第28話 エリア探索①
種族大戦から一夜明け、私は一時的に村を離れることにした。
実際問題、家が完成するまであと1ヶ月かかるため、暇つぶしとレベリングを兼ねての決断である。
日本列島はとても広く、現実との建築物配置が違うので、エリア別に回る予定だ。
「ルグアさん、フレ登録いいですか? 寂しくなりますが、家が出来上がったら連絡するので……、」
努が、申請を送る準備をしながら、別れを惜しむ。まあ、たったの1ヶ月なので微妙だが……。
旅立つ少女は、申請を承認。低空飛行でその場に留まると、
「時は、現実世界で止まっていても、日が昇り過ぎ去るのは、とても早い。まるで明日のように私は戻る」
名言風に言い残し、村に背を向け高度を上げた。
(まずは、北海道だな)
進行方向を北へ変更。村の真上を通り過ぎ加速させると、1つのほうき星になって消える。
風は、だんだん冷たくなり、露出した肌が低温熱傷を始めた。
でも、これは想定の範囲内。
最近覚えた妖精族と魔族、そして、一部人族のみが使える魔法を、裏技の無言詠唱で唱える。
すると、瞬間的に全身が炎で包まれた。唱えたのは、【火焔包囲】魔法。
意味はそのままで、火焔で身体を囲い包むというもの。
自由に対象を変えられるので、攻撃手段としても使える。
温まったことで冷えが無くなり、さらにスピードを上げた。
やがて視界に入ったのは、手前半分が極寒の嵐、奥が獄炎の海で生成された北海道。
運営は、片方を天国と言いたいのだろう。
けれど、普通の人からすれば、地獄と地獄のデュエットにしか見えない。
私は、はじめに極寒の地へ降りる。一度魔法バフを解除。瞬く間に羽根が凍り、閉じなくなった。
さっきは、バフで寒さ対策していたが、正直なところ、ただの検証で、必要性は無い。
現実世界と違って、ゲーム内の気温設定は、極寒とはいえ紛い物。
慣れてしまえば、たかが低温熱傷でも、信号による脳の勘違いなのだ。
彼女は、短期間で多くのVRソフトをプレイして、ゲーム内の冬を越してきている。
それらを脳に伝えることができても、私にとっては関係ない。
気候を遮る山の麓には、巨大な城。私は、飛べないことを知りながら、光の速さで潜入した。




