第一話 帰宅
静かな空を飛行船で飛ぶ。
プロペラが風を切る音と、蒸気機関の音だけが聞こえる。
遠くに見える夕日は、とても美しかった。
やがて日が暮れた頃、街にたどり着く。
渓谷の壁に沿って作られた街。
その一角にある自宅の停留所へと停まる。
するとすぐに、玄関から真っ赤な顔をした祖父がでてきた。
「コラァ!メアリー!こんな時間までどこに行っとったんじゃぁ!」
「到着時間は6時だから!ギリギリセーフ!セーフだから!」
「アウトじゃぁ!」
祖父は怒るのも無理はない。
もうすぐ夜だと言うのに帰ってこない孫を心配していたのだ。
それに祖父の言う通り、ギリギリアウトである。
「罰として飛行船は一人で後片付けせい。メシはもう出来ておるから急ぐんじゃぞ!タンクを触るときは火傷に気をつけろよ!」
「はーい」
そう言って祖父は家の中に戻っていった。
私は乗ってきた飛行船の後片付けをする。
「えーと、たしかこのあたりに…」
沢山のパイプが密集しているエンジン部分のうち、一本のパイプを辿る。
圧縮ポンプに蒸気を届けるためのパイプだ。
「あったあった!」
すぐにバルブを見つけて、そのバルブを開く。
バルブを開くと同時に動力が伝達され、
圧縮ポンプがタンクにガスを圧縮していく。
すると、浮き袋が萎んでゆく。
大きかった浮き袋はどんどん萎んでゆき、やがて全てのガスがタンクに収まった。
バルブを閉じて圧縮ポンプを止めると、
手袋を付けてタンクを取り外す。
「よし、うわっ!アチチ!」
一気にガスが圧縮され、高温になったタンクは、手袋をつけていてもそれなりに熱かった。
急いで水に浸けて冷ます。
ジュゥゥ…という音とともにタンクの表面から湯気が上がる。
やがて蒸気が止むと、タンクの水滴を拭き取った。
タンクを棚に置き、浮き袋を畳むと、
再びエンジン部分へ向かう。
ボイラーを止めて燃料を回収する。
こちらも別のタンクに移して棚へ。
「うぉっ!重っ!」
結構重い。
ボイラーが冷めて、蒸気機関が停止したことを確認すると、祖父の所へと向かう。
「終わったよ~」
「遅いぞ!メアリー!」
「ごめんなさ~い」
「まったくお前ってやつは……」
食事を終えた後、私は自室に戻る。
自室に戻るとすぐに作業台へ向かう。
「〜♪〜」
鼻歌を歌いながらランプを付ける。
机の上や棚には大量の紙や本が置かれている。
全て私が考えた時計の設計図だ。
「よし!今日もやりますか!」
時計作りの時間だ。
机の上に紙を置き、筆記用具を持つ。
そしていつものように設計図を書き始めた。
私の夢のために……
翌朝
「メアリー!遅刻だぞ!」
「ふぁ…わぁぁあ!?!?」
昨晩は、ランプの灯りを頼りにひたすら書き続けた。
結局、設計図を書いている途中で眠ってしまった。
「メアリー!学校だ!月曜日だぞ!急ぐんじゃ!!」
「わかった!今行く!」
慌てて鞄と弁当を手に取り家を出る。
「ほら、早くしろ!間に合わんぞ!」
「急げぇぇ!」
私は、まだ霧の残る街の中を走っていった。
新章突入です