クラス対抗試合2
教室を改装した模擬戦フィールド。
結界が張られ、観客席には他クラスの生徒たちが集まっている。
「第一試合、1-Aクラス対Bクラス!」
審判役の先生の声が響いた瞬間、
Bクラス側から地鳴りのような足音が響いた。
「うおおおおお!!」
「細かいことは後だ!突っ込めぇ!」
筋肉。
とにかく筋肉。
魔法よりも腕力、戦略よりも勢い。
それがBクラスだった。
ミアが目を丸くする。
「え、ちょ、速くない!?」
「作戦とか…ない感じ?」
ルナが即座に判断する。
「前衛全振り。防御も回避も捨ててるわね」
「真正面から受けたら危険よ」
次の瞬間、
Bクラスの突撃が1-Aに迫る。
「ユウト、下がって!」
フィオナの声と同時に、防御魔法が展開される。
だが――
ドンッ!!
「うわぁ!?」
防御ごと押し込まれる衝撃。
力が、純粋に重い。
セリナが叫ぶ。
「ちょっと!脳筋にも限度があるでしょ!」
「これ、真正面からやる相手じゃないわ!」
ユウトは一歩引き、状況を見る。
(勢いはあるけど……動きは単純だ)
「ミア、右から回れる?」
「ルナ、足止めお願い!」
「了解!」
「任せて!」
ルナの魔法が地面を凍らせ、
突進してきたBクラスの数名が派手に転ぶ。
「うおっ!?」
「滑ったぁ!?」
その隙を逃さず、ミアが横から突撃。
「はいはーい!元気なのはいいけど、一直線すぎ!」
ドンッと体当たりを決め、場外に押し出す。
セリナは後方から的確に魔法を撃ち込む。
「はい、はい、止まってる人優先ねー」
「動かない脳筋ほど狙いやすいのよ」
Bクラスは強い。
だが、考えない。
ユウトはバットを構え、魔力を込める。
「一気に行くぞ!」
振り抜いた一撃が、地面を震わせ、
Bクラスの残った前衛をまとめて吹き飛ばした。
――沈黙。
そして。
「し、勝者!1-Aクラス!」
歓声が上がる。
ミアが大きく伸びをする。
「いやー、疲れた!」
「でも分かりやすい相手だったね!」
ルナは小さく息を吐く。
「力は本物。でも単調」
「総当たり戦だと、こういう相手から消えていくわ」
ユウトはバットを肩に担ぎ、苦笑する。
「次は……もっと頭使う相手だろうな」
観客席の奥。
静かにこちらを見ているCクラスの生徒たち。
次の相手が、
ただの力押しではないことを、全員が感じていた。
同じ模擬戦フィールド。
……のはずなのに、空気がまるで違った。
「次はCクラスかぁ」
ミアが周囲を見回して首をかしげる。
「……あれ?人、少なくない?」
Bクラスのときのような威圧感も、叫び声もない。
Cクラスの生徒たちは静かに配置につき、
全員が“何かを待っている”ようだった。
ルナが小さく眉をひそめる。
「気をつけて。あの距離感、布陣……」
「最初から誘導するつもりよ」
開始の合図。
「――試合開始!」
誰も、動かない。
「え、来ないの?」
ミアが一歩前に出かけた瞬間、
「止まって!」
セリナの声と同時に、
ミアの足元で地面が弾ける。
「わっ!?」
「罠!? ちょ、聞いてないんだけど!」
遅れて、周囲の床に淡く光る魔法陣が浮かび上がる。
ユウトは舌打ちした。
(最初からフィールドを仕込んでたのか)
Cクラス側から声が飛ぶ。
「不用意に踏み込まないでください」
「ここから先は、私たちの盤面です」
完全に、主導権を握られている。
フィオナが防御魔法を展開しながら言う。
「前に出るほど不利です!」
「後退して、立て直しましょう!」
だが、下がろうとした瞬間――
「後ろも、です」
背後で結界が閉じた。
「え、囲われた!?」
ミアが声を上げる。
Cクラスは攻めてこない。
ただ、じわじわと“逃げ場”を削ってくる。
ルナが低く言った。
「厄介ね……」
「力を使わせて、消耗させる気だわ」
セリナがユウトを見る。
「どうする?このままだとジリ貧よ」
ユウトは深く息を吸った。
(考えろ。相手は“完璧に制御された状況”を作ってる)
(なら――)
「盤面、壊す」
一瞬、ヒロインたちがユウトを見る。
「え?」
「ちょ、それ雑じゃない?」
ユウトはニヤッと笑う。
「だからだよ」
次の瞬間。
ユウトは全力で魔力を流し込んだ一撃を、
罠も陣も関係ない場所へ叩きつけた。
ドンッ!!
床が砕け、魔法陣が連鎖的に崩壊する。
「なっ!?」
「陣が……!」
Cクラスの冷静さが、初めて崩れた。
ミアが即座に動く。
「はい、今だね!」
「考える人は、崩れると弱い!」
一気に距離を詰める。
ルナは相手の再構築を許さず、
魔法の発動点を的確に潰す。
セリナが笑った。
「ごめんね」
「綺麗な戦略、台無しにするの得意なの」
Cクラスは強かった。
だが、“想定外”には脆かった。
最後は、ユウトの一撃で決着。
「勝者!1-Aクラス!」
教室がざわつく。
「Cクラス負けた!?」
「戦略組が……!」
ミアが息を切らしながら言う。
「はぁ……頭使う相手のほうが疲れるよぉ」
「脳筋のほうが楽だった!」
ルナは小さく頷く。
「でも、いい経験ね」
「次はもっと厄介なのが来る」
その視線の先――
控えめに、しかし確実に存在感を放つDクラス。
ユウトは思わず口にする。
「……あれ、ほんとにモブか?」
次回予告
モブチームだと思ってた相手が実はエリートチームでした。




