトだけ、やたら狙われる。


「なんで俺ばっか!?」

「主人公だから?」


「メタ発言やめろ!」


セリナが叫ぶ。


「ユウト!抑えすぎ!」

「その雑な魔力の方が相手崩せる!」


ユウトは一瞬考えて――


「あ、そっか」


制御を諦めた魔法を放つ。


ドドン。


爆風で、

魔法の弾道が逸れる。


「……あ」


「ズレた」

「想定外」


Eクラス、初めて動揺。


ミアがニヤッと笑う。


「Eクラス変すぎ!」

「でも1-Aもおかしい!」


学園長、腕組み。


「……優勝決定戦より面白いな、これ」


試合開始から、すでに二十分。


――決定打は、一度も出ていない。


「……あのさ」


ユウトが息を整えながら言う。


「これ、いつ終わるの?」


Eクラスのリーダーが、同じく疲れた声で返す。


「こちらも困ってまして」

「想定ではもう三回ほど勝っているはずなんですが」


「想定で勝つな!」


セリナが叫ぶ。


一方その頃、

審判席の先生は、紙を見て、空を見て、また紙を見る。


「……うーん」


観客席もざわついていた。


「まだ続いてる?」

「続いてるけど、何も起きてない」

「でも目は離せない」


Eクラスは転がり、

1-Aは追い、

転がられ、

転ばされ、

追いつけず、

たまに派手に外す。


「これ体力勝負じゃない!?」

「精神力削ってくるタイプ!」


ミアが叫ぶ。


「このクラス、いやらしすぎ!」


すると突然、

Eクラスの一人が手を挙げた。


「先生」


「……な、なんだ?」


「この試合、あと何分ですか?」


先生、固まる。


「え……」

「えーっと……」


先生はルールブックをめくる。


「制限時間は……」

「……あれ?」


めくる。

もう一回めくる。


「……制限時間、書いてない」


「は?」


会場が一瞬静まり返る。


「書いてない!?」

「じゃあいつまでやるの!?」


先生、額に汗。


「そ、総当たり戦のエキシビジョンだから……」

「……深く考えてなかった」


「考えて!?」


ユウトとセリナの声がハモる。


Eクラスのリーダーが、ふむ、と頷く。


「では提案です」


嫌な予感が走る。


「このまま続けると、どちらかが倒れるまでになりますが」


「それは嫌!」


「なので――」


リーダーは、にっこり笑った。


「引き分け、ということで」


観客席、ざわっ。


「引き分け!?」

「ありなの!?」


先生は一瞬考えて――

そして、完全に分からない顔になった。


「……引き分け……」

「……引き分け?」


頭を抱える。


「勝敗表どう書けばいいんだ……」


学園長が、後ろからぽつり。


「空欄でいいんじゃないか?」


「よくないです!」


最終的に、先生は深く息を吸って――


「えー……」

「1-Aクラス対Eクラス、エキシビジョンマッチは……」


一拍置いて。


「引き分け!!」


ドン!


鐘が鳴る。


「なんだそれ!」


ユウトは地面に座り込んだ。


「……でもまぁ勝ってないのに、達成感だけある」


セリナが肩をすくめる。


「変な試合だったね」


ミアが笑う。


「でも、嫌いじゃない」


Eクラスの面々は、満足そうにうなずいた。


「良いデータ取れました」

「次はもう少し普通にやります」


「普通を学んでから来て!」


先生はまだ、

勝敗表の前でうなっている。


「……これ、成績どうなるんだ……」


――こうして、

**幻のEクラス戦は、誰の記録にも残らない“伝説の引き分け”**として語り継がれるのだった。



次回予告


試合終了後。


ざわつく校庭に、もう一度Eクラスの方を見ると――


「……あれ?」


そこに、誰もいなかった。


さっきまでいたはずのEクラスの姿が、

控え席にも、通路にも、

名簿の前にさえ――ない。


「ねえ」

「Eクラスって、どこ行ったの?」


ヒロインの一人が首を傾げる。


先生が慌てて名簿を確認する。


「えーっと……」

「……Eクラス……存在、してたよな?」


学園長は腕を組んで、静かに言う。


「……最初から“いたこと”になっていたかどうか」

「それを調べる必要があるな」


風が吹く。


紙が一枚、地面を転がっていく。


そこには、

勝敗欄が空白のままのEクラスの名前。


ユウトが小さく呟く。


「……引き分け、だったよな?」


次回――

「消えたEクラス」


――彼らは本当に、存在していたのか?


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