イニシャルはD
正直、油断していた。
「次、Dクラスかぁ……」
ミアが肩を回しながら言う。
「なんか静かだし、普通に行けそうじゃない?」
Dクラスの面々は、確かに地味だった。
派手な装備も、目立つ魔力もない。
並んで立っている姿は、まさに“モブ”。
――なのに。
「……妙ね」
ルナが小さく呟く。
「なにが?」
ユウトが聞き返す。
「立ち位置」
「全員、無駄がない」
開始前なのに、既に“完成している”配置。
誰も前に出ず、誰も後ろに下がらない。
嫌な予感がした。
「試合開始!」
その瞬間。
――誰も、攻めてこない。
「え?」
「また待ち戦法?」
ミアが一歩踏み出す。
その直後、
何も起きない。
「……?」
「今の、なに?」
セリナが辺りを見回す。
「魔法反応なし」
「でも、確実に“何か”されたわ」
フィオナが息を呑む。
「皆さん……魔力の流れ、重くなってませんか?」
ユウトは気づいた。
(これ……奪われてる?)
(いや、違う……“抑え込まれてる”)
Dクラスの一人が、淡々と告げる。
「攻撃はしていません」
「ただ、事前に準備して環境を整えていただけです」
次の瞬間。
ミアの魔法が――
発動しない。
「え!?」
「ちょ、ちょっと待って!?今の私、普通に殴るしかないんだけど!?」
ルナの魔法も、威力が落ちている。
「……干渉系」
「しかも、広域」
セリナが歯を食いしばる。
「モブのくせに……やるじゃない」
Dクラスは、前に出ない。
ただ、“場”を制御し続ける。
「派手さはいらない」
「勝てばいい」
その言葉が、やけに重かった。
ユウトは一歩前に出る。
(制御、妨害、抑制……)
(でも――)
「俺が一番苦手で」
「一番慣れてるやつだ」
ユウトは魔力を絞り出す。
制御なんて、最初から得意じゃない。
だからこそ――
「壊すしか、選択肢がない」
一撃。
暴走寸前の魔力を、無理やり一点に叩き込む。
ドン……ッ!!
空気が震え、
Dクラスの“場”が一瞬だけ歪んだ。
「今!」
その隙を、ヒロインたちが逃さない。
ミアが突っ込み、
ルナが制御を切り裂き、
セリナが一気に畳みかける。
フィオナが叫ぶ。
「今のうちに!押し切って!」
Dクラスは強かった。
だが、“一瞬の破綻”には弱かった。
数秒後――
「勝者!1-Aクラス!」
静かだったDクラスの生徒が、ぽつりと言う。
「……想定外でした」
「力で押し切られるとは」
ミアが肩で息をしながら笑う。
「いやぁ……」
「地味なのに一番怖かったよ!」
ルナはユウトを見る。
「あなた、無茶したわね」
「でも……助かった」
セリナが小さく呟く。
「モブだと思ってたの、反省しないと」
ユウトは苦笑いした。
「この学園……」
「思ったより、魔境だな」
次に控えているのは――
総当たり戦、最後の相手。
そして、
学年代表の話が、静かに現実味を帯び始めていた。
静まり返る闘技場。
連戦を終えた1-Aクラスに、短い休憩時間が与えられる。
「……次が、最後か」
ユウトが小さく息を吐く。
ミアは笑っているが、額には汗。
「正直、もうヘトヘト!でもさ――」
ルナが視線を上げる。
「相手も、同じ条件よ」
その先に立つのは、
まだ本気を見せていないクラス。
「総当たり戦、最終試合――」
学園長の声が、重く響く。
「この一戦の結果が、学年の評価を左右する」
セリナが一歩前に出る。
「つまり……負けたら終わり、ね」
フィオナは静かに頷く。
「でも、勝てば――」
視線が自然と、ユウトに集まる。
「……俺?」
「いや、やめて、急に期待の目向けないで」
だが次の瞬間。
観客席が、ざわつく。
相手クラスから放たれる、異様な圧。
「え……?」
「なに、あれ……」
――明らかに、今までとは違う。
力、連携、気配。
すべてが一段上。
「……これ」
ミアが苦笑する。
「完全にラスボスじゃん」
ルナが静かに告げる。
「油断すれば、一瞬で終わる」
そして、試合開始の合図が迫る。
総当たり戦、最終戦。
1-Aクラスの評価。
そして――
ユウトの“力の使い方”が、再び問われる。
次回、
「総当たり戦・最終局面」
勝つのは、
チームか。
才能か。
それとも――暴走か。
まって、4クラスしか無いはずだよね!?




