表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺世界の英雄たち (旧題:遺世界)  作者: kimagure
プロローグ:遺跡
3/34

砂漠の遺跡

 砂漠で遭難してから一ヶ月

 旅人は杖を突きながら、オアシスを求めて歩き続けていた。


 (水も底をついた…どこか休める場所を見つけなくては…)


 ふと、遠くの方になにか巨大な物が見えた。


 「あれは……」


 それは、明らかな人工物だった。

 あそこなら休めるだろうと、旅人は足を早めた。



 一時間ほど歩くと、かなり近づいてきた。


 (これは……造船所……?かなり大規模だな…)


 ここは砂漠のど真ん中だ。造船所があるのはおかしい。おそらく、古代文明の遺物だろう。

 そんなことを考えているうちに、大きな船が目の前まで迫っていた。

 近くで見ると、やはり大きい。全長100メートルはあるだろうか。

かなり昔のものだろう、その証拠に、表面は完全に錆びており、船体には無数の亀裂が走っている。

 近くの柱に触れてみると、表面はボロボロと崩れた。


 (鉄で出来ているのか…)


 こんなところに船が放置されている理由を考えつつ、造船所の中に入る。

 中は思ったよりもよりも涼しかった。

 天井は殆ど崩れていたが、大きな壁のおかげで日陰はあった。


 (やはり誰もいないようだが……不気味だ)


 人の気配どころか、植物や魔物さえいなかった。

 とりあえずここで休むことにしよう。そう思い、旅人は床に腰を下ろした。

 そしてそのまま寝入ってしまった。



 翌朝、旅人は出発するために、外へ出ようとしたが……


 (うそだろ…)


 出口は崩れて塞がれてしまっていた。


 (他の出口を探さなければ…)


 しかし、この造船所はかなり広い。規模で言えば街1つの分はあるだろう


 (仕方ない、手当たり次第に探すしかなさそうだ。)


 旅人は造船所の中を捜索し始めた。



 (それにしても広いな…それに、船も巨大なものばかりだ…)


 現代では、鉄製の船は小型のものでもかなり高価だ。製鉄技術が殆ど失われたため、大量に鉄を作るのは難しい。金属の殆どは、青銅だ。


 (錆びてなければ大儲けだったんだがな…)


 少しもったいなく感じつつも、奥へ進んでいく。すると、ひときわ巨大な船があった。


 (未完成のようだが…これは…戦艦か?)


 その大きさからして、そうとしか考えられない。

 なにより、中央に備え付けられた巨大な砲塔が、それを証明していた。

 だが……


 (見慣れない兵装だ……なんだこれは…)


 多少港で働いたことがあったが、どんな船にもついていないものがあった。

 船の左右には、青銅製の、鳥の翼のようなものが、3対あり、折りたたまれていた。


 (まさか…船を空に飛ばそうとでもしていたのか…?)


 未完成のようだが、これが完成していれば、きっと猛威を振るったことだろう。

 疑問を抱きながらも、船の中へ入る。


 (かなり暗いな……)


 照明が完全に壊れているため、視界が悪い。壁伝いでゆっくりと進む。

 やがて機関室と思われる場所についた。

 そこには、大量の歯車やパイプがひしめき合っていた。


 (完全に止まっているが…これはなんだ?)


 これも、未完成のようで、制作に使っていたであろう脚立や、工具、観測機と思われるものなどが散乱していた。


 (凄いな…一体何を作ろうとしていたんだ…?)


 精巧で緻密な歯車やパイプが幾重にも重なり、

 それがいかに複雑で高度なものか、素人でもよくわかった。

ただ……


 (機関室と謎の翼だけ…全て青銅で出来ている…何故だ?)


 他のほぼすべてが鉄で出来ていたにも関わらず、それらだけは、青銅で出来ていた。

 ふと、近くのメーターを見た。

 全てのメーターは振り切ったまま止まっていた。


 (ん?あれは…)


 奥の方にある部屋から光が漏れていた。

 扉を開くと、そこには白いローブを着た人がいた。

 顔は見えないが、身長的に女性だろう。彼女はこちらに気づいて振り向いた。


 「あなたは誰?」


 透き通るような声で問いかけてくる。


 「私は旅をしている者です。」

 「旅……?なぜここに来たのです?」

 「それが、道に迷ってしまいまして……」


 正直に答えると、女性はクスリと笑った。


 「そうですか……では、外まで案内しましょう…」


 ―――貴方はここにいてはいけない


 そのように言われたような気がした。


 「どうかしましたか?」


 彼女は心配そうな声色で聞いてくる。


 「いえ……なんでもありません……」


 彼女に連れられ、造船所を出る。

 外に出ると、また暑い風が吹き付ける。


 「ありがとうございました」


 お礼を言うと、彼女は水の入った革袋を渡してきた。


 「これは……?」

 「少ししかありませんが…西に行けば村があります。そこまでには足りるでしょう」

 「本当に何からなにまで……感謝します!」


 そう言って、旅人は彼女に例をすると、西に向かって歩き出そうとしたが……


 気がつくと旅人は最初いた日陰にいた。

 しかし出口は崩れていなかった。


 (夢…?)


 まだ頭がぼんやりとしている。

 手元には、あの時渡された革袋がある。


 (中身を見てみるか……)


 中に入っている水を飲んでみると、驚くほど美味しかった。

 そして、その水が喉を通る度に、身体中に力がみなぎってくるようだった。

 そして旅人は西へと歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ