表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/61

動き出すそれぞれの思い

誤字脱字の報告、大変ありがとうございます。報告してくださる方のおかげで助かっています。ご迷惑をおかけしますが、今後とも宜しくお願いします。


 予定外のケーキパーティーが急遽開かれ、レンヌは大忙しになった。

焼き上がったそばから飛空艇で運搬するという効率の悪い作業に追われる。


『時間の無駄だ』と思ったレンヌはエルフたちに相談を持ちかけた。

「みんな、聞いてくれ」

 百人以上のエルフたちの視線が集まる中、レンヌは言う。


「残念ながら今日のパーティーはお開きだ。拠点から、いちいち運んでくるのは時間の無駄でしかない」

エルフたちは、待望のケーキを少しだけしか食べていないので不満が続出した。却って、口にしてなければよいのだが、下手に少しだけでも食べたので既にその魅力に落ちていた。


「そこで提案だ。およそ三日後に工業都市をエルフの里の近くに移転する。その街に住めば、好きなだけケーキが食べられるぞ」

「うおおおおお!」

とても女性の歓声とは思えない、迫力に満ちた声が響く。


「みんなケーキが食べたいかああ!」

「うおおお!」

「引っ越しするかぁぁぁ!」

「イエエエイ!」

「レンヌ様、ノリだけで決めないでください。貴方たちも、いい加減にしなさい」


レンヌは素直に謝った。それでも、止まらないレンヌは勢いでアニエスの両肩を掴んだ。そして、叫ぶように言った。

「アニエス。工業都市が移転したら一緒に住もう」

アニエスは、潤んだ瞳でレンヌを見つめている。パーティー会場のエルフたちが騒ぎ出した。

「レンヌ艦長。それでは、まるでプロポーズです」

アルテミス1の声でレンヌは、自分の言葉の意味にやっと気づいた。


しかし、時既に遅し、であった。この機を逃すまい、とアニエスの目が光る。そして、レンヌの胸に飛び込み、強く抱き締めた。

「レンヌ様、嬉しい!」

しまった、とレンヌは思ったが後の祭りである。

そこへイネスが加わった。

「レンヌ様、イネスも一緒に住みます」

ここまで言われては、レンヌも断ることができない。

「わかった、一緒に住もう」

アニエスとイネスは、正面から両手を繋いで喜んだ。


パーティー会場からは歓声と悲鳴が飛び交う。最長老のネメシスがすかさず歩み寄る。

「レンヌ様、私は最長老として三人の結婚を認めます。しかし、正妻は族長のアニエスにしてください」

 ネメシスがレンヌに見えないように二人にウィンクした。二人は小さく頷く。


こうして有耶無耶の内に勢いだけで、レンヌのもとにアニエスとイネスが嫁ぐことが決まった。

『どうして、こうなった?』

とレンヌが首を捻る傍で、アニエスとイネスは囁いた。


「上手くいったわね、イネス」

「アニエスの機転のおかげよ」

「イネスの反応も良かったわ」

「最長老のアシストもあったしね」

二人の思いをよそに、実はレンヌも喜んでいた。


『エルフの美女を一度に二人もお嫁さんにできるなんてラッキー』

一人は絶世の美女で巨乳を極めたエルフの族長、そしてもう一人は、族長の従兄弟なので同じように美しい上に、凄くクビレた腰と美脚を持つ戦士長である。


『レンヌ艦長、やりましたね。正に棚からぼた餅です。おめでとうございます』

『ありがとう、アルテミス1。エルフたちの住居の用意を頼む』

『了解しました。エルフたちの意見を取り入れて建築します。もちろん、新婚夫婦の家も』

『それでいい。後は任せた』




 レンヌが浮かれていたその時に、リール王国の王城にある特殊諜報部隊専用の鳥小屋に一羽の鳥が降りた。すぐに宰相のフロスの下に連絡文が届けられる。

『ミュウレ帝国のマルタ宰相が、自らロワール王国に向かったのか』

 フロスはマルタの考えを推測した。


 ミュウレ帝国のドンガ帝王は、まだ若い。そのために血気盛んだ。去年は北のクラム王国を陥落させて属国化した。その前の年も他国に攻め入っている。

次は当然、我がリール王国に目を向けるだろう。マルタ宰相がドンガ帝をどう扱うつもりなのか。フロスは気懸かりだった。


 この大陸は中央を南北に割って、東の大国「グランダム皇国」と西の大国「ミュウレ帝国」が隣り合わせている。長い国境線には互いの城や砦が多く配置されて牽制しあっていた。もし、離れていたら、どちらかが大陸統一に動いただろう。しかし、隣り合わせているせいで現状では、互いに大きくは動けない。


 ロワール王国との間に白壁山脈が存在していたので、どうする事も出来ない状況だった以前とは違う。その一部が消失した現状ではミュウレ帝国の狙いがロワール王国に向いても不思議ではない。

 問題はロワール王国が現状をどう捉えているかだ。ロワール国王は優柔不断で暗愚との噂がある。息子の王太子は政治よりも金儲けに夢中だと特殊諜報部隊のクラインから報告を受けていた。

 親子揃って危機感を抱いていない事も考えられるが、あそこのブロッケン宰相は切れ者と評判だ。上手く持ちかければ、現在結んでいる通商条約に加えて『同盟』も成り立つかも知れない。


 フロスは、ミュウレ帝国のマルタ宰相の動きとロワール王国のブロッケン宰相の動きを調べるようにと、新たな命令をクラインにだした。

 



 一方、ミュウレ帝国ではドンガ帝が荒れていた。国境線に近いグランダム皇国の城のひとつで動きが有ったからだ。対抗するミュウレ帝国の城から頻繁に連絡鳥が飛来してくる。

人の動きや食料の動きを知らせて来ていた。

 国境線と言っても壁や柵がある訳ではない。せいぜい兵士が見回る程度だ。しかし、長大な国境線を完全に監視するのは不可能である。夜陰に乗じて密偵が互いの国を往来していた。


「おのれ、忌まわしいグランダム皇国め。あいつらが動く度に、こちらも対抗しなくてはならぬ。そのせいで、せっかく通じたロワール王国との道を、宰相の言う通りに交易などに使わねばならないとは口惜しい」


 だが、ドンガ帝は諦めている訳ではない。機会があれば侵攻したいと思っていた。いきなり軍をグランダム皇国と反対側のロワール王国側に集める事はできない。そうなれば、手薄になった西の国境線が危なくなる。


 だが、南のリール王国なら話は別だ。軍を南に集めても、いざという時は軍を西に動かせる。それだから、去年はクラム王国に攻め入ったのだ。宰相も反対しなかったから問題は無いのだろう。要は動かす軍の数と場所である。ドンガは戦場に立つ自分の姿を思い浮かべた。


 大陸中を吹き荒れた戦争という名の多くの嵐は、今は収束に向かっている。グランダム皇国とミュウレ帝国という二つの嵐だけになろうとしているのだ。戦争には大量の兵糧を必要とする。南の国には穀倉地帯が多い。それだけに南の国を多く属国にした方が有利になる。宰相のマルタも食料が増える事には反対しない。むしろリール王国への侵攻は、前向きに考えているくらいだ。




 だが、その目論見は、四日後の早朝に崩れる事になる。

 白壁山脈の南端に、一夜にして巨大な都市が現れたのである。ロワール王国との国境にできた更地に常駐して、国境警備をしていたミュウレ帝国の東砦の警備隊員。そして、リール王国の国境砦の兵士は自分達の目を疑った。特にリール王国の兵士は自国の王都に匹敵するような巨大な都市の出現に度肝を抜かれた。そして、その報告は連絡鳥と早馬の両方で二つの王城にもたらされた。



「馬鹿な! 有りえぬ」

 リール王国のスレイン国王は両の拳を握りしめた。昨日まで何も無かった更地に、突如として巨大な都市が現れたと言うのだ。しかも、それが自国の王都並の都市だという。信じられる訳がなかった。

 だが、次々に報告に来る早馬からは、間違いなく存在しますと言う言葉しか聞けない。三人目までは信じなかったスレイン王も、四人目の報告を聞いた時点で、ガクリと首を落とした。


 連絡を受けたリール王国のフロス宰相は王の部屋に飛び込んだ。

「陛下、真でございますか?」

「うむ、間違いない。既に六人もの兵士が早馬で報告してきた」

「ううむ、信じられぬ。どんな魔法を使ったのか? 果たしてそんな魔法が存在するのか」

「陛下、ちょうど、ロワール王国のトリニスタンに我が国の密偵が行っております。至急、調べさせます」

「お、そうか。それは都合が良かった。すぐに頼む」

「はい。それでは、私はこれで」


 フロスは連絡鳥を飛ばした。

「ミュウレ帝国のマルタ宰相とロワール王国のブロッケン宰相の調査命令は破棄する。大至急白壁山脈の南端に出現した巨大な都市の事を調べて報告せよ」




お読み頂きありがとうございます。

下にある☆☆☆☆☆から評価を頂けると嬉しいです。つまらなかったら☆一つ、面白かったら☆五つを頂けると作者の執筆の参考になります。もちろん、正直な感想で大丈夫です。良ければ『いいね』もお願いします。

そして、この作品を『ブックマークに追加』してもらえると作者が物凄く喜びます。今後とも宜しくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ