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第12話 女子会での告白

◇◇2025年11月25日火曜日◇◇


 昨日はさすがに疲れたため、普段より早く寝た私は、あまり行かない大通りを歩いていた。


 〈ザ・都会〉と言っていいほど、ビルが建ち並ぶ通りには、若い人がカップ片手に道を塞ぐ。


 私は、「すみません」と言いながら、横切る人を掻き分けると、ようやく見えたカフェから、


「おーい、明理ぃ〜、遅いよ〜!!」


 と、懐かしい友の声が聞こえてきた。


「ごめん、昨日一昨日とゲームし過ぎちゃって、予定より起きるのが……」


 そんなことを言ってると、


「いいのいいの、そんなこと全部知ってるから。親友だから当然でしょ」


 すぐに許してくれたのは、メールの差出人である、三上 輝夜かぐや。そして、


「明理ちゃん、お久しぶりです。時間に遅れる時は、連絡してほしいです」


 同じ同級生の、碓氷沙耶華。3人は、休憩時間に小さな勉強会を開き、先生気分で授業していた。


 輝夜が国語と理科、社会科の現代社会と公民、沙耶華は数学と英語、社会科の歴史担当。


 私は、技術と保健担当で、パソコン室に行くと、パスワードの安全な保存法などを教えていた。


 新規パスワードの安全性を高くする、文字の選び方もやっていたくらいだ。


 おかげで、キーボードの入力が速くなり、クラスでは1番。


 私が入力を始めると、


『明理ちゃん、キーボード見なくて大丈夫なの?』


 だの、


『明理さん、指先が完全に舞を踊っているみたいです』


 だの、周りから注目されていた。そんな思い出の旅をしていると、


「明理ちゃんは、確か高校辞めたそうですね。お兄様から聞きました」


 沙耶華が、私の話題を始めていた。


「うん。私、昔から数学が苦手でしょ。だから退学したの、楽しかったけどね」


 理由は、この言葉だけで全てが伝わったようだ。


「でも、明理。今から勉強すれば大学には行けると思うよ」


 輝夜が、プレッシャーを与えるが、


「大学は無理だよ。お兄ちゃんみたいには、絶対なれない」


 と、首を横に振る。しばらく経ち、話題が変わる。


「そういえば、沙耶華。昨日新しいメンバーが入ったよね」


 どうやら、ゲームのことのようだ。


「あの、男の子ですか? まさかの登場で震えましたぁ」


 2人だけの話なので聞き流し、私は店内に入って、ブレンドコーヒーを注文する。


 砂糖やミルクは入れない、苦いブラックコーヒーは、小学校から飲んでいた。


 コーヒーを受け取り、外で花を咲かす2人のもとへ戻ると、


「その子、女って言ってたよ。ちょっと雑な感じだけど、男性的でかっこいいのにね」


(このセリフどこかで言った気がする)


 まだ2人は、私の存在に気づいていない。


「名前なんだっけ? 確か……る……」


 ちょうど席に着き、私は名乗ることにした。


「ルグアのことでしょ。それ……実は……」


「そうそう、ルグアさん。ほんとかっこいいのにもったいないです」


 話に割り込んだのに、それでも気づかない。ならば、思い切って私は、


「あの、輝夜ちゃん、沙耶華ちゃん、ルグアは私だよ」


「いつの間に、戻っていたんだね。1人でどっかに行くから心配したよ」


 やっと、存在に気づいてくれた。だが、言葉の意味を理解してない。


「あの、さっきからずっと言ってるんだけど、昨日入った【モードレッド】は私だよ!!」


 三度目の正直。声量を抑え、力強く言い放った言葉に2人が、


「「ないないない」」


 と口を揃える。本当のことを伝えるには、ゲーム連携しているスマホが最後の手段。


 ポケットから取り出し、プレイ履歴を表示させて、画面を上にテーブルに置く。


 そこには、


〈ルグアのVWDLログイン履歴〉

〈11月23日AM4:35〉

〈11月24日PM2:01〉


 自分の情報が書かれた欄を、覗く輝夜と沙耶華。


「ほんとにルグアさん……なんですね」


 論より証拠はこういうことなのか、と安堵のため息をつく。


「まさか、こんな近くにいたなんてびっくりです。雰囲気のギャップが大きすぎます」


 それもそのはず、ゲームでの自分は、現実逃避した自分と言っていいほどに変えているのだから。


「ってことは……割れてもいいよね。私がセレス、沙耶華はガロン、集まったから一緒に遊ぶ?」


 輝夜の誘いに、私と沙耶華が頷き、解散。噴水広場集合で約束して、家に帰るとログインした。


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