第1話 異世界転移のカギはル〇バだった?!
ノリと勢いだけで作った、プロットなしでストックもない作品ですが、どうぞよしなに。
現在、午前8時25分。某・都立高校の1年6組にて。
──ガラガラー。
俺が教室のドアを開けたとき、中には人ひとりもいなかった。
「……は?」
そして、教室の中心から半径1メートルほどまで虹色の幾何学的な紋様の──いわゆる、魔法陣的な「ナニカ」がそこにはあった。
「……え? ……え?
な、なんだよコレ……何がどうなってる!?」
意味不明な出来事を目の前に、俺は急に不安がおしよせてきて、声を荒らげてしまう。
が、今それをするべきコトではないと本能的に感じとり、自身の動揺を少しずつ収める。
「ハァ……ハァ……フゥ。うしっ」
現状を整理するため、目をつむって頭の中をフル回転させる。
(──そう、今は朝礼直前の時間。すなわち朝だ。
となれば、生徒もほぼ全員そろっているハズ。
だのに、ナゼ生徒のひとりもいない? おかしいだろう)
目を見開き、魔法陣的な「ナニカ」に視線をうつす。
(考えられるのはあの魔法陣的な「ナニカ」。
というか、ソレしか考えられない。
つーことはまさかの……異世界転移? ハハッ、ないか)
自身の趣味であるラノベでの出来事を真に受けすぎだろうか。
さすがにソレは……いや、ありえるか?
…………。
まぁ、だとすれば、だ。
俺にも憧れの異世界転移ができるかもしれない、というコトだ。
だが、考えても見て欲しい。
もし、普通に「異世界転移してみますか?」と聞かれたら、「え、ムリ」と答えるのが世の常識だ。
それはオタクで異世界系が大好きな俺にも当てはまる。
うん、
なにせ異世界──アチラでは完全にアウェーすぎる。
だってさ、
異世界の言語はわからない、地理もさっぱり知らない、頼みの綱である親戚もひとりもいない、そして──コチラの世界以上の「脅威」がいるかもしれない。
ま、ざっとアゲただけでもコレだし、ね?
ましてや
考えただけでも背筋がゾワッとするわ。イヤだわぁ……。
(みんな大丈夫かなぁ……? 元気でやってるといいけど)
そんなこんなと思考にふけっていると、虹色の魔法陣的な「ナニカ」が突然ヒカリ出した。
(え)
「オイオイオイ、どーゆーことだよ、コレはァ!?」
(ホワッツ?! ナニコレェ!? もうヤダァ!!)
せっかく現状を整理し、頭を落ち着かせていたトコロでのコレだ。頭パンクしそう。
さらにヒカリは強くなっていき、魔法陣的な「ナニカ」を中心に吸引力が働いてゆく。
「んな!? テメェ魔法陣!! ル〇バかよ!?」
死んでも異世界転移なんぞ(なんぞつっちゃった☆)したくなかった俺は、足をふんばり、机をつかんだりして抵抗するが、効果はまったくのナシ。ひどい。
(く、クソっ! ふざけやがって!!
リアリスト(自称)の俺からすれば、異世界転移とか転生は創作の中だけにして欲しいんだよ!!
俺はラノベの中で見るだけでいいのっ!!
だから吸い込もうとすな、この魔法陣型ル〇バァ!!
テメェは全自動お掃除ロボットか?! そうなのかァ?!)
ル〇バの吸引力はさらに上がってゆく。なぬ?!
(!? 吸引力が上がった、だと?! 最新型なヤツか!?
よう知らんけど!!)
「ぐっ、おぉ!? 吸い、こま……れ……るぅ……っ!」
魔法陣的な「ナニカ」まで残り3メートル。
俺は必死に抵抗する。だって死にたくないもん。
俺の中で異世界転移、転生はイコール死だから。これ常識。
あ、テストでも出るからね? うん、多分だけど。
「う、おぉ……! や、やめるんだっ、ル〇バァアアア!!」
またも必死になって叫ぶ。それはまるで狂乱しているかのよう。
その姿はとてもぶさまだった。え、どんな姿だって?
残り2メートル。うわぁお。すぐそこやん。
(うぉ!? もうすぐソコじゃん!? ヤベェ!!)
それはね、
残り1メートル。
「ふんぬぅうううううううううっっっっ!!!!」
目は充血し、口はへの字。体勢は四足歩行で尻は出す。
うん、ぶざまだね。いっそのコト置き物にすれば?
目立つかもよ? いろんな意味で、だけど。
自分で言っちゃった。てへっ☆
俺はそんなくだらないコトを考えながら地面をガリガリと引っかき、最後の抵抗をこころみる。
が、
(あ)
「あ」
──スポンっ。
俺はまるでル〇バがゴミを吸いとるがごとくスポンっという音を立てて吸い込まれていったのだった。
コレが俺の異世界での生活が始まった、キッカケの話。
え? なに? ならコレを話してるのはダレだって?
ハハッ、んなモン決まってるじゃん。
未来の俺だよ、お・れ☆
さぁ、楽しい地獄へようこそ、俺よ!
ま、せいぜい今の俺ぐらいくつろげるよう、ガンバレ!!
──グッ!
なんでこうなったんだろう……(自問自答)。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。