終着駅
壊れた人間の取る行動なんて大体一つだ。
「…死ぬか。」
これまで必死に生きてきた。
家族に捨てられても。
クラスメイトから虐められても。
その結果学校を辞めることになっても。
それでも。
バイトを掛け持ちしながら定時制に通い高校を卒業した。そして地元の企業に何とか就職してそこでも虐めを受けながらも3年間務めてきた。
どんなに理不尽でも、みっともなくても人生にしがみついてきた。生きるために。
でも、それも今日までだ。
「…今まで、よくやったよな…俺。」
ふら付く足取りで駅に向かい、改札を通り抜ける。
ICカードの残高が無かったのか、改札に引っかかったような気がするがそんなことはもはやどうでも良い。
俺の人生は呪われていた。と言う以外に表現のできないほどにやる事為す事がすべて裏目に出てしまう。誰かを助けようとすれば逆に追い込んでしまったり、仕事も頑張れば頑張るほど周りに疎まれる。もう限界だった。
独りになりたかった。
誰からも。世界からも。
「まもなく、特急電車が通過致します。黄色い線までお下がりください。」
アナウンスがそう告げる。
ホームの端までふらふらと歩いていく。
「きゃっ」
誰かとぶつかったようだ。
なんだか自分と世界に一枚フィルターが掛かったようにすべてが他人事に感じる。
ホームの上から覗き込む線路は、なんだかとても輝いて見える。
ああ、ここに飛び込めばもう独りになれるのだ。誰とも関わらずに。世界からも。
警笛が聞こえる。俺の旅立ちを祝うファンファーレのようだ。
電車が迫ってくる。
俺はゆっくりとホームから一歩踏み出す。
電車とぶつかる。その瞬間、
「だめえええええええええええっっ!!!!!!!」
なにかが俺の身体に抱き着いてきて。
それでも重力には逆らえず、俺とその抱き着いてきた“何か”は揃って電車にぶち当たり。
独りの男と“何か”は共にこの世界から旅立ったのだった。
トマト。