〜1章〜【南の森へ】
レギオンからは数名の冒険者が集まり、シラードもついてきてくれるみたいだ。荷物に関しては食料から武器まで充分な量を支給してくれた。荷物をもつ冒険者もいて、彼らはボックスのスキル持ちであった。
驚いたのは魔法の概念がある事だ、冒険者の中にはスキルの他に魔法も使えるものがいて、自分の属性に合った魔法が使えるらしい。それに武器にも魔法が付与され、スキル以外にも様々な能力がある事が分かった。
南の森へはシラードが案内してくれる様であった。俺とノアとミルキーが出会った森であるが、魔女がいるとなるとなんだか不思議な感じがする。あんなに心地よい木漏れ日があるような森のはずだったが。
「ここからが南の森です。森の魔女は神出鬼没で、記憶を操ると言われています。気を引き締めていきましょう!」
森の中へ入ると不思議と不穏な気配を感じた。気持ちの悪い風だ。ミルキーは俺の肩にのり、周囲を気にしてくれている。進んでいると1人の兵士が現れた!
「た、助けてくれ、、、あれは知らない、わからない」
シラードが近づいて介抱する。
「フィンネル騎士団の鎧だ、団長と一緒にいた方ですよね?他の人たちはどうしたんですか?」
「あぁ、、俺たちは魔女を見つけて、あと一歩の所まで追い込んだんだが突然味方が倒れ始めて、、、気づいたら団長が魔女とは別の方向に走って行ってしまったんだ。魔女じゃない何かがいる」
魔女じゃない何か、魔物の類だろうか?団長は何かに気づいて1人で挑みにいったのだろうな。とりあえずは魔女を探すか。
「シラード!他にも傷を負っている者がいるかもしれない、ここに拠点を作って助けに行こう」
俺はシラードとミルキーと何名かの冒険者と共に、手負の兵士が来たという方角へ進んだ。森の中を進んでいると木々が生い茂っているためか、すこし暗くなってきた。すると、ミルキーが助言してくれた。
「なんだか暗いわね、クロ、この周辺からは魔物の気配がするわ!集中した方がいいわ!」
いよいよ魔物の登場かな?神経を集中させながら、森の中を進む。目の前に少し開けた場所が見えた。そこには数名の倒れた兵士がいる。シラードは走ってその場所へ寄り、生存者がいないか確認している。
「みんな傷は負ってるけど、致命傷では無いですね。脈はありますし、寝ているみたいな感じです」
なるほど魔女以外に、催眠系のスキル持ちがいるみたいだな。効果がわからないうちは周囲に気をつけていよう。俺たちは兵士たちを担ぎ、拠点へ戻ろうとした。
その時、周囲からおぞましい顔をしたゾンビ?が数十体現れた。
「あれはグールです!魔女に操られた人の成れの果てです。兵士たちを安全に避難させるためには僕がおとりになります!」
そういってシラードはグールの群れに走っていった。
1人であの数はきついだろうに。俺は他の冒険者に兵士たちを任せシラードの後を追っていった。
「無茶するな!俺も戦えるから一緒にやろう!」
シラードは俺の顔をみて笑った。
「助かります!でも、下がっていてください!」
そういうとシラードは目を閉じ、何かつぶやいた。風が吹き始めたと思った瞬間、シラードは騎士の鎧をまとっていた。正直に言うと、めっちゃカッコいい。
「僕のスキルは鎧をまとうだけなんです。ですが、普通の鎧と違って耐久性はあるので囮として充分活躍できます」
鎧をまとったシラードはグールの群れに突っ込んでいった。そういうスキルもあるのだな。俺は負けじとグールに向かってブラックボックスを連発した。グールのスキルは腐食耐性のスキルらしい。何匹も収納し抹消していく。シラードも騎士団の名に恥じない戦いっぷりだ。
「これで最後の1匹だ!!」
グールの群れを倒しきった。意外とブラックボックス使い勝手がいい。人型くらいの大きさは集中するだけで収納できてしまう。
その後、仲間からの伝令で無事に拠点に着いたとの事だった。俺とシラードはそのままグールの残党がいないか捜索した。グールの残党は見つからなかったが、魔女の痕跡を見つけた。魔女は移動する際に魔法陣を残すらしく、最近移動したであろう魔法陣が見つかった。冒険者の中には追跡が得意なものがおり、痕跡をたどって洞窟の前まできた。おそらくこの中に魔女がいる。
「魔女は負傷しています。ここで討ちましょう!」
そういって俺とシラード、冒険者達と洞窟の中へ入っていった。