幕間 ダンジョン調査報告
学園の高い塔の一室。
窓の外には学園全体と、遠くに漂う霧の渦が見える。
「先日のダンジョン出現について、追加報告があるそうだ」
理事長が腕を組み、書類に目を落とす。
「はい。先日の観測で確認した通り、学園内に発生したダンジョンですが、現状の影響範囲や魔力異常について詳細を報告します」
理事補佐が資料を広げる。
別の理事が眉をひそめる。
「追加報告とはいえ、何か問題でも?」
補佐は淡々と答える。
「現時点で生徒や施設への直接的な被害は確認されておりません。学園内の安全性は十分に確保されています」
理事長は窓の向こうの霧を見つめながら、静かに頷く。
「なるほど。追加報告を受けた結果、現状は問題なし、か…」
「はい。ただし、今後の拡大や予期せぬ変化に備え、生徒の探索や調査は十分な安全管理のもとで行うことが望ましいです」
別の理事が付け加える。
理事長は書類に朱を入れつつ、静かに言った。
「了解。現状報告としては問題なし。あとは安全管理を徹底させること」
補佐は小さく安堵の息をつく。
「承知しました。準備を整えて、生徒たちの探索に備えます」
窓の外の霧は静かに揺れ、学園内の空気は緊張と期待で張りつめる。
上層部は冷静に事態を見守りつつも、生徒たちがダンジョンに挑む日が刻一刻と近づいていた。
――
夜の学園。塔の影が長く伸びる廊下を、フードを深く被った人物が静かに歩く。
「さて、準備は整ったか…」
低く冷たい声が響く。
机の上には魔力測定装置や古い巻物が並ぶ。
人物は指先で巻物に触れ、魔力の流れを操作し始める。
「この方法で、学園内のダンジョンを不安定化させれば…」
影の中で微笑む。
「生徒たちの試練を、少しばかり厳しくしてやれるだろう」
廊下の向こう、塔の上層部では先ほどの追加報告が行われていたが、この動きはまだ誰にも察知されていない。
「……ほう、これがダンジョンブレイクの兆候か」
フードの人物は呟き、魔力の流れを微調整する。
小さな歪みが学園の魔力網に生じ、霧の渦がわずかに揺れる。
「学園は完全に安全とはいえ、油断は禁物だな」
人物の声に含まれる冷ややかさは、誰もが想像していない未来の波乱を暗示していた。
窓の外、霧に包まれた学園は静かに揺れ、塔の上層部が安心しきるその裏で、悪意ある力が静かに動き出していた――
次回予告
霧が立ち込める学園の敷地。
ユウトたちはいつも通りの笑顔で、ダンジョンへの突入準備を進めていた。
「さあ、行こう!」
ミアが手を叩き、跳ねる。
「落ち着け、まずは安全確認だ」
ユウトがツッコミを入れつつ、魔力を整える。
だが、霧の奥では誰かの冷たい視線が学園を見つめていた。
「準備は整った…あとは少し刺激を加えるだけだ」
影の中で低く笑う声が響く。
通路の先、霧がわずかに揺れ、小さな異変が生まれる。
魔力の流れが微妙に乱れ、ゴブリンたちも普段とは違う動きを見せ始める――
「……何かおかしいぞ」
ルナが前方を見据え、眉をひそめる。
「でも、私たちなら大丈夫」
フィオナがユウトに微笑み、手を握る。
次回、ダンジョン突入――
しかし、平穏な冒険の背後で、影が静かに動き出す。
学園の平和は、本当に守られるのか――?
‥ダンジョンブレイクを発生させるのはヒロインの可能性もある。




