天空の遺跡
それは巨大な空島だった。
空島というのは決して珍しいものではない。
島や山がダンジョン化したりして空島に変化したものはよく見られる。
だがその空島は金属製の雫のような形をした完全な人工物であった。
「おおきいわねー」
私は上を見上げながら、その巨大な人工物を眺めていた。
およそ6000年、この巨大な空島が造られたのはそれほど昔だという。
まさにオーバーテクノロジー。崩壊以前の文明の遺跡はみなこんなものばかりだ。
文明が崩壊してもなお空に飛び続けられているのは、まさに古代文明の技術様々といったところか。
「さて、調査を始めますか!」
バシュぅぅぅ…という噴射音とともにワイヤーが射出され、ワイヤーの先端についた金具が遺跡の最下部に突き刺さる。
私はそのワイヤーを伝って遺跡へと入っていった。
外壁はボロボロだった。外から見ていたときも気がついたが、穴もたくさん空いていた。
しかしそれは風化により崩れたようなものばかりで、何かに破壊されたようには見えなかった。
(戦争…ではなさそうね…一体何があったのかしら、これほどの文明が突如として滅びるなんて。)
私は調査を進めるためにも、内部へと進んだ。
内部はおもったより風化が進んでいた。所々ヒビも入っている。
主な素材は青銅のようだ。
しかし生物の気配はなかった。
生き物どころか植物や魔物すらもない。
ふと、なにかの気配を感じて近くを見回すと、騎士のような見た目をした、数体の自動人形がいた。
それらの自動人形は極めて精巧に出来ているようで、隙間からのぞく微細な歯車やパイプがそれを作った者達の技術力を表していた。
稼働していた頃は、きっと人と遜色ないくらいに動けただろう。
しかし彼らは床に剣を突き刺したり、剣を振りかざしたりといったまるで先程まで何者かと戦っていたかのような状態でとまっていた。
――しかし、その体には、風化よる損傷しか無かった
(不気味だわ…まるで………)
――ある日突然、時が止まってしまったかのようだ。
私は不気味に思いながらも最奥部へと進んでいった。
やがて最奥部にたどり着いた。
そこには大量の歯車やパイプがひしめき合っていた。
(これは…永久機関!…しかも、まだ微弱ながら動いているようね…)
かなり破損しており、本来の性能はとても引き出せていないだろうが、それでも動き続け、島を支えているそのエンジンに、畏怖すら覚えた。
ふと奥に扉があるのに気がついた。人一人が通れるかどうかくらいの小さな扉だ。
私は吸い寄せられるように、その扉へと入っていこうと思ったその瞬間……
――入るな!!!
何者かにそう言われた気がした私は、入るのをやめて引き返した。
後ろを見ると、そこにもう扉は無かった。
(何だったのかしら…)
結局謎を残したまま私は帰還した。
帰り際に、一体の自動人形とすれ違った。
その自動人形は、全く動いていないはずなのに、
なんだか見送られているような気がした。