平穏は弁当と共に去る
俺の平和な昼休み――いや、もはや昼休みですらない――は、さらに混沌を増していた。
弁当箱を前に箸を握る俺を、四方向からキャラが圧迫する。
「ねえねえ、卵焼きの端っこちょっともらっていい?」
「ダメだああああ! ゼッタイにダメ!」
ミアが手を伸ばす。
ルナも視線と口撃で追い打ちをかけてくる。
「霧島くん、ちょっとくらい分けてよ~
可愛い顔して怒ると反応が面白い」
「面白くねぇ! 反応どころか胃が痛い!」
セリナは机に寄りかかりながら呟く。
「……あ、卵焼き倒れそう……」
「倒れるなぁぁあ!」
俺は箸を盾にし、手で弁当をガード。
弁当箱は揺れる。
生存競争、まさに昼休み戦争だ。
そんな中、ミアとルナの小競り合いが始まる。
「ねえ、霧島くんの弁当、ちょっと私の方に回して~」
「えー、卵焼きも唐揚げも私の方が食べる権利あると思う~」
「いやいや、誰が決めるんだよ!」
「決まってるよ、見た目の可愛さで!」
「反則だ! 俺に関係ない!」
セリナは呆れ顔で、でも弁当箱を倒さないように静かに見守る。
「……ふたりとも、本当に落ち着きなさい」
だが、フィオナはのんびり手をかざす。
「……ちょっとだけ、流れを変えます~」
奇跡的に唐揚げは床に落ちず、卵焼きも無事。
まるで魔法の奇跡だ。
「すご……助かった」
「うふふ、見てて楽しいね」
「いやいや、俺が必死なんだ!」
⸻
ミアが、今度は弁当箱を軽く持ち上げて「ちょっとだけ~」と攻撃してきた。
ルナが「卵焼きは私のもの~」と前に出る。
セリナが「危ない!」と身を乗り出す。
フィオナが「……ちょっとだけ~」と魔力で微妙に空気を揺らす。
俺は箸をフル稼働させ、弁当箱を死守する。
「も、もう! 誰か手を止めろ!」
だが、止まる気配はない。
むしろヒロイン同士が協力したり対立したりして、さらに攻撃のバリエーションが増えていた。
「ミア、手を引いて!」
「いや、霧島くんが楽しそうに防衛してるから!」
「いや楽しくねぇ!」
「ルナ、そっち邪魔!」
「ふふ、いや、面白いからいいの」
「セリナ、落ち着け!」
「す、すみません!」
「フィオナ、空気揺らすな!」
「……ごめんね~」
息が切れる。
俺の弁当箱を巡る戦いは、完全に総力戦になっていた。
⸻
だが、奇跡は起きた。
弁当箱は無傷、卵焼きも唐揚げも無事、汁も零れない。
どうやら、フィオナの微妙な魔力干渉と、俺の必死の防衛、そしてヒロイン同士の小競り合いが、絶妙にバランスを取ったらしい。
全員が少し息をつく。
「ふぅ……なんとか、平和……?」
「ふふ、楽しかったね!」
「いや、楽しいか?」
「危なかった~!」
「助かった……」
俺は深く息を吐き、ようやく箸を口に運ぶ。
(これ、昼休み……?
戦争じゃないか……)
それでも、心のどこかで感じた。
(……このクラス、絶対面白くなる)
弁当一個で起こる大騒動。
昼休み地獄、完結――いや、ドタバタはまだまだ続く。
平穏を求めた昼休みは、
弁当一個で完全に崩壊――
霧島ユウトは、全力で守り切ったものの、
心と胃には小さな傷が残った。
しかし、休憩時間が終われば学園生活は待ったなし。
次に待つのは、魔法学園らしい「授業」という名の地獄だ。
•初めての魔法授業
•生徒同士の小競り合い
•そして、運命の模擬戦
「平穏な学園生活なんて、幻想だったんだな…」
ツッコミ担当の霧島ユウトに、
新たな試練が迫る――
次回、弁当以上に危険な戦いが開幕!
魔法と笑いの嵐、第一ラウンド。




