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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました  作者: 三科異邦


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27/65

ミア・フィンレイは、だいたい事件を起こす

夏の海は、容赦という言葉を知らない。

照りつける日差しに、白い砂浜が焼けるように熱い。


「――あっっつ!!」


霧島ユウトは、砂浜に足を踏み入れた瞬間、思わず声を上げた。


「それ言ったら負けだよ、ユウト!」

「夏なんだから暑くて当然でしょ!」


誰よりも元気にそう言い切ったのは、

言うまでもなく――ミア・フィンレイだった。


「見て見て! 海だよ海!」

「テンション上がるーっ!」


「分かるから落ち着け!」

「走るな、まだ荷物置いてない!」


ユウトが腕を掴んで止めると、ミアは不満そうに頬を膨らませる。


「えー? 細かいなぁ」

「海は勢いで入るものでしょ?」


「それで毎年何人流されてると思ってる!」


後ろでは、

「もう始まってるわね」

とルナ・ヴァルシュタインが苦笑し、

「予想通りすぎて驚きがないわ」

とセリナ・クロフォードが腕を組んでいる。


フィオナ・リースだけが、

「ミアちゃん、気をつけてね……?」

と心配そうに見守っていた。


(……全員そろってるのに、この嫌な予感)


ユウトは、内心でため息をついた。



なんとか全員で荷物を置き、準備を整えて再集合。


「じゃあ、どうする?」

フィオナが小さく首を傾げる。


「泳ぐ?」

「屋台もあるみたいよ?」


その瞬間。


「泳ぐ!!」


ミアが即答した。


「今すぐ!」

「一秒でも早く!」


「だから早いって言ってるだろ!!」


制止する間もなく、ミアは波打ち際へダッシュ。

砂を蹴り、笑い声を上げながら海へ飛び込んでいく。


「ほらほら! 冷たくて気持ちいいよ!」

「ユウトも来なよ!」


「待てって言って――」


そのときだった。


「わっ!?」


波が一段大きくなり、ミアの足元をさらった。

体勢を崩し、バランスを失う。


「ミア!」


ユウトは、ほとんど反射で動いていた。


靴を脱ぎ捨て、水へ踏み込む。

波の動きを読み、タイミングを合わせる。


(引く、今だ)


ミアの腕を掴み、引き寄せる。

流れに逆らわず、重心を低くして体を支える。


ほんの一瞬。

だが確実な動き。


「こっちだ!」


「え、ちょ……ユウト!?」


次の瞬間には、二人とも波打ち際に戻っていた。


「だ、大丈夫か?」


「……う、うん」


砂浜に座り込んだミアは、珍しく静かだった。

いつもの勢いは影を潜め、少しだけ俯いている。


「だから言っただろ」

「準備運動もなしに突っ込むなって」


「……ごめん」


素直な謝罪に、ユウトは一瞬言葉に詰まる。


(……こういう顔するんだよな)


「まあ……無事だったからいいけどさ」

「次はちゃんと一緒に行動しろ」


「……はーい」


その返事は、いつもよりずっと大人しかった。



少し落ち着いてから、二人は波打ち際に並んで座っていた。

遠くでは、ルナたちが楽しそうに話している。


「ねえ、ユウト」


「ん?」


「さっきさ」

「来るの、すごく早かったよね」


「危なかったからな」


「それだけ?」


ミアは横目でユウトを見る。


「なんかさ、迷いなかった」

「一瞬だった」


ユウトは、視線を海に向けたまま答える。


「考える暇なかっただけだよ」


「ふーん」


ミアは、少しだけ間を置いてから笑った。


「でもさ」

「ちょっとかっこよかった」


「はいはい」

「調子乗るからやめろ」


「えー?」

「照れてる?」


「照れてねぇ!」


即答したが、耳が熱いのは自覚していた。


「ねえユウト」

「次は一緒に泳ご?」


「……浅いとこ限定な」


「約束!」


ミアは、いつもの明るい笑顔を取り戻していた。



「二人ともー!」

「何してるの!」


ルナたちが手を振って呼んでいる。


「今行く!」

ユウトは立ち上がり、ミアに手を差し出した。


ミアは一瞬だけ驚いた顔をしてから、

その手を掴む。


「……ありがとね」


すぐに手は離れたが、

その温もりは、なぜかしばらく残っていた。


(ほんと、放っておけない)


こうして――

夏休み最初の海イベントは、

ミア・フィンレイらしい騒動から幕を開けた。


「――で、次は誰が主役?」


砂浜に座り込みながら、誰かが何気なく言う。


「決まってるでしょ」

「さっき一番楽しそうにしてた人」


「……私?」


ルナ・ヴァルシュタインは、サングラスを指で押し上げて微笑む。


「覚悟しなさい、霧島くん」

「次は“事故”じゃなくて、確信犯よ?」


「待て待て待て!」

「その言い方やめろ!!」

•距離感ゼロ

•角度完璧

•自覚ありの視線攻撃


「見られるって分かってる方が、楽しいでしょ?」


「楽しくねぇ!!」


余裕たっぷりのルナと、

全力でツッコミ続けるユウト。


「……大丈夫?」

「霧島くん、生きてる?」


「まだだ! まだ耐えてる!」


海は変わらず穏やか。

しかし、ユウトの心拍数だけが異常を示していた。


次回、

『海本番②

ルナ・ヴァルシュタインという名の災害』


覚悟はいい?

本当に“地獄”なのは、ここからだ。


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