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遺世界の英雄たち (旧題:遺世界)  作者: kimagure
プロローグ:遺跡
8/34

洞窟の遺跡

 暗い洞窟の中、石を砕く音が響く。

 時々壁面をピッケルで掘りながら、

 一人の女性がヘッドライトを付けて探検していた。


 「うーんおかしいなぁ…」


 困ったような顔をしながら、 手に持ったライトの光を辺りに散らす。

 そこには、岩があるだけで何もない。


 「あっちはどうだろ」


 そういって反対側の壁を調べ始める。

 そして、またしばらく掘っては確認し、掘っては確認する。

 それを繰り返しながら、私は洞窟の奥へと進んいった。


 「あ、あった!!」


 2時間ほど進んだ時、ようやく目当てのものが見つかった。

 そこには、石レンガが敷き詰められていた。


 「よし!この奥を掘れば…」


 私はピッケルを大きく振りかぶり、勢いよく壁に叩きつける。

すると…


 「遺跡発見!!!」


 ガラガラと壁が崩れ、広い空間が現れた。

 私は意気揚々と、その中へと入っていった。


――


 そこはまるで、小人になって時計の中に入ったようだった。

 大小様々な歯車が噛み合い、今にも動き出しそうだった。

 それは巨大な機械仕掛けの街の遺跡。


 「すごい……」


 目の前に広がる光景に圧倒されつつ、 私の胸には興奮が溢れていた。

 ふらふらと歩き出し、興味のある物を次々と見ていく。


 「材質は殆ど銅で出来てるわね…」


 大きな柱や歯車などに触れてみる。

 ひんやりとした感触とともに、どこか心地よい感じもした。


――


 街の中をどんどん探索していく。

 幸い、地中に埋もれていたおかげで風化はしていなかった。

 ただ、入り口から遠ざかるほど暗くなっていく。

 少し不安を感じつつも先へ進む。

 街の中心部まで来ると、 商店街のような物もあった。

 その中で、一冊の本を見つけた。

 『旅路』とだけ書かれたその本は本屋の隅の方にひっそりと置かれていた。

 手に取ってみると表紙には地図のようなものが描かれている。


 「世界地図…今の地図と同じ…?」


 創作物の地形で、現実と同じようなものが使われるのはよくあることだ。

 そう思って私は特に気にもとめなかった。

 だが、その思いはすぐにかき消されることになる。


 「このスケッチは…え…」


 そこに貼られていた遺跡のスケッチは、まだ計画段階にしかない、存在しないはずのものだったから。


 「空中戦艦…」


 見間違えるはずがない。それの設計者は…


 私なのだから。


――


 私は冷や汗をかきながら本を鞄にしまう。


 (うそ!そんな…そんなことって…!)


 私は世界の真実に気がついてしまったのかも知れない。

 とても、とても恐ろしい真実に


 (そんな、じゃあ…どうすれば…)


 知ってしまった恐ろしい真実を、私は信じられないでいた。


 私は逃げるように遺跡の奥へと向かう。

 そこにあったのは、巨大な柱だった。


 「これって……」


 近づいてみても、それが何なのかはよく分からなかった。


 「全て鉄で出来てる…」


 鉄はこの遺跡の時代ではかなり高価なはずだ。

 これは当時の最先端の技術の塊だろう。

 鉄で出来た微細な歯車が、数え切れないほど大量に折り重なって柱を構成していた。


 「僅かに動いた跡がある…でも破損してる」


 殆どの歯車が真っ二つに割れたり、歯が欠けたりしていた。相当な負荷がかけられた証拠だ。


 「一体何をしようと…」


 深く岩盤に突き刺さるその柱は、かなり深くまで続いているようだ。

 だが、狭すぎてこれ以上深くまでは行けそうにない。


 (それよりも早く帰らなきゃ…)


 私は荷物をまとめると、急いで地上へと走った。


 (この真実を…伝えなくちゃ…!)


 世界は、もう終わりへと進み始めている。

 その恐怖だけが頭を支配していた。

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