森林の遺跡
霧の奥深くには、巨大な飛行場があった。
「見つけた…」
私は、思わず呟く。
それは、古代文明の遺跡だった。
おそらくまだ誰も見つけていない遺跡だ。
お宝が眠っているに違いない。
高い木に登って上から見ると、
滑走路を中心に円形に広がっており、
どうやら直径は200mほどあるようだ。
周囲を囲むように高い柵があり、舗装された飛行場の道路を突き破って木々が生い茂っている
そして、その遺跡を守るように数機の機械人形が置かれていた。
だが、既に停止しているようだ。
「入るか…」
私は、遺跡へと入っていった。
生茂る木々中を歩いていくと、急に視界が開ける。
そこには、巨大な格納庫が広がっていた。
周囲には、朽ち果てた建物が無残な姿を晒している。
どうやら、ここが飛行場の中心らしい。
「これは…飛行機か?」
3対の翼を持った航空機と思われるものが、格納庫の残骸とともにあった。
「これが、この時代の乗り物なのだろうか」
私は、航空機の残骸に触れてみる。
残骸はバラバラと崩れてしまった。
どうやらかなりの年月が経っているようだ。
――
「他にも何かあるかもしれないな」
そう思いながら歩いていると、ふと、気配を感じた。
振り返ると、1体の人形兵器のようなものがいた。
古代文明の機械人形だ。
全身ボロボロで、今にも朽ち果てそうだ。
鉄でできた体は真っ赤に錆びていて、片足も無かった。
「動くの?これ……」
機械人形に近づくと、その頭部がこちらを見た。
じっとこちらを見ている。
すると突然、人形から蒸気が吹き出した。
同時に人形がゆっくりと動き出す。
「うわっ!?」
慌てて離れるが、襲ってくる様子はない。
人形は、近くに転がっていた折れた柱で体を支えながら、ゆっくりと歩いていった。
そして、私の横を通り過ぎていく。
「何なんだ……一体」
人形はそのまま何処かへ歩いていってしまった。
――
「あれは…飛行船か?」
なにかお宝はないかとさらに探索を進めると、格納庫の端の方で朽ち果てている物体を見つけた。
それは、金属でできた大きな筒のような形をしている。
恐らく飛行船と呼ばれるものだったはずだ。周囲には、同じような飛行船の残骸がいくつもあった。
「ここは飛行船の停留所だったのか」
周囲に散らばる残骸を見ながら思う。
飛行船も飛行機も、大きなものや小さな物など、様々なものがあった。
この遺跡はどうやらかなり大規模な飛行場だったらしい。
再び中心部へと戻ると、先程の機械人形が、石碑のようなものに、祈りを捧げていた。
その周囲には、大量の飛行機の残骸があった。
その飛行機の全てが、青銅に変化していた。
しばらくすると、機械人形はゆっくりと立ち上がり、こちらへと近づいてきた。
その手には、金属でできた、小さな小さな歯車が握られていた。
「くれるの?」
人形はコクリと頷いた。
薄い青色のその歯車は、一体なんの金属でできているのか分からなかったが、それが人形にとって大切なものであることは容易に想像できた。
「ありがとう」
そして私がその歯車を受け取った瞬間…
私は遺跡の真ん中で目を覚ました。
いつの間にか眠っていたようで、記憶が曖昧だ。
「なに…?この歯車」
手に握られていた謎の歯車に疑問を抱くが、なぜかそれが大切なものだとわかった。
かなりのお宝であることは明白だが、
何故かそれを売ろうという気にはならなかった。
気がつくと、既に日が傾き始めていた。
森の夜は危険だ。早く村に戻らなくては。
私は歯車を鞄に仕舞うと、急いで帰路についた。
遺跡の周りにいた機械人形の残骸が、一つ増えていたような気がした。