〜1章〜【風の都フィンネル】
神殿を出た後、俺たちは次の目標を決めていた。それは人間の住む都に行く事だ。ノアの話だと森を抜けた所にフィンネルという人間の住む都があるらしい。
森を抜ける間にノアから色々話を聞く事ができた。
この世界はかつて光と闇に分かれており、それぞれ陣営を組み戦争をしていた時期がある。光と闇属性は加護という形で属性を付与する事で眷属にできるようだ。だが光と闇属性だからといって誰でも加護を与えられるわけではなく、神や種族で言う上位者のみにその力は与えられているらしい。かつての戦争はその力を使って神々をも巻き込む、まさに天変地異を引き起こすほどの戦争だったらしい。結果は光側が勝利したみたいだが、その後の事はノアは知らないそうだ。
「異世界に転移したって事は何かしらの使命があるもんだよな〜。なんかまた戦争が起こったりして?」
俺はふざけてそう言ってみるも、ノアは落ち着いた顔をして空を見上げ、ため息をつくように、
「戦争は今は起こらないはずよ、私たち神々が管理してるもの、、、」
心地よい風が木々の間から流れてきた。
「ニャオーン!!!」
目の前から光が差し込んでいる。そうしてやっと森から抜け出すことができた。すごく広い平原だ。目の前には巨大な風車がたくさん並んでいる。風が気持ちいい。風の都と言われているだけの事はある。平原の奥の方には巨大な壁に囲まれた要塞が建っているようだ。
「あそこに見える壁の中がフィンネル城ね。私がいた時は生意気な小僧、あっ王様がいたけど、何やかんやで領民には優しい人だったわ。それにしても静かね〜。もっとにぎやかで、風と共に陽気な音楽が聞こえてきたものだけども。」
ノアの言う通り風車のそばには家が建っているが、人の気配はない。家の中に入ってみるも生活感は感じられず。人は住んでいないようであった。
「何で人がいないんだろう?城の方にいるのか?」
そのまま風車の間を抜け、要塞の門まで進むと門の向こうから重厚な鎧を着た兵士達が近づいてきた。
「止まれ!何用でこちらに来た?」
ものすごい圧力だ。人に会えたのは嬉しいけど第一印象が大事ってよく言うからな。誤解を与えないようにしなければ。
「私は旅の者です。森の中を抜けてここに辿り着きました。良ければこちらに入れていただきたいのですが?」
無難に言葉を選び伝えてみる。
「あの森を抜けてきたのか!?あの森は魔物が現れるようになってな。お前はそこから来たのか?そんな変な格好で?怪しいな。どこの出身だ?言ってみよ!!」
兵士は俺に槍を突きつけてきた。これはまずい展開だ。俺は森の中に転移し、白い猫を助けたら女神にあって今にいたるなんて事を言って信じてもらえるのだろうか。そんな事を考え困っていると、
「ニャーオー?」
どこに行っていたのか、ミルキーが鳴き声をあげながら走って寄ってきた。まさに猫の手を借りたい状況だが。驚くことに、兵士達は顔を見合わせ何やら小声で話している。これはいよいよまずい事になったかもしれない。魔物と勘違いしてないか?そしたらややこしくなるぞ。しかし予想外な反応をしてきた。
「神の使いでありましたか!ご無礼をお許しください」
兵士たちは膝をつき敬意を示している。俺では無くミルキーにだ。確かに女神の場所も知っていたし、ミルキーは動物の中でも神の眷属か上位種の何かなのだろう。ひとまず何とかなりそうだ。するとノアが俺の耳元で教えてくれた。
「白い動物は神から加護を受けているのよ。ミルキーちゃんも私の特別な加護を与えているから、神の眷属って位置づけね!人間からしたら神と等しい者なのよ」
なるほどやはりそうだったのか。そういうのは早く言ってほしいな。確かに俺はミルキーについて何も知らなかったが、この世界に来てから助けてもらってばっかりだ。
「お付きの方もどうぞ中へ入ってください。まずは我がフィンネル騎士団の副団長に会ってほしい」
副団長か、うまく話せれば最初の国でいきなり王に会う事ができそうだな。異世界らしいじゃないか。王と話しができればこの世界の現状について知ることもできそうだし、神の使いとしてこの国でゆっくり休めそうだ。
そうして俺は異世界転移して、初めて人間の住む国へ入って行くのであった。