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魔法使いを目指す前に、まずツッコミ役に就任しました  作者: 三科異邦


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23/60

夏休み前テスト当日! 静かすぎる地獄が始まる

 ――朝。


(眠い)


 霧島ユウトは、心の底からそう思っていた。

昨夜は勉強した。確かにした。

問題集も開いたし、ノートも見た。

なのに。


(なぜか脳内が真っ白なのはどういう理屈だ……)


 教室に入ると、すでに独特の空気が漂っている。

いつもは騒がしいクラスが、今日は妙に静かだ。


「……おはよ」

「おはよー……」


 ミアの声すら、今日は控えめだった。


「どうした、元気ないな」

「だってテストだよ……夏休み前だよ……」

「いや、それ普通テンション上がるところだろ」

「赤点だったら補習だもん……」


(あ、そうだった)



 ルナは腕を組み、窓の外を眺めている。

余裕そう――に見えるが。


「ルナ、今回はどうだ?」

「……まあ、運次第ね」

「それ、勉強してないやつのセリフだからな?」


「霧島くん、昨日の公式、覚えてますか?」


 セリナが小声で聞いてくる。

その距離が近い。


「お、おう……た、多分……」

(今それ聞く!? 思い出す前に心拍数が上がるんだが!?)


 フィオナはすでに机に突っ伏していた。

「……眠い~……テストって長いよね~……」

「始まってもいねぇよ!」


 リアは静かに教科書を閉じる。

「……直前に詰め込むのは、逆効果です」

「分かってる……分かってるけど不安なんだよ……」



 チャイムが鳴る。


「――これより、夏休み前期末テストを開始する」


 その一言で、教室の空気が一気に張り詰めた。


(来た……)


 問題用紙が配られる。

紙の音がやけに大きく聞こえる。


「始め!」


 ユウトは深呼吸して、問題に目を落とした。



(……)


(……あれ?)


(……これ、見たことある……ような……)


 第一問。

ギリギリ分かる。

第二問。

うっすら覚えてる。

第三問。


(誰だお前)


 脳内で警報が鳴る。


(待て待て待て、これは確か……セリナが説明してくれたやつ……!)


 必死に記憶を掘り起こす。

その時――。


 ふと横を見ると、ミアがうなだれていた。

さらに反対側では、ルナが眉をひそめている。


(……全員、苦戦してるな)


 少し安心した自分を、ユウトは心の中で殴った。



 中盤。

集中しているはずなのに、気になる。


 セリナがペンを走らせる音。

フィオナが小さく伸びをする気配。

リアが静かにページをめくる所作。


(なんでだよ……! なんでこんなに存在感あるんだよ……!)


 ふと、ルナと目が合う。

一瞬だけ。


(やめろ……今それは反則だ……)


 ルナは小さく口角を上げて、また問題に戻った。

完全に分かってやっている。


(後で覚えてろ……!)



 終盤。

残り五分。


(……よし、全部埋めた……!)


 合ってるかどうかは別として、とにかく埋めた。

それだけで達成感がある。


 チャイムが鳴る。


「――そこまで。筆記用具を置け」


 その瞬間、教室全体から一斉に息が漏れた。



「……終わった……」


 ミアが机に突っ伏す。

「生き残った……」

「いや、結果はこれからだぞ」


 ルナが肩をすくめる。

「まあ、赤点じゃなければ勝ちよね」

「基準低いなおい」


 セリナは少し安堵した表情。

「思ったより、落ち着いて解けました」

「さすがだな……」


 フィオナはにこにこしている。

「お腹すいた~」

「お前、テストの感想それか!」


 リアは静かに言った。

「……これで、あとは結果次第ですね」


 ユウトは椅子に深くもたれかかる。


(……夏休みまで、あと一歩)


 不安もある。

でも、みんなで乗り切った感じが、少し嬉しかった。


「よし……次は結果発表だな……」

「ええええ、聞きたくない!」

「現実から逃げるな!」


 こうして――

夏休み前最大の山場、テスト当日は幕を閉じた。


本当の地獄が、**まだ先にあるとも知らずに。

次回予告


――全員、赤点なし。

――補習、なし。

――つまり。


「夏休みだーーーーっ!!」


学園に響く歓声。

解放感。

自由。

そして――。


「……で?」

「……何するの?」


沈黙。


海?

祭り?

合宿?

帰省?

それとも、なぜか起きる事件?


「ねえ霧島くん、夏休みって普通、何するの?」

「いや俺に聞くな! 俺も分からん!」


ヒロインたちは期待に満ちた目でこちらを見る。

しかし――何も決まっていない。


(おかしい……夏休みイベントって、もっと自然に始まるはずだろ……?)

(なぜこんなにも、何も思い浮かばない……?)


頭を抱える霧島ユウト。

それを見て首を傾げるヒロインたち。


「……とりあえず集まる?」

「それ、毎回の始まり方じゃない?」


――そう。

夏休みイベントは、決めるところから始まる。

そして一番大変なのは、

何をやるかを“決めること”だった。


悩む。

迷う。

期待だけが膨らむ。


「……次回予告考えるの、これ一番頭使うやつじゃない?」

「誰に向かって言ってるのよ」


こうして――

無事に夏休みに突入したはずなのに、

まだ何一つ始まっていない夏が、ゆっくり動き出す。


次回、

『夏休み突入!第一回・何するか会議(全然決まらない)』

お楽しみに!



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