ミアは、黙るのが苦手だった
「じゃあ」
リアが言った。
「最初は、あなたから」
「え、私?」
ミアが目をぱちぱちさせる。
「一番、隠すのが下手だから」
「それ悪口じゃない?」
「褒めてる」
「じゃあいいや!」
軽い。
いつも通りのミア・フィンレイ。
教室の空気が、少しだけ和らぐ。
ユウトは思う。
(こういう時、場を壊さないのはミアだ)
でも。
「……どこから話せばいいんだろ」
その声は、少しだけ小さかった。
⸻
「私さ」
ミアは椅子の背もたれに体重を預ける。
「昔から、魔法が得意だったわけじゃないんだよね」
「え?」
ユウトが反応する。
「意外?」
ミアは笑う。
「今の私見てたら」
「最初から調子良さそうに見えるよね」
ルナが頷く。
「まあ、爆発オチ担当だし」
「それは今の話!」
ミアは一度ツッコんでから、息を吸った。
⸻
「私の家さ」
「魔法使いの家系なの」
「由緒正しいやつ?」
ユウトが聞く。
「ううん」
「優秀すぎるやつ」
沈黙。
「兄も姉も」
「天才って呼ばれてた」
セリナが、静かに耳を傾ける。
「詠唱、三歳で完成」
「属性制御、五歳で安定」
「学園? 当然、首席」
ミアは肩をすくめた。
「で、私は?」
「……普通?」
ユウトが言う。
「そう」
ミアは笑う。
「普通」
⸻
「魔法ってさ」
「失敗すると、めちゃくちゃ目立つんだよ?」
「爆発とか?」
ルナが言う。
「爆発とか!」
ミアは頷いた。
「静かな訓練場で」
「私だけ、ドーン!って」
フィオナが小さく身をすくめる。
「笑われた?」
ユウトが聞いた。
「うん」
即答。
「でもね」
ミアは言う。
「一番きつかったのは、家だった」
空気が変わる。
「『フィンレイの子なんだから』」
「『できて当然』」
ミアは、いつもよりゆっくり話していた。
「できなかった時」
「誰も怒らないの」
「……それ、余計にきつい」
ユウトがぽつりと言う。
「でしょ?」
⸻
「だからさ」
ミアは指を立てた。
「私、決めたの」
「決めた?」
リアが聞く。
「黙らないって」
ミアは笑った。
「失敗したら、先に自分でツッコむ」
「変な魔法出たら、笑いに変える」
「それで」
ユウトを見る。
「誰かがツッコんでくれたら」
「私は、普通でいられる」
一瞬、誰も喋らなかった。
⸻
「……ユウト」
ミアは、少し照れたように言う。
「私がふざけてる時さ」
「本当は」
「逃げてる時もあるんだ」
ユウトは、答えなかった。
代わりに言った。
「でもさ」
ミアを見る。
「逃げながら、前に進んでるだろ」
ミアは目を丸くして、
次の瞬間、いつもの笑顔に戻った。
「なにそれ」
「ちょっとカッコよくない?」
「今さら気づいた?」
「くーっ!」
「ツッコミが刺さる!」
⸻
リアが、静かに言った。
「理解したわ」
「ミア・フィンレイは」
「一番、壊れやすくて」
「一番、場を明るくする」
「評価高くない?」
ミアが胸を張る。
「当然よ」
フィオナが、そっと付け足す。
「……ミアが笑うと」
「安心する」
ミアは一瞬、言葉を失ってから。
「それ、ずるい」
そう言って、顔を背けた。
⸻
その夜。
ユウトは思う。
(こいつ、強いな)
魔法じゃない。
笑って、喋って、前に出る強さだ。
次回予告
ルナ・ヴァルシュタインの過去
「自覚しているお色気」と「それを選んだ理由」
‥えーっとこれユウトに喋っていいやつ?




