第57話 受注クエスト:薬草収集①
(……なんでこうなるんだよ!!)
攻略メンバーの5人は、日本列島の上空を北上中。けれども、当の本人は、不満でいっぱいだった。
なぜなら、彼女が作った薬草用の巨大運搬船の中に、4人が入ってくつろぐのに対し、ルグアはそれを真下で支え、飛んでいるのだから。
東京から北海道まで、直線距離1000Km。手ぶらならまだしも、荷物持ちかつ、遠距離移動なので、速度制限がかかる。
ましてや、人×4が乗っている分、疲労が溜まりやすい。まあ、彼女には、関係ない……はずだったのだが…………。
「言っとくが、私はお前らの乗り物じゃねぇからな!! それだけは、しっかり…………」
「わぁ〜、皆さん、ここの隙間から外が覗けそうです。とても綺麗ですよ〜。ほら、藍さんも、こっちです!!」
「すっご〜い。ガロンちゃんの言うと〜り〜。りんりん、もう少し眺めさせてよ〜」
「たしかに、ガロンの発言は間違えでは無さそうね。こんな景色は、久しぶりに見たわ、『コスモスレーシング』以来かしら?」
まず聴こえたのは、運搬船内の女性陣。ルグアは、残るたった1人の男性に期待していると……、
「ほらほら、ノアンさんも!!」
「本当に、美しい景色。特に海がとても澄んでいます」
「おい!! 少しは人の話を聞きやがれ!! 私は、風景を楽しむ暇はないんだよ!! 気持ちを考えろ!!」
期待していたのが、悪かった。仲間は満喫、私は苦労が募るばかり。
まあ、楽しんでくれるのは、嬉しいこととして、捉えることにして、10mほど高度をあげる。
それが長く続かないのは、ルグアと藍だけが、知っていた。つまり、他3人は地獄に…………。
◇◇◇北海道・南◇◇◇
「さ、寒い……」「寒いです〜」
「今にも、凍え死んでしまいそうだわ」
飲まれてしまったのである。この場所では、〈かくれ雪草〉が採れるエリアが存在。
ただし、名前に”かくれ”という言葉入っているように、見つけるのは容易ではない。
それにも関わらず、見つけてしまうのが、【アンゲームブラスター】ルグアだった。
――ズボッ!!
積もった雪は柔らかく、気付けば至る所に、かまくらやら雪だるまやらがたむろする。
改めて説明するが、この場所に遊びに来たのではない、クエストの依頼に応えるために来たのだ。
結局、ルグア1人に人任せ。黒髪の少女は、メンバー選びに後悔しながら、勘で決めた場所をただただ掘り進める。
雪深い穴は、暖かいが、掴んだ雪は外に放り出す。登るとたまにずり落ちるものの、気にせず作業に集中。
騒がしい仲間の声を、BGMにして…………。




