プロローグ ※修正済み
◇◇◇2025年11月23日日曜日◇◇◇
東京23区から外れた小さな町のアパートに、1人の少女がいた。
彼女の名前は巣籠明理16歳。学校には通っていない。
手に持つのは、大容量ディスクと、ヘッドギア。審査会社から無償提供された、『バーチャルワンダーランド』(略してVWDL)のゲームソフト。
部屋の一角に置かれたPCに挿入し、すぐ横のベットに横たわる。
そして、枕元に置かれた、専用ヘッドギアを被ると、
「ゲームログイン!!」
の発声でロード画面に移動、まず、目の前に表示されたのは、入力フォーム。そして、
――これからユーザー登録を行います。はじめにプレイヤー名を入力してください。
音声による説明のアナウンス。
「ここは、普段使ってるやつでいいか。新規で考えるのめんどいし……。えーと……」
ブツブツ声に出しながらローマ字入力と変換。
〈ルグア〉
「んで登録っと」
と言って、確定アイコンを押すが、
――この名前はすでに使用されているため、登録ができません
「マジか!! 今まで登録できたのは一体なんだったんだよ、めんどくせぇなぁ〜」
仮想空間で頭を掻き回すと、1度回転を速くさせて、再び名前を考え、ホロキーボードを叩く。
〈ルクス〉
今回2度目の確定。
――登録を完了しました。
「パッと見男性っぽい名前だが、私の性格があれだから問題ねぇか」
――次に、性別を次の中から1つ選択してください。《男性/女性/その他》
ここは迷わず女性を選択。
――登録が終了しました。これからフィールドに転送します。ユニークスキルが自動で設定されますので、詳細はプレイヤー画面を確認してください。
アナウンスと一緒に、丸を書いて縦線という意味不明な映像が流れた。
多分、メニュー画面を開くためのモーションなのだろう。念の為、覚えておく。
転送空間を移動する仮想の風切り音を聴覚機能で聴き、短いロードで静寂に包まれる。
空間が明るくなると、目の前には予想していたアミューズメント施設らしき、メリーゴーランドや観覧車。
試しに、さっき覚えたモーションを行い、ステータスを確認、
プレイヤー名:ルクス(次回変更まであと5日)
レベル:1 性別:女性
HP:35000(ユニークスキル効果:+31500)【初期値:3500】
攻撃力:5000 防御力:3500
魔法攻撃力:2000 魔法防御力:1500
ユニークスキル
HP強化LvMAX(最大Lv10000)
EXPルーレット必ず大当たり確定
以上が、ステータス画面に表示された内容だった。あまり見慣れない名前のユニークスキル。
『二刀流』とか『神聖剣』とかざっくりした名前をよく耳にするが、ここまで詳しく設定されるのは、あまりない。
フィールドを少し歩き、見えてきたのは、やけに騒がしい人々の群れ。
最後列で高く跳ぶと、見覚えのある名前のプレイヤーが、複数のモンスターと戦っていた。