真面目にやれと言われると、だいたい何か起き
「では――二学期最初の授業を始める」
教壇に立つのは、
魔法理論担当・グレイヴ先生。
無表情。
声低め。
嫌な予感しかしない。
「夏休みで」
「頭が溶けている者も多いだろうが」
「溶けてるって言われた」
ミアが小声で言う。
「事実でしょ」
セリナが即答する。
「俺も溶けてる側?」
ユウトが聞く。
「あなたは常温」
フィオナが静かに言った。
「微妙!」
⸻
「今日は」
「基礎魔法の再確認だ」
グレイヴ先生は黒板に魔法陣を書く。
「出力調整」
「暴走防止」
「安全第一」
その瞬間。
ユウトの背中に、
嫌な汗が流れた。
(出力調整……)
⸻
「霧島」
「はい」
即指名。
逃げ道なし。
「簡易火球」
「最低出力で」
「最低……」
ユウトが詠唱を始める。
「え、ちょっと」
ミアが身を乗り出す。
「ユウト、それ無理じゃ――」
ボンッ。
小さな火球。
……のはずだった。
ドォン!!
教室の天井近くで爆散。
「はいストーップ!!」
グレイヴ先生の杖が床を叩く。
「誰だ」
「今の」
「俺です!」
即ツッコミ兼自白。
⸻
「……霧島」
先生は、深くため息をつく。
「最低出力とは?」
「気持ち的には最低でした」
「気持ちの話はしていない」
⸻
「でもさ」
ミアが小声で言う。
「天井直撃しないで、上で散らしたよね?」
「それな」
ルナが頷く。
「被害ゼロ」
セリナがメモを取りながら言う。
「爆発位置、完全に制御してる」
「してない!」
ユウトが即否定。
「逸らしただけ!」
「それを」
先生が言った。
「制御と言う」
「言わない!」
⸻
「次」
「ミア・フィンレイ」
「はーい!」
ミアが元気よく立つ。
「えーっと」
「火球、ぽいっと!」
ドンッ。
机が半分焦げた。
「はいダメー!」
「えぇ!?」
⸻
「ルナ」
「はい」
ルナは余裕の笑みで詠唱。
美しい火球が、的の中心へ。
「お見事」
「でしょう?」
「距離近すぎ」
「危険」
「えー」
⸻
「セリナ」
「はい」
正確。
完璧。
教科書通り。
「模範解答」
セリナが胸を張る。
「でしょ」
⸻
「フィオナ」
「……はい」
小さな火球が、
ふわっと浮かんで、消える。
「……?」
「え?」
ミアが首を傾げる。
「成功だ」
先生が言った。
「理想的」
フィオナが、ほっと息を吐く。
⸻
「霧島」
再び呼ばれる。
「何ですかもう!」
「まとめだ」
先生は、黒板を指す。
「お前は」
「理論を学べ」
「ミアは」
「落ち着け」
「ルナは」
「距離を取れ」
「セリナは」
「柔軟になれ」
「フィオナは」
「自信を持て」
「全員」
「二学期は、事故るな」
「無理じゃない?」
ミアが言う。
「無理だな」
ユウトが同意。
⸻
休み時間。
「ねえユウト」
ミアが笑う。
「二学期も」
「ドタバタ確定だね」
「確定だな」
「でも」
フィオナが言う。
「ちょっと」
「楽しい」
ユウトは、教室を見回した。
「……まあ」
「何とかなるか」
センスだけで。
次回予告
「次の実技は――ペアを組め」
その一言で、教室がざわついた。
「ちょっと待って」
ミアが言う。
「嫌な予感しかしないんだけど」
「安心して」
グレイヴ先生が淡々と告げる。
「予感は、だいたい当たる」
「安心要素ゼロ!」
「ペアは固定ではない」
「状況対応能力を見る」
ルナが微笑む。
「つまり」
「地獄、ローテーション制?」
「その通りだ」
セリナが静かに言う。
「霧島」
「あなた、組む相手によって出力変わるでしょ」
「やめろ」
「言語化するな」
フィオナが、小さく呟く。
「……近いと、集中できない」
「聞こえてるよ!」
「聞こえてるの!?」
「事故防止のため」
先生が続ける。
「距離感も評価対象とする」
「終わった……」
ユウトが天井を仰ぐ。
「実技×ペア×制御不能」
「これ」
ミアが言う。
「誰か、怪我するよね?」
「しない」
先生が即答する。
「私が止める」
「信用していいやつ?」
「しなくていい」
⸻
次回、
『実技授業・ペアワーク地獄』
組み合わせ次第で、
魔法も、感情も、暴発する。
「誰と組むか」で、
評価が決まる。




