第16話 拠点でのお祝いパーティ
2時間にも及ぶ戦いに勝ち、報酬として、真紅の剣〈クリムゾンブレード〉とテイムした〈クリム〉。
クリムには一度ケージの中に入ってもらい、ギルド拠点へ向かう。
背中に武器を納刀できるようになっていたので、〈クリムゾンブレード〉は背中の鞘へ。
私は長時間の戦闘で、疲労が溜まり鞘の剣で、ふらつくがセレスとガロンに支えられ、ゆっくり歩を進める。
「あら、おかえりなさい。相当お疲れのようね」
ちょうど通りかかったレーナが、左手を頬に当てて呟いた。
「パーシー、ただいまです。今戻りました」
私の右肩を担ぐガロンが、挨拶をする。同じように、
「レーナさん、ただ今戻りました」
とセレス。私は、声出そうにも意識が遠のく感覚に邪魔された。
「まぁ、可哀想なルグアさん。あと少しで着くから、ゆっくり休むことをおすすめするわ」
そう言って、4人は拠点のゲートをくぐる。すると、壁に
【祝・レイドボスLv1京クリア】
と書かれた垂れ幕が掛けられ、部屋全体が装飾で溢れていた。
「「おめでとう!!」」
ギルドメンバーが一斉にクラッカーを鳴らし、拍手をする。
レイドイベントのギルドランキングは、2位との差が大きく暫定1位。
アーサーラウンダーが0を9個分多かった。きっと他ギルドは、悔しいだろう。
心の奥で罪悪感が生まれた。それはさておき、みんなに紹介しなければいけないものがある。
私は、朦朧としながらもメニューを操作しケージを取り出す。扉を開けると、クリムが、
〖ここが、そなたのギルドかね。きらびやかでいいのう。我はクリム。名付け親はルグア殿じゃ〗
宙を舞いながら自己紹介をする一匹のドラゴン。戦った人以外のメンバーは、硬直する。
「すみませんがモルド、そのモンスターは、レイドボスでは?」
最初に硬直から回復したのは、ベディだった。野太い声が、意識を回復させる。
〖ベディ殿ですな。ネームは確認できんのじゃが、称号はわかる。ベディ殿の言う通り我はボス〗
クリムは、多分AIが搭載されているからなのか、会話を成立させるのが上手い。
でも、AIにしては自然な言い回し。きっと、運営が一から組み上げ育てた結果だと思った。
だが、ギルド内は賛否別れた。すなわち、分裂。一方は、クリムを招いて活動。
もう一方は、クリムを手放し殺すこと。この問題は、ルグアにも突き付けられた。
もう1つの問題。ルグアを残し活動するのと、強制退会させる人だ。
2つの問題は、全てが解決することはなかった。理由は、1京のボスを倒したことでの問い合わせ。
メールでVWDL運営に確認をすると、”イベントポイントの集計に不正があるのでは”というもの。
運営は、翌日から3日間の緊急メンテナンスを開始。
問題を解決する糸口は、毛先も見せずに薄れ、事態は悪化していくだけ。
そのことを知らない者は、アーサーと側近、親友の数人しかいなかった。




