表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/165

第2話 初戦の結果 ※修正済み

 私の名前を使い有名になろうとして、HPが減少していくだけのバトル……。


 プレイヤーダメージエフェクトが四散していく、挑戦者の情けない姿……。


(情報収集に集中しすぎてしまった)


 いつもなら、数分で相手の攻撃モーションを暗記できるが、ゴブリンはその場から1歩も動かない。


 距離を置いた状態で、じわじわとダメージを与えていたため、出遅れてしまった。


 観戦エリアのガイア、今はグランの中年男性の言葉で、背中を押された感覚。


 レベル1が6万の敵に立ち向かうのは、無謀という一言で全て説明できる。


「皆に言う、本物のルグアは私だ。このレベルの差で挑むのは初めてだが、今から証明してやる。まあ、見とけ!!」


 無意識に口から飛び出した宣言。もう後戻りはできない。


「お、俺が………」


 真後ろにいる少し背の高い少年は、震える声で注目を集めようとする。


 けれども、私の方へ期待に満ちた声援で彼の声は、ひよこが1匹ピヨピヨ鳴くのと同じだった。


(近くに行けば違ってくるだろうが、相手は至近距離攻撃をしないはず)


「魔法がメインなら、魔防が低い私には不利。となると、あの棍棒を……」


 決めた作戦を声に出し、言い聞かせると、再び地面を蹴って、親玉ゴブリンのふところへ飛び込んだ。


 回転しながら長剣を左下から斜め上にスライド。


 対して相手は、一定のリズムで避ける。被ダメ-14000。


 今度は、左右に揺れても1箇所だけ移動していない、腹部に真っ直ぐ突き刺す。


 すると、相手は見事なターンで回避。被ダメ-13000。


 残りHP:8000


 ゲージバーが、緑から赤へ。


 周りからはブーイングが飛び交い、それによる怒りが、赤いオーバーエフェクトを生み出すと、長剣にまとわりつく。


 脚にも、赤いエフェクトが出現、地面は大きくひび割れた。


 この状態でも、記憶は残るが後悔の思い出がほとんど。


 右上に表示されている、HPゲージの下には、攻撃力上昇バフアイコン。


 警告の赤は怒りの力で全回復していて、辺りが静まり返った。


 私は呼吸を整え、狙いを定める。相手はステップを刻み、後ろの別個体も左右に動く。


 ――シュンッ!!


 高速移動の風切り音なのか、剣閃の切り裂き音なのか。コンマ1秒の出来事だった。


 周囲から巻き起こる拍手喝采の嵐。ブーイングから歓声へ、不安から安堵へ、後ろの少年も手を叩いている。


「やはり、俺にこの名前は重すぎました。あんなことを言ってすみません」


 敵が怖かったのか、震えたままポツリと、少年が本音をこぼした。


「別に、気にしてなんかねぇよ。ただ、有名になるには様々なゲームで経験を積み重ねるのが重要ってことだ。有名という言葉に飛び級制度はないんだよ」


 間違ったことは言っていないが、このセリフが心に刺さり、大粒の涙でひっきりなしに、地面を濡らす。


 Congratulation

 MVPルクス:EXP+10万

 ルグア:EXP+5万


 視界に映し出されるクリアリワード。ありえない量の経験値に一瞬固まった。


 〈EXPルーレットが自動で開始します〉


 システムアナウンスが、脳内に直接再生される。


(このタイミングでルーレットが始まるのか……)


 丸い円盤が現れると、時計回りに回転、しばらくしてから停止する。


 針は1点を指していた。見える数字は、1万倍。計算すると、多分1億になる。


「チート以上だな、これは。レベリング必要ねぇじゃん」


 ゲーム性全く無し、めちゃくちゃだ。人気の理由がさっぱりわからない。すると、


「実は、名前譲渡を1度も使ってないんです」


 突然、後ろの少年に声をかけられた。


「名前譲渡? なんだそりゃ」


 初めて聞くユニーク用語に、頭を傾げる。


「意味は、そのまんまです。名前を交換すると考えてください。今から送ります」


(勝手に進められるのは困るが、本来の名前が戻ってくるなら、いいよな)


 〈以下の名前を交換します〉

 〈マイネーム”ルクス” トレードネーム”ルグア”〉

 〈承認しますか? Yes/No〉


 音声とともに、ポップアップ。迷わず、Yesを選択するとHPゲージの左上にある文字が変わる。


 そうしている間にレベルはみるみる上がり、ステータスを開くと……。


 プレイヤー名:ルグア(次回変更まであと5日)

 レベル:12517

 HP:1835000(ユニークスキル効果:+31500)【初期値:1,803,500】

 攻撃力:80200 防御力:62700

 魔法攻撃力:45000 

 魔法防御力:26000

 ユニークスキル

 HP強化LvMAX(最大Lv1万)

 EXPルーレット必ず大当たり確定


「おいおいおい、これありかよ!?」


 1億という数字は、1万を軽く超していた。


 今はルクスでいいのだろう、「おめでとう」と言うと、次に送られてきたのは、フレンド申請。


 断るわけにはいかないと、追加した。


「これから、よろしくお願いします」


 笑顔で話す少年ルクスと、


「よろしく……」


 自分の名前を取り戻し、やれやれとため息をつく少女ルグア。


 人々の群れは、いつの間にか消えており、遊園地の広場に立つのはその2人だけ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ