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第14話 1京の恐怖 無名の剣《つるぎ》

(走る走る、切り裂き奔る)


 赤い刃が弧を描き、流れるように螺旋らせんの尾を残す。

 現在、ボス戦の真っ最中。


 次々と繰り出される攻撃に、隙を狙う時間は、すでに無くなっていた。


 まずは、味方の回復。私は、加速を何度もしながら、短い操作で個数を確認。


 幸い、低ランクのポーションが500個あったので半分に分ける。


 ドラゴンが、背中を向けるのを見計らって、セレスとガロンのいる巨体の真下に潜り込む。


「2人とも、フィールドの端に移動後、これで回復してくれ」


 近くで急ブレーキをかけ、アイテムを送ると素早く離れて、剣振るう。


 ルグアのHPはまだ余裕があり、微量だが攻撃時の回復もしている。


 そのため、ニアミスによるダメージは仕方ないが、覚えた敵モーションで最小限に抑えていた。


 なんとか1本目を削りきり、喜びの笑みを浮かべるが、敵とって絶好の的。


 攻撃を止めることなく、攻めてくる。私は、集中が途切れないよう、加速を続けた。


◇◇◇一方セレス達は……◇◇◇


「アーサーさん、モードレさんの言う通りに移動しましょう」


 ガロンは、ポカンと口を開けるセレスに説得をしていた。


 わたしも、電車でも新幹線でもない、あの速さに目を疑いたくなるが、まずは身の安全。


 すると、再びルグアが向かってきて、一瞬身体が宙に浮いた。


 目の前に、フィールドの壁がそびえ立ち、親友のルグアは、とんぼ返りでドラゴンに立ち向かう。


 どうやら、なかなか動かないわたしたちを、彼女が避難させたのだ。


 技術系しかできない人に、助けられるとは思ってなかった。


「ガロン、ルグアさん……いえ明理は、あそこまで運動神経良かったでしたっけ?」


 セレスが、わたしに問いかける。思い出を振り返ると、跳び箱で突っかえた彼女の姿。


 マット運動も、方向音痴で頭をぶつけ、鉄棒は、握力が足りず尻もちをつく。


 要するに、運動神経が悪いということ。


「そうですよね。体育会系ではない、それなのに……」


 セレスは、速度を上げていくルグアを眺めポーションを使用する。


「あんな俊敏に動く明理さんは初めてです。ここにいるのは、3人と1体だけなので大丈夫ですよね?」


 ガロンも、別人のように戦い続ける彼女に戸惑いと期待を呟いた。


◇◇◇最前線のルグア◇◇◇


(右、左、右、次は両脚プレス!!)


 攻撃モーションを頭の中で再生し、ギリギリのところで回避。すかさず、剣で切りつける。


 バトル開始から1時間。敵のHPは20本中5本が消えていた。ほとんどルグアが与えたダメージだ。


 だが、私にも限界がある。長時間集中していたため、赤いエフェクトは明滅。


 VRにも関わらず、呼吸が不安定な状態になっていた。自身のHPも半分を超えて、オレンジ色。


 リタイアも一つの手だが、1人ずつしかできないので、2人を危険に晒すことになる。


 そう、1人立ち止まり考えていると、


〖もう終わりか? つまらんやつだ。我はそなたとの戦いを気に入っておったのに、つまらん〗


 どこからか、とても低く重い声がした。ドラゴンも、攻撃をやめている。


「誰だ?」


 私は、大声で叫ぶと、


〖そなたらが言うドラゴン。と言えばわかるだろう。そこの少年名は?〗


 セリフに合わせ、ボスが口を大きく開けた。


「私はルグア、あと女だ」


 問いかけに答える。


〖なんとなんと、少女であったか、申し訳ない。そして、名はルグア。とても良い名だ〗


 ドラゴンは、頭を上下に振って頷き、1度真紅に光ると赤い剣が現れた。


〖その剣は、我と戦い、ここまで楽しませてくれたお礼の品。名前はそなたが好きにつけるといい〗


 言葉に従い剣を手に取ると、名前の入力欄が表示された。


 光と同じ真紅に輝く刃。エフェクトではなく、全てが紅に染まっている。


〈クリムゾン〉


 真っ先に思いついたのが、この言葉。それならと、さらに付け足す。


〈……ブレード〉


 確定。ひと振りの剣に名前がついた。


〖ほう、〈クリムゾンブレード〉とな。これでやっと、我が分身を旅立たせることができる〗


「やっとって、どういうことだ?」


 モンスターの言葉は疑問が多い。ドラゴンは、


〖過去にも、同じように、楽しませてくれた者がいたが、剣に触れた者はおらんかった〗


 触れた人がいない、となると、


「私が、最初の所持者ってことか?」


 それが、正解だというのなら、運営も驚くに違いない。


〖そうなるな。おまけにもう1つくれてやろう。我に勝てたらだがな。その剣でもっと楽しませてくれたまえ〗


 ここで、ドラゴンの声が途絶え、再び攻撃を始めた。私も身体が休まり剣に集中させる。


 剣は紅色の炎を纏い、触覚に熱を与え、身体が燃える。ダメージ判定はない、エフェクトの炎。


 私も、クリムゾンブレードの柄を握りしめると、地面を力強く踏み込み加速した。

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