第29話 学友の種族を超えた絆と、ルグアの噂
――ドゴォン!!
勢い余って城に激突。今までにない激痛が走った。私は、瓦礫をどかし外に出る。
『ねぇ、外の大きな音しなかった?』
4分の1が崩壊した城内から聞こえる、女性の声。
(まずい!!)
急いで物陰に隠れて様子を伺うと、出てきたのは、ドワーフとヴァンパイア。
きっと、多族同盟軍だろう。吹雪く風に意識を集中させると、人族や獣人の気配を感じる。
どうやら、私と同じ妖精族のエルフはいない。気づかれないよう、吹雪に紛れて物陰から出た。
『あれ? あそこにいるのってりんりんじゃな〜い?』
遠くから聞き覚えのある声は、だんだん大きくなり、振り向くと幼なじみの姿。
「やっぱり、巣籠んりんだ〜!! 久しぶり〜!! 元気してた〜? 藍だよ〜!!」
軽快な口調でくっつき、道を塞ぐ。そんな彼女に、
「いきなり何すんだよ。久に会えたのは、私も嬉しいが……。今は邪魔者にしか見えねぇ……」
やはり、ゲーム内ではリアルの話し方ができない。そのため、
「りんりん、人違いじゃないよね〜?? 本物のりんりんだよね~?」
疑われてしまった。この時に役立つのが、プレイヤー情報。メニューを開き確認してもらう。
プレイヤー名:巣籠 明理
Lv.2
性別:WOMAN 種族:妖精族
ジョブ:エルフソードマン
国民番号:005791871
HP:3,955,790
ATK:2,014,940
DEF:1,995,380
MAT:2,051,262
MDE:1,566,370
レベルが1つ上がっていた。証明書と同じ役割の、ステータスを見た藍は、
「本人なんだぁ〜、性格が違うから赤の他人だと思った……。そういえば、りんりんのMPNなに〜?」
訳も意味もわからない英語の文字。予想ではあるが、『メインプレイヤーネーム』だと思う。
「ルグアだ。自分で言うのもあれだが、例の凄腕タイムアタッカー」
聞かれたら名乗る。VWDLでの円卓の役目は終わっていない。別ゲーだろうが、任務は果たす。
いつの間にか、集まってきた元クラスメイトの1人は、私を指さし、
「噂の異名プレイヤーですよ。確か、【アンゲームブラスター】のルグア!!」
はっと思い出したかように叫ぶ。まさか、裏でこう呼ばれていたとは、想像もしていなかった。
他のみんなも、
「明理が、ルグアだったの?」
だの、
「アンゲームって、略式不正サービスだよね? ゲームではないゲームのやつ」
だの、
「それってつまり、明理が1人でアンゲームの正式サービス化をさせてきたってことでしょ」
だの、
「ブラスターだから、発火者。この場合はきっかけを作る人の意味だと思うよ」
だの、たった一つの話題だけで広まっていく。でも、一体誰がそんな異名を私に?
謎の答えは深く、見えそうで見えない。私はみんなにフレンド申請を送って、山へ向かった。




