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第31話 歩くダンジョン

「ふわぁーう〜……うぅぅ……ん」


 大きなあくびをしながら、起き上がる。現在のHP残量は、3,755,790。まだ余裕はたくさんある。


 全損予想時間を40時間としたが、定期ヒールを使えば家が完成する頃まで問題無さそうだ。


「じゃ、早速行くか……」


 誰もいない火山地帯では、声を出すも出さないも自由。


 テントをストレージに入れ、昨日見つけたダンジョンへ移動する。


 地面には噴火口、空からは火の粉。吹き出すのは、アーチ型の炎。輪を潜り目的地に向かう。


 だが、その場所に建物はなかった。熱風を頼りに道なき道を進む。


 時々、立ち止まり方向を確認。横切る荒れ荒れしい強風が、右から左へ。


 勘で着いた祠の場所は、北東の突き当たり。業火を纏い行く手を阻む。


 炎に焼かれ、HPが半分まで急激に減少。熔岩の海を泳ぎ、減り続けるゲージに注意する。


 向こう岸へ渡り、辺りを見回すと、数え切れないくらい大量のゴブリン。


「んじゃ…………、容赦、手加減無しで…………」


 氷が溶け元通りになった羽根は、炎の翼に変化して、火の鱗粉を撒き散らした。


 ゴブリンは、団体戦に持ち込み、私の動きを封じるが、回転斬りで剥がす。


「このゲーム、大衆攻撃がほとんどなんだな……、きっと。ってことは」


 私のゲーム勘は良く当たる。当たりすぎるくらいほんとに当たってしまう。


 なので、運ゲーはゲーセンでも家庭用ゲームでも、必ず出禁。


 違法系ギャンブルは、今に至るまでにざっと1600人は負かしてる。


 ちなみに、ゲーム内の収入は興味ないので、現金化できても賭けたお金は、対戦相手に返した。


 そうこうしているうちに、敵は少なくなり、武器スキルのおかげなのか、自身のHPは回復。


 いよいよボスに挑戦。ボスはゴーレムより大きなゴブリン。なんだかな……、失笑レベルの設定だ。


 敵は、そろそろ離れて突進してくる。正面でガードの体勢をとると、その通りにゴブリンが行動。


 だが、相手は攻撃せずに私を抱き上げた。理由はわからない。高い高いと振り回す。


 ゴブリンに遊ばれ、だんだん気持ち悪くなってきて、漏れ出そうな嗚咽と嘔吐感に耐える。


 ゲームでこうなったのは、初めてで、VR酔いというよりは、VRアトラクション酔いだろう。


 どう見てもアトラクションではないが。やっと、地上へ返したゴブリンは、疲れ果てて寝転んだ。


 こんなボス戦はボス戦ではない。少女は、酔いで千鳥足状態。


 20分ほどでデバフが解除され、最奥の宝箱を開けると、中にはゲーム内通貨や装飾品。


 なぜか分からないが、テイムアイテムらしき、カプセル型の筒。


 試しに寝ているゴブリンに投げる。パカッと開いたカプセルに吸い込まれた。


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