ぎざぎざのおおかみ
ぎざぎざです。
おれは ぎざぎざのいっぴきおおかみだ
きばも ぎざぎざ
みみも ぎざぎざ
もみあげとせなかのけも ぎざぎざ
おまけに しっぽまで ぎざぎざだ
みんなはのこぎりみたいな
おれの ぎざぎざをいやがって
だれもそばになんていてくれないから
いっしょに ハムサンドをたべたり
いっしょに すきなはなのことをおしゃべりしたり
いっしょに すきなほしのうたをうたえる
そんなあいては きっとどこにもいないって
こんな ぎざぎざのおれは ちゃんとわかってた
だから きょうも
そして たぶん ずっと
おれは ぎざぎざのいっぴきおおかみだ
それでよかったし そんなもんだとおもってた
なのに
あっちのほうから やってきた
おまえも ぎざぎざのいっぴきおおかみだった
おれたちは のこぎりみたいな
おたがいの ぎざぎざをいやがって
そばにはちかづかないようにしてたんだけど
なんてことだ!
こんなことってあるもんなのか!?
おれたちの ぎざぎざはたがいちがいで
そのとんがりとへこみが
ななめのじぐざぐが
パズルみたいにぴったりあわさったんだ
いっしょに ハムサンドをたべたり
いっしょに すきなはなのことをおしゃべりしたり
いっしょに すきなほしのうたをうたえる
そんなあいては きっとどこにもいないって
こんな ぎざぎざのおれは そうおもってたのに
たぶん ぎざぎざのおまえも そうおもってだろうに
だけど きょうからは
おれたちは ぎざぎざのにひきのおおかみだ
いっしょに ハムサンドをたべて
いっしょに すきなはなのことをおしゃべりして
いっしょに すきなほしのうたをうたうんだ
おれは はじめて
じぶんが ぎざぎざでよかったって
こころからおもった ほんとのことだ
ところが
ぴったりあわさってたはずの
おれたちの ぎざぎざは
ちょっとずつ ずれはじめてしまった
たがいちがいの
そのとんがりとへこみが
ななめのじぐざぐが
パズルみたいにぴったりあわさっていた
そのはずの おれたちの ぎざぎざは
のこぎりみたいに ちくちくしだしたけど
それでも おれたちはいっしょにいたんだ
なぜなら
おれたちは ぎざぎざのにひきのおおかみだから
そのために
おれたちの ぎざぎざの
とんがりとへこみと
ななめのじぐさぐが
また パズルみたいにぴったりあわさるように
おれは なんとか
ぎざぎざのむきをかえてみたり
ぎざぎざのかずをへらしてみたり
おれたちがまだ ぎざぎざのにひきのおおかみのままで
いられるように
おれがまた ぎざぎざのいっぴきおおかみに
ならないように
だから
おれたちの ぎざぎざがぴったりあわさるように
おれの ぎざぎざをどうにかしてやろうって
そんな ばかなまねをしちまった
そしたら
おまえは いったんだ
——じぶんの ぎざぎざが
じぶんの ぎざぎざじゃあなくなってまで
いっしょにいなくてもいいじゃないか
しんぱいすんな
きっと またおれたちは それぞれ
ぴったりあわさる ぎざぎざのあいてに
いつか であえるはずさ
それから おれたちはさいごに
いっしょに ハムサンドをたべて
いっしょに すきなはなのことをおしゃべりして
いっしょに すきなほしのうたをうたった
だいすきだって いっぱいわらったあと
だいすきだったのにって いっぱいないて
そんで さよならをした
おれはまた ぎざぎざのいっぴきおおかみになったし
おまえもまた ぎざぎざのいっぴきおおかみにもどった
おれたちは
じぶんの ぎざぎざが
じぶんの ぎざぎざじゃあなくなってまで
いっしょにはいられなかったんだ
おれは ぎざぎざのいっぴきおおかみだ
きばも ぎざぎざ
みみも ぎざぎざ
もみあげとせなかのけも ぎざぎざ
おまけに しっぽまで ぎざぎざだ
みんなはのこぎりみたいな
おれの ぎざぎざをいやがって
だれもそばになんていてくれない
だからやっぱり
おれは ぎざぎざのいっぴきおおかみだ
もうにどと あんなきもちになれはしないだろうし
もうにどと こんなきもちにはなりたくないから
おれは ずっとこのままでいい
だから きょうも
そして たぶん ずっと
おれは ぎざぎざのいっぴきおおかみだ
それでよかったし そんなもんだとおもってる
おれは ぎざぎざのいっぴきおおかみだ
あきらめてます。