第17話 2日半の農業①
「さーて、何やろうかな」
昼食を食べ終え、私は弁当箱を片付けると、〈ファミリーファーム〉のソフトを用意した。
ヘッドギアとソフトを接続しログイン。表示されるステータスは、最悪のままだった。
一つ違ったのはファームが綺麗に整備されていたこと。陸や奏が進めてくれたようだ。
ストレージを確認すると、入っていたのは、一通の手紙と植物の種。手紙には、
〈ルグアさんへ〉
〈ルグアさんがログインしていない間、俺とガイアの2人で整備しました。
ルグアさんに小麦の種を少し送ったので、種まきをお願いします。
約10分で収穫、3個から5個種を入手できます。たくさん用意して欲しいです〉
〈ルクスより〉
このように書かれていた。ストレージの種を開封すると、中には小麦の種が10個。
兄が『です・ます』付けるのに、ちょっと違和感を感じたが、気にしないことにした。
ウィンドウを閉じて、ガイア/櫻井奏が耕した畑に向かう。まっすぐで長い小さな山の列。
そこに、小麦の種を5個だけ蒔いた。水もやろうと、考えるより先に動いた足。
井戸で汲み上げた水をジョウロに移し、小麦の場所へ戻る。
こぼした水は地面を濡らし、残った水は、5つの種にかける分だけ。
「まあ、いっか……」
一言声に出して、畑を湿らせると、小麦はぐんぐん育っていった。
どうやら、水を与えると成長が速くなるようだ。でも、あげすぎは逆効果なのでほどほどに。
10分のところ半分の5分で育った小麦を収穫すると、5本中3本がちぎれて消えた。
改めて自分のステータスを開くと、農家の数値は-100000。変動はしていない。
(これもひたすら、やらないとだな)
やれやれと思いながら手に入れた6個の種。これで、手持ちは11個。ルグアはまた5つ蒔く。
水を汲み、ジョウロに移し、運んでは、土を湿らせる。5分で育ち最後は収穫。
今度は、5本中2本がちぎれ、小麦を3本、種が9個入手。手持ちは15個。
次も5つ種蒔き、水を運び土を濡らして、5分後に収穫。農家は、失敗する確率が低くて助かった。
3回目は、5本全て収穫。種は24個手に入れた。手持ちの種は34個。順調に増えている。
(そろそろ、個数増やしていくか)
持っている種を20個蒔く。水は2往復。育った小麦は、10本ちぎれ、獲得したのは47個。
この作業は、休憩を挟みながら翌日の昼12時まで続けた。
結果、最終的な数は、軽く千を超え、2975個。1人でここまでやったのは、初めてだ。
(次は、木材集めかな)
私は、ストレージに種を戻し、斧を手に持ち森林へ向かった。




