夏休み前日談:まずは海、という結論になるまで
「――で、夏休みどうする?」
昼休み。
いつもの場所。
いつものメンバー。
霧島ユウトは、紙パックの飲み物をストローで吸いながら、半ば投げやりに切り出した。
「いや、それを決めるために集まったんだろ」
「だから聞いてるのよ」
即座に返ってくるツッコミに、ユウトは肩をすくめる。
「まあ……特に決めてないけどな」
その一言で、空気が一瞬止まった。
「……え?」
「マジで?」
「夏休みだよ?」
四人の視線が、じわじわと集まってくる。
(あ、これまずいやつだ)
ユウトは内心で察した。
「ほら、あるでしょ。
海とか、祭りとか、合宿とか」
「なんで全部“とか”なのよ」
「具体性ゼロなんだけど」
「期待して損した……」
「俺のせい!?」
四方向からの同時攻撃に、ユウトは即座に両手を上げた。
「分かった分かった!
じゃあ案を出そう、案を!」
その言葉を待ってましたとばかりに――
「海!」
被せるように、全員が同時に言った。
「……は?」
「いや、今のハモり方なに?」
「打ち合わせした?」
ユウトは思わず笑ってしまう。
「そんなに海行きたいのかよ」
「夏だもん」
「定番でしょ」
「海行かない夏休みなんて、夏じゃない」
「最後意味分かんねぇ」
ツッコミを入れつつも、ユウトは少し考える。
(まあ……悪くないか)
人も多い。
イベントも多い。
何より――何か起きても不自然じゃない。
「で?
日帰り? 泊まり?」
その一言で、空気がまた変わった。
「泊まり」
「泊まりでしょ」
「泊まりたい……」
(あ、これ絶対荒れる)
「ちょっと待て」
「話が早すぎる!」
「まだ場所も決まってない!」
必死にブレーキをかけるユウト。
「第一、誰が仕切るんだよ」
「霧島くん」
「ユウト」
「お願い」
「俺かよ!」
三人+一人の視線が、期待に満ちている。
(……逃げ場、ないな)
ユウトは大きくため息をついた。
「分かった。
とりあえず海。
日程と場所は、また後日決める」
「やった!」
「決まりね!」
「水着……どうしよう」
最後の一言に、ユウトの動きが止まる。
「ちょっと待て今なんて言った」
「何って、水着よ?」
「いや、そこはまだ考えなくていい!」
しかし時すでに遅し。
ヒロインたちはすでに盛り上がり始めている。
(……俺、無事に夏休み終えられるのか?)
そんな不安を胸に、
夏休み最初のイベント――海が、静かに決定した
次回予告
夏休み最初のイベント――海。
しかし、本当の戦いは海に行く前に始まっていた。
「ねえ霧島くん、どっちがいいと思う?」
「いや、俺に聞くな!!」
試着室。
鏡。
カーテン。
そして、なぜか巻き込まれる主人公。
「見るだけでいいから!」
「感想ちょうだい!」
「ちゃんと“男目線”で!」
「無理だって言ってるだろ!!」
•次々と変わる水着
•意見を求められ続けるユウト
•ヒロイン同士の静かな火花
•そして逃げ場のない空間
「……これ、誰のための水着選びだっけ?」
ツッコミは止まらない。
心臓はもたない。
理性は限界。
果たしてユウトは、無事に店を出られるのか?
そして――最初に“地獄”を見るのは誰だ。
次回、
『水着選び回(地獄)』
開幕。
モブA,B
「あいつマジでうらやましいよ‥」




