クラス委員決戦
クラス委員決め当日。
霧島ユウトは朝から嫌な予感しかしなかった。
(投票だけで終わるわけがない。
このクラスだぞ? 平穏に終わる未来が一切見えない)
教室に入った瞬間、その予感は確信へと変わる。
「おはよう、霧島くん!」
「今日こそ決着つけるよー!」
ミアは謎の気合いを入れ、腕をぶんぶん振っている。
その隣でルナが余裕たっぷりに微笑んだ。
「決着、ね。霧島くん、覚悟はいい?」
「何の覚悟だよ! 俺は投票するだけだ!」
セリナは少し緊張した様子で杖を胸に抱えている。
「……今日は、失敗しないように頑張ります」
「それ、毎回聞いてる気がするんだが!?」
フィオナはいつも通りのんびりだ。
「……ちょっとだけ、見守るね~」
「その“ちょっとだけ”が一番信用ならないんだよ!」
そして――
教室の後ろで静かに座っているのが、転校生のリア・クロフォードだった。
背筋を伸ばし、周囲を冷静に観察している。
その視線がふとユウトに向き、軽く会釈した。
「霧島さん、今日はよろしくお願いします」
「……ああ、よろしく。巻き込まれないように気をつけろよ」
「え?」
「いや、何でもない」
(いや本当、何でもないうちに逃げた方がいい)
⸻
担任が教壇に立ち、淡々と告げる。
「それではクラス委員を決めます。立候補者は前へ」
その瞬間。
「はーい!!」
「私も」
「……はい」
「……ちょっとだけ~」
ミア、ルナ、セリナ、フィオナが一斉に前へ出る。
そして、少し間を置いてリアも静かに立ち上がった。
クラスがざわめく。
「転校生も立候補か」
「すごい落ち着いてるな……」
ミアはリアの前に立ち、にぱっと笑った。
「リアちゃんもやるんだね! 楽しそうだもんね!」
「ええ。クラスをまとめる役目、嫌いではありません」
ルナが口元に手を当て、楽しそうに言う。
「ふふ、これは面白くなってきたわね」
「お前は“面白い”で済ませるな!」とユウトが即ツッコむ。
⸻
まずは簡単なアピールタイム。
ミアが元気よく一歩前へ。
「クラス委員になったら、毎日楽しくするよ!」
「基準がふわっとしすぎだろ!」
次にルナ。
「混乱が起きたら、霧島くんが何とかしてくれるから大丈夫よ」
「俺を前提条件にするな!」
セリナは深呼吸してから真面目に。
「……皆さんを支援する役に徹します。事故は、減らします」
「減らすって言ったな!? ゼロじゃないのか!?」
フィオナはふわっと微笑み。
「……空気が荒れたら、ちょっとだけ整えるよ~」
「だからその“ちょっとだけ”が怖いんだって!」
最後にリアが前に出る。
「私は規律と調和を重んじます。
騒がしい人も、真面目な人も、全員が過ごしやすいクラスを目指します」
その落ち着いた声に、教室が一瞬静まった。
(……強い。精神的にめちゃくちゃ強いタイプだ)
⸻
――だが、ここで終わらないのがこのクラスだ。
「じゃあ投票の前に、ちょっとした実演を――」
担任が言いかけた、その瞬間。
「それなら光の玉でアピールしよ!」
「ミア待て! 誰もそんなこと言ってない!」
ミアが魔法を展開し、教室に小さな光の玉が浮かぶ。
それを見たルナが即座に幻影を重ねた。
「演出は大事よね?」
「大事じゃねぇ! 事故の元だ!」
セリナが慌てて補助魔法をかけ、
フィオナが「……ちょっとだけ~」と空気を整える。
結果。
光の玉が増え、幻影が乱れ、魔力が微妙に干渉し合い、
教室は一歩手前のカオス空間になった。
「ちょっと待て! 全員止まれ!」
ユウトのツッコミが教室に響く。
そのとき、リアが静かに杖を構えた。
「……失礼します」
彼女が放ったのは、派手さのない制御魔法。
乱れた魔力の流れだけを正確に切り分け、
光も幻影も、すっと消えていった。
教室が静まる。
「……すご」
ミアがぽつりと呟く。
ユウトは思わず言った。
「……お前、委員向きすぎだろ」
リアは少し照れたように微笑む。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
⸻
こうして、投票は無事(?)行われることになった。
(……結果がどうなっても、
このクラス、絶対に平穏じゃないな)
ユウトはため息をつきつつ、
なぜか少しだけ楽しくなっている自分に気づくのだった。
新しい風が吹き込んだクラスは、
今日も変わらず、騒がしく、そしてどこか居心地がいい――。
クラス委員、ついに決定――
しかし、平穏なスタートを切れるほど、このクラスは甘くなかった。
•委員に決まった瞬間から始まる仕事地獄
•ヒロインたちの意見は全員バラバラ
•新委員・リアの冷静さ vs クラスのカオス
•なぜか当然のように巻き込まれる霧島ユウト
「委員って、こんなに命がけの役職だったか!?」
教室、廊下、職員室――
初仕事からトラブル連発で、ツッコミ力は限界突破!
少しずつ見えてくるリアの素顔、
そしてヒロイン同士の距離にも、微妙な変化が――?
次回、クラス委員初仕事回!
学園ラブコメ、さらに騒がしく加速する!




