epilogue とある少年の始まり
夢を見た。変わった夢だった。
銀髪の少女がいた。長い髪の少女がいた。
見覚えはない。知らない顔のはずなのになんだか懐かしく、会いたいと思うってしまうのは何故だろう。
ピリリリリリ。
目覚まし時計が鳴る。布団にもぐったままけたましい音のなる時計へと俺は手を伸ばすした。周辺をまさぐって俺はなんとかアラームを止めることに成功した。
「ねむっ」
よくわからない夢のせいでよく寝れたとは言えない。けれど起きなければ朝食の時間が消える。今日は学校だ。二度寝するわけにはいかない。
眠気を訴える体に鞭をうちながら自室を出て顔を洗う。リビングに行くととうに朝食は出来上がっていてバターの乗ったトーストとサラダが机に置かれていた。
ふとリビングで流れたままのテレビを見る。いつもこの家でつけている朝のニュース番組からは世紀の大発見だとかなんとかで遺跡の特集が流れている。
「ノアの箱舟、か」
テレビから流れてきた単語を何気なく口にする。妙に引っかかりを覚える言葉だ。そういえば夢の中で船に乗っていたような気がする。夢の内容は寝起きに比べたらさらに朧げろない、ほとんど思い出せない。
ただ、なんとなくノアという言葉が気になった。
ニュースに耳を傾けながらも椅子に座り、朝食に手をつける。
アナウンサー曰く、船からは大量の昔の本が出てきたとかで今は調査中だという。どうやら大昔の言語で書かれているらしいそれらは内容の解読までには時間がかかりそうだとのことだ。
なんとなく、なんとくなけれども妙にその遺跡が心に引っかかる。
何か大事なものがそこにあるような気がした。一体どこにあるんだろうと、トーストを齧りながら俺は画面を見た。
「あれ、国内じゃん」
思ったよりも遺跡は遠くないみたいだ。せっかくだし、幼馴染の二人を連れて旅行がてらにちょっと行ってみるのもいいかもしれない。
もぐもぐと朝食を食べながらそんなことを思案する。
そうこうしているうちに家を出る時間が迫ってきた。やばい、やばい。
食器を洗い、歯磨きをして制服に着替える。
「いってきまーす」
声をかけて外に出る。晴天の空の下に俺は飛び出す。これなら走らなくても間に合いそうだ。
『いってらっしゃい』
思わず俺は後ろを振り返った。
一瞬幻が見えた気がした。夢で見た少女が俺を見送ってくれる幻覚。
「いや、まさかな」
そんなわけがないと俺は頭を振った。
それよりもいつもの待ち合わせ場所にいるであろう幼馴染のもとに行かなくては。
青い空の下、暖かな風が肌をくすぐる。
今日も俺は生きる。
この平和な世界で。
最後までご覧頂きありがとうございました。
終末世界、それから好きな人のために頑張ろうとする少女のお話が書きたくて書いたものです。
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